4.水龍ちゃん、ポーションを研究する

第23話 報酬いただきます

 水龍ちゃんは、トーマスさんと共に警察署を訪れていました。以前、街道で捕らえた盗賊達の褒賞金をもらうためです。


「う~ん、この子が盗賊11人を殴り倒したとは、未だに信じられないなぁ」

「それは、何度も説明しましたよ。私を含めて護衛達も証言しております」

「まぁ、そうなんだけどなぁ……」


 水龍ちゃんを前にして、警察官とトーマスさんが、そんな話をしています。水龍ちゃんは、背が低く線の細い女の子で、とても盗賊達をぶちのめせるようには見えません。なので警察官が信じがたいというのも理解できます。


 水龍ちゃんの見た目を除けば、目撃証言も複数あるため書類上は何の問題もなく、結局、水龍ちゃんが書類にサインをして無事に褒賞金を受け取ることが出来ました。


「やれやれ、ようやく報酬が受け取れましたね」

「やっぱり、めんどくさいことになったわね。トーマスさんに手続きを任せてよかったわ。改めてお礼を言うわ。ありがとうございます」


「いえいえ、とんでもない。これも商売ですからね」

「それで、運賃や手数料なんだけど、結局いくら払えばいいの?」


「書類を準備してきておりますので、竜車の方で確認頂ければと思います」

「分かったわ」


 エメラルド商会の竜車へ乗り込むと、トーマスさんは、準備してきた請求書を提示してくれました。明細もしっかりしていて完璧です。水龍ちゃんは、請求書をきちんと確認し、警察から頂いた褒賞金の中から支払いました。



 トーマスさんに竜車で送ってもらった水龍ちゃんが、家へ入ると薬師ギルドマスターが来ていて、おばばさまとお茶を飲んでいました。


「ばばさま、ただいま~」

「おかえり」

「ようっ! お邪魔してるぞ」


 薬師ギルドマスターも気さくに挨拶をしてくれます。


「ギルマスもいらっしゃい。今日は休暇ですか?」

「いや、仕事中だぞ。君を待っていたんだ」

「えっ? 私?」


 予想外というように目をパチクリさせる水龍ちゃんに、薬師ギルドマスターはコクリと頷きます。おばばさまから、とりあえず座るようにと促され、水龍ちゃんはおばばさまの隣に座りました。


「実は、君に薬草の選別を行ってもらいたいんだ。ポーション錬成試験のときのようにな」

「はぁ……」


「もちろん、労力に見合った報酬を払うぞ」

「報酬……。別にいいですけど、でも何でまた?」


「実はな――」


 薬師ギルドマスターは、水龍ちゃんに薬草選別を依頼する理由を話し始めました。話が長くなりそうだと思ったのでしょう、おばばさまが、席を立ち、お茶を入れてくれました。


 話しによると、数か月前から薬師ギルドで取り扱っている薬草を購入している職人たちのポーション品質が軒並み下がっているのだそうです。ギルドとしては、薬草の生育状態が悪いのだろうと考えていたのですが、薬師ギルドマスターは、試験で水龍ちゃんが薬草の選別をしていたのを見て、薬師ギルドで取り扱っている薬草に薬草以外の草が混入している可能性を考え、調査するように指示したそうです。


 しかし、薬師ギルド職員達では、上手く選別出来なかったため、今回、水龍ちゃんに依頼しに来たというのです。


「薬草を選別したあと、どうするんですか?」

「薬草以外の草が何であるのか調べたい。場合によっては納入業者に指導しなければならないからな」


 水龍ちゃんの素朴な疑問に薬師ギルドマスターは、淡々と答えてくれました。


「故意に混ぜとるような奴らがおらぬとよいのじゃがのう」

「ふん、そんな奴らがいれば、徹底的に指導してやろうじゃないか」


 渋い顔したおばばさまの言葉に、そんな不届きものは断じて許さんとばかりに薬師ギルドマスターは鼻を鳴らして言いました。


「と、いうことで、今からギルドで選別だ」

「い、今からですかぁ!?」


「早い方がいいからな。さぁ、いくぞ!」

「ええっ!?」


 水龍ちゃんは、せっかちな薬師ギルドマスターにガシっと小脇に抱えられ、薬師ギルドへと連れていかれるのでした。


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