第26話 気分転換

 ポーション研究で壁にぶち当たっていた水龍ちゃんは、おばばさまの勧めで息抜きに外へお出かけです。



 うん、外を歩くのも気持ちがいいわ。

 お日様を浴びるのも心地いい。

 ふふっ、ばばさまのアドバイスのおかげね。


 少し小腹が空いたわね。

 ハンバーガーでも食べようかな。

 トーマスさんに教えてもらったんだけど、これが、なかなか美味しいのよね。



 水龍ちゃんは、ハンバーガーショップへ入って、チーズバーガーとリンゴジュースを買いました。小さなお店なので喫食スペースが無く、お持ち帰りです。水龍ちゃんは、すぐ近くにある公園へと向かうと、空いているベンチに座って、チーズバーガーをもぐもぐと食べ始めました。



 うん、このチーズバーガー、初めて食べるけど美味しいわ。

 この前食べた普通のハンバーガーもいいけど、私はこっちの方が好きね。

 ふふふっ、思わず頬が緩んじゃう。


 食べ終わったらどうしようかなぁ。

 ぶらぶら街歩きもいいけど、なぜか呼び止められて迷子か?って聞かれるのよね。

 迷子じゃないって言っても、お母さんはどこ?とか聞いてくるからめんどくさい。


 う~ん、図書館へでも行こうかな。

 あそこは、いろんな本があって楽しいからね。

 よし、そうしよう。



 水龍ちゃんは、ハンバーガーを食べ終えると、図書館へと向かいました。図書館の入口で入館料を払って入るのですが、水龍ちゃんはもう何度も利用しているので、受付の職員は、にっこり笑顔で軽く挨拶をしてくれます。



 さぁて、今日は何の本を読もうかな。

 向こうの本棚へ行ってみよう。


 おや?

 薬草の本だわ。

 ちょっと見てみようかな。


 どれどれ……。

 うわぁ、いろいろな薬草があるのね。

 ポーションに使っている薬草もあるかしら。

 ……


 あ、これかな?

 チトマール。

 ポーションの原料になるって書いてあるし、これだよね?


 へぇ~、葉っぱを揉んで傷口に当てると血が止まるのか。

 あ、それで、チトマール(血止ま~る)って名前なのかな?


 野山のあちこちで自生しているほか、ポーション用に栽培もされていると。

 なるほど、薬草栽培農家さんに感謝だね。

 ふふっ、この本、写真入りで分かり易いわ。


 ふむふむ、昔はお茶の代わりに飲んでたりもしたのか。

 帰ったら薬草茶を作って飲んでみようかな~。


 あ、ポーション用に品種改良もしてるんだ。

 なんか凄いわね。

 ……


 はっ!?

 ついつい読みふけってしまったわ。

 今、何時かしら?


 うわっ!?

 もうこんな時間!?

 ばばさまと夕食を作る時間だわ。

 急いで帰らないと!



 水龍ちゃんは、いそいそと本を本棚へ返して、入口の職員にお礼を言って帰路につきました。




「ばばさま、ただいまー! 遅くなってごめんなさい。晩ご飯作るの手伝うわ!」


 家のドアを開けるなり、水龍ちゃんは、叫びながら飛び込みました。家の中には美味しそうなシチューの香りが漂っていました。


「おかえり。ご飯はもう出来てるよ」

「うわっ!? ちょっと早くない? ってか、私が帰るの遅かったんだけど! ごめんなさい。手伝うつもりだったんだけど……」


「ふはははは、どうってことないさ。さぁ、早いとこ手を洗っておいで。今日は、おばば特製のシチューじゃよ」

「ありがとう! すぐに手を洗って来るわ。お腹ぺこぺこよ」


 水龍ちゃんが手を洗っている間に、おばばさまはシチューを深皿によそってくれました。おばばさま特製のシチューはお肉が柔らかくて、レストランで出してもいいくらいにとても美味しいので、水龍ちゃんの大好物の1つです。


 テーブルについた水龍ちゃんは、手を合わせていただきますをしてから、シチューを一口食べて幸せ顔です。


「ばばさまのシチュー、最高に美味しいわ!」

「ふはははは、嬉しいのう。たくさんあるから、たんとおたべ」


 水龍ちゃんの食べっぷりを見て、おばばさまも嬉しそうに微笑みます。水龍ちゃんは、食事を食べながら薬草の本を見つけたことを話しました。おばばさまも薬草に詳しくて、薬草の話で盛り上がるのでした。

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