第37話 次は赤毒ポーション
青毒ポーションを作った水龍ちゃんは、その毒々しい色合いを見て、とても嫌~な顔をするのでした。なぜなら、これから味を確かめようとしているからです。
「むぅぅ、とにかく味見してみなくちゃね」
意を決した水龍ちゃんは、カップに青毒ポーションを注いで、ごくっと一口飲みました。トラ丸は、大丈夫かなぁと心配そうに水龍ちゃんを見つめています。
「ぶへぇっ、苦いというより、えぐみがひどいわ……」
水龍ちゃんは、眉を顰めて口元を歪めていました。そんな水龍ちゃんに呼応するかのように、トラ丸がぶるぶるっと身震いしていました。
「でも、課題がはっきりしたわ。もう少し飲みやすいようにすれば、売れるポーションになるはずよ」
「なー!」
げっそりと青い顔をしながらも、水龍ちゃんが、酷いえぐみを解決すればと前向きな発言をすると、トラ丸が、がんばれと応援するように鳴くのでした。
「じゃぁ、次は、赤毒ポーションを作りましょうか。こっちも実物を作って確認しておきたいわ」
「なぁ……」
トラ丸が、顔色の優れない水龍ちゃんを心配そうに見上げてきます。
「ふふっ、心配してくれるのね。でも大丈夫よ」
水龍ちゃんが、にっこり笑ってトラ丸の頭を優しくなでると、トラ丸は、気持ちよさそうに目を細めていました。
「さぁ、トラ丸に癒されたところで、ちゃっちゃと作るわよー」
少し元気を取り戻した水龍ちゃんは、さっそく赤毒ポーション作りの準備を始めます。準備と言っても、器材をきれいに洗って薬草の筒を入れ替えるだけなので、すぐに終わりました。
「薬草と魔法水の分量は、間違えないようにちゃんと確認してっと」
水龍ちゃんは、テキパキと薬草を測って錬金釜へと投入し、続いて魔法水もレシピ通りの量を投入、コンロで錬金釜を加熱します。
「青毒ポーションと同じ要領で、あまりぐつぐつしないようにね」
水龍ちゃんは、錬金釜をじーっと覗き込みました。錬金釜の温度が上がってくると薬草から薄い茶色の成分がじんわりと溶け出してきました。
「薬草成分が出て来たわ。茶色っぽいわね」
水龍ちゃんは、ミスリル製の掻き混ぜ棒を手にして、錬金釜の中をゆっくりと掻き混ぜます。錬金釜の中の魔法水が、ぽわんと淡く光を発して、薄い茶色からゆっくりと赤みを帯びた色へと変わってゆきます。
途中、魔法水が沸騰しはじめると、コンロの加熱量を弱めてさらにポーション錬成を続けます。赤みを増した魔法水は、やがて赤紫色へと変化してゆきました。
「うん、色が変わらなくなったわね」
水龍ちゃんは、掻き混ぜるのをやめてコンロを止めました。ポーション錬成の完了です。一段落ついたのが分かったのでしょう、テーブルの上で大人しく作業を見ていたトラ丸が、トコトコと近寄って来ました。
「なー」
「ふふっ、大人しく待っててくれて、ありがとうね。トラ丸は、おりこうさんね」
側へ寄って来てかわいらしく鳴き声を上げるトラ丸に、水龍ちゃんは、おりこうさんねと頭を撫でてあげました。
「ポーションが冷めるまで、少し遊ぼうか」
「な~♪」
嬉しそうな鳴き声を上げるトラ丸の前で、水龍ちゃんは、指先をひょいひょいっと動かして、魔法で水の球を作り出しました。
「なっ、なっ、なー!」
トラ丸は、魔法の水球をみると、とても嬉しそうにペシペシとネコパンチを繰り出しました。水龍ちゃんの作り出した水の球はネコパンチを受けても ぷよぷよ揺れながら宙を漂うだけで、破裂することはありません。
「ふふふっ、かわいいわね」
水龍ちゃんが、水球と遊ぶトラ丸を眺めて癒されている間に、赤毒ポーションの温度は下がっていました。
水龍ちゃんは、冷めた赤毒ポーションをろ過してポーション瓶へと入れました。出来上がった赤毒ポーションを鑑定すると、メーターは4級を示しました。
「こっちも4級ね。さて、問題は味よね……」
水龍ちゃんは、カップに注いだ赤毒ポーションを見つめながら、微妙な顔つきで呟きました。青毒ポーションの時のことを覚えているのでしょう、トラ丸は、大丈夫かなぁと心配そうな顔で水龍ちゃんを見つめています。
水龍ちゃんは、意を決して赤毒ポーションをごくっと一口飲みました。
「ぐぅっ、げほっ、げほっ、か、辛いわ! 苦みもあるけど、それよりも辛くてビックリだわ。いや、まぁ、辛いと分かっていれば飲めないこともないけど……」
水龍ちゃんは、眉を寄せてまじまじとカップに残った赤毒ポーションを見つめるのでした。
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