第25話 ポーション研究
水龍ちゃんは、飲みやすいポーション作りを目標に定めると、ポーションの成分分析をして有効成分を確認しました。そして、苦みについていろいろと考えます。
う~ん、薬草成分が魔法水に溶け出すときに苦み成分も一緒に出てくるわよねぇ。
ぐつぐつ煮込むと苦み成分が多く出てくることを考えると……。
やっぱり温度によって違いがありそうよね。
まずは、魔法水の温度によってどうなるか調べてみましょ。
錬金釜の中の温度が分かる魔道具ってあるかしら?
ばばさまに聞いてみようっと。
水龍ちゃんは、調合室を出て、リビングで本を読んでいたおばばさまに尋ねます。
「ばばさま、錬金釜に入った魔法水の温度を測りたいんだけど、そんな魔道具ってある?」
「うん? まぁ、あるにはあるが、もう夜も遅いし明日でええかの?」
「えっ? もうこんな時間なの?」
「そろそろ寝る時間じゃ。調合室を片付けておいで」
部屋の壁に掛けられた時計を見て驚いた水龍ちゃんは、おばばさまに促されるまま調合室を片付けて眠ることにしました。
翌朝、朝食後におばばさまが温度測定用の器具を出してくれて、その使い方を教えてくれました。錬金釜に取り付けるタイプで、錬金釜の温度を測る器具だそうです。錬金釜への取り付け部分を除けば、見た感じ棒状の温度計です。
とりあえず、温度を見ながら普通にポーションを作ってみましょ。
……出来た。
ふむ、最高温度は100度だったわね。
じゃぁ、次は最高温度を90度、いえ、80度に抑えて作って見ましょ。
……出来たっと。
両方のポーションの鑑定と味比べをしてみればいいかしら。
……ふむ。
80度の方は、3級ポーションになってしまったわ。
やっぱり、温度が低いと有効成分の溶け出す量が少なくなるようね。
そして、味の方は、80度の方が苦みが少なくなったわ。
まぁ、予想どおりだったけどね。
さて、どうしたものかな。
う~ん……。
もう少しいろんな温度で試してみたいな。
あとは、時間も関係あるかしら?
魔法水の温度を10分くらい80度にキープするとか?
それと、薬草の量を増やしてみたいわね。
ふふっ、なんだか楽しくなってきたわ!
水龍ちゃんは、嬉々としてポーション作りの実験を続けます。この日は魔法水の温度に注目してデータを取ってゆき、翌日からは薬草の量を変えた場合のデータを取ってゆきました。
数日後、水龍ちゃんは、これまで取ってきた実験データを書き込んだ紙を調合室のテーブルに広げて、何やら難しい顔をしています。
「ふぅ~、なかなか上手くいかないものね」
水龍ちゃんは大きく息を吐いて、テーブルに突っ伏してしまいました。
少し、頭の整理をしましょ。
まず、温度が低くなると、当然、有効成分の溶け出す量も少なくなったわね。
70度より低くすると、極端に少なくなるから、温度は70度以上が必要ね。
温度を上げている時間は、長くすると有効成分の溶け出す量が増えるわ。
だけど、苦み成分も増えていくのよね。
困ったものだわ。
薬草は、少なくすると、当然、有効成分の量が少なくなったわ。
だけど、大量に入れてもダメみたい。
ある程度の量を境に有効成分の溶け出す量が変わらなくなっちゃったもの。
まぁ、多ければいいってわけでもないのが良く分かったわ。
結局、90度くらいで錬成するのが一番苦みが少ないわね。
だけど、やっぱり苦いのよ。
苦みが残るとなると、苦みがあっても美味しく飲めるようにする?
でも、どうやって?
果実水を入れてみる?
あ~、お茶くらいの苦みならいいんだけどなぁ。
実際は、どんなに頑張ってもお茶よりもずっと苦いのよねぇ……。
「どうしたんじゃ?」
いつの間にか、調合室に入って来ていたおばばさまに声を掛けられて、水龍ちゃんはむくっと顔を上げました。
「なかなか上手くいかないの」
「ふむ、お前さんの研究している あまり苦くないポーションかい」
水龍ちゃんは、こくりと頷きました。
「どうしたものかと考えてるんだけど、なかなかいいアイデアが浮かばないわ」
「そういう時は、気分転換するとええ。散歩でもして、美味しい物でも食べて来たらどうじゃ?」
「う~ん、そうね。少し外の空気を吸って来るわ」
水龍ちゃんは、大きく伸びをすると、調合室をきれいに方付けて、お出掛けすることにしました。
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