第24話 ポーションの味
薬師ギルドで、さんざん薬草の選別作業をさせられた水龍ちゃんは、ようやく一息つくことができました。
「水龍ちゃん、ありがとう。あめちゃん食べる?」
「いただきます」
「今、ギルマスを呼びに行ったから、少し待っててね」
「はい」
水龍ちゃんは、ちょこんと椅子に座って、眼鏡を掛けた薬師ギルドの女性職員からもらったあめ玉をなめて、ほっこりです。
「水龍ちゃんの作るポーション、すごく人気なのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、効果が高い上に、苦みが少ないって評判になっていて、毎日すぐに売り切れちゃうって聞いてるわ」
「えへへ、なんだか嬉しいです」
自分の作ったポーションが好評と聞いて、水龍ちゃんは、にこにこです。
「水龍ちゃんのポーションは、効果がダントツだからいいんだけど、同じ程度の効果だとやっぱり苦みが少なくて飲みやすいのが早く売れるのよね」
「う~ん、確かに飲みやすい方がいいですよね」
「5級ポーションだと、果実水を混ぜたりして飲みやすくしているわ。5級は効果が低いから飲みやすくないと売れないのよ」
女性職員の話に、水龍ちゃんは、ふんふん、なるほどと頷いていました。
ほどなくして、薬師ギルドマスターが現れて、ギルド職員と共に選別した薬草を確認し、満足そうな顔をしていました。
「ありがとう。これが報酬だ。時間換算で申し訳ないが、技術料込みで色を付けておいた」
「ありがとうございます」
薬師ギルドマスターから報酬の入った袋を受け取り、水龍ちゃんはにこっとお礼を言いました。その後、ギルマスと軽く雑談をしてから帰りました。
その夜、晩ご飯を食べたあとで、翌日納品分のポーションを作り終えた水龍ちゃんは、調合室でポーションを前に何やら難しい顔をしていました。
う~ん、ポーションの味かぁ……。
確かに苦いのよね。
良薬口に苦しと言うけれど、やっぱり苦くない方が飲みやすいわ。
ぐつぐつ煮込まないようにしてるけど、それでもまだ苦いのよね。
もう少し苦みが出ないように工夫してみようかな。
それと、味付けするのもありみたいだから、いろいろ試してみようかしら。
ようし、今よりもっと飲みやすいポーションを目指すわよ。
さて、目標は決めたけど、どうしようかな。
まずは、苦みの成分を確かめないとね。
小さな錬金釜で、普通にポーションを作ってっと。
…………
うん、まずはポーションの成分を分析してみましょ。
成分分析は、高位の錬金術師なら出来るはずよ……たぶん。
私は水のドラゴンだから、水の分析くらいは楽勝だけどね。
じぃっと見つめて、成分を感じ取るだけ。
じぃっと、じぃっと、じぃ~~~……。
ふむふむ、いろいろ溶け込んいるわね。
きっと魔力を帯びた成分が、ポーションの有効成分だと思うわ。
魔力を帯びた成分を分離してみましょ。
水の魔法で、ちょいちょいちょいっと操って……。
魔力を帯びた成分を上の方に集めて……。
でもって、いらない成分は、下の方へ押しやって……。
上の方だけ、水流操作で宙に浮かせてっと。
別の容器へ入れたら、はい、分離完了よ。
ふふっ、味はどうかな?
指先に付けて、ぺろりっと。
おっ、あんまり苦くない。
ふむふむ、もう一回、ぺろりっと。
うん、ほんのり苦いけど、悪くないわ。
薄めのハーブティーって感じかな?
それじゃぁ、これをポーション瓶に入れてっと。
あれ?
ちょっと少ないな。
う~ん、とりあえず、足りない分は魔法の水を入れておこう。
よし、これをポーション鑑定魔道具へセットして……。
鑑定スタート。
……ピロリロリ~ン♪
ふむ、3級ポーションだわ。
やはり、魔力を帯びた成分が有効成分であっているようね。
有効成分を全部集めたわけじゃないから、2級に届かなかったのも納得よ。
ふふっ、有効成分だけ分離して濃厚にしたら、すごいのができるわね。
1級ポーションも夢じゃないわ。
だけど、こんなこと、そこら辺の人間じゃぁ無理よね。
私は水のドラゴンだから、簡単にできるけど。
やっぱり、普通の人間ができる方法で作らなくっちゃ。
ふふっ、人間レベル縛りってやつね。
人間社会で目立たず過ごすために必要なことよ。
さて、いちおう確認の為に、残った方を味見してみようかな。
たぶん苦みが凝縮されているはず。
指先にちょびっと付けて、ぺろり。
ぐぬぬぬぬ。
やっぱり苦い。
ってか、苦すぎるぅ。
くぅぅ、この苦み成分が混じらないようにしなくちゃね。
はてさて、どうしたものかなぁ……。
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