第22話 はじめてのポーション売却
水龍ちゃんは、作ったポーションを持って薬師ギルドを訪れました。はじめてのポーション売買なので、水龍ちゃんはふんすと気合が入っています。
「ポーションを作って来ました。買取りお願いしま~す」
空いている受付カウンターへ行き、水龍ちゃんが可愛らしい声を出すと、気付いたギルド職員のお姉さんが来て対応してくれます。
「お嬢ちゃん、薬師ギルドでは、ポーション錬成の資格を持った人からじゃないと買い取り出来ないのよ」
お姉さんは、カウンターから頭をちょこんと出した水龍ちゃんに、優しく説明してくれました。
「こないだ取得しました。はい、これ、資格証です」
「えっ? お嬢ちゃん資格取得したの?」
水龍ちゃんが、カード型の資格証を提示して見せると、お姉さんは驚いてカードをまじまじと確認します。
「偽造?……じゃぁないみたいね……」
「おっ、こないだのおチビちゃんじゃないか?」
お姉さんが頬に手を当てながら、困ったような顔で水龍ちゃんとカードを交互に見比べていると、水龍ちゃんの背後から声が聞こえてきました。
「あ、ギルマス? おはようございま~す」
おチビちゃんと聞こえたからでしょうか、水龍ちゃんがくるりと振り返ると、声の主は薬師ギルドマスターでした。水龍ちゃんは元気に挨拶しました。
「ギルマス、この子のこと知ってるんですか?」
「ああ、先日のポーション錬成試験に合格したチビちゃんだ」
お姉さんの問いに、薬師ギルドマスターが上機嫌に答えます。
「で、今日はどうしたんだ?」
「作ったポーションを売りに来ました」
「ほう、見せてみろ」
「はい」
水龍ちゃんは、背負っていたバックパックを床に下ろすと、中から青みがかったポーションの入ったガラス瓶を取り出してみせました。
「うむ、いい色合いだ。期待できるな。さっそく鑑定を頼む」
薬師ギルドマスターが、ガラス瓶を受け取って色合いを確認すると、ガラス瓶をカウンターの上に載せました。
お姉さんは、カウンターの中から細い透明なチューブのついた小さな器材を取り出すと、ガラス瓶の蓋を開けてチューブをビンの中へと入れました。それから、器材の真ん中へポーション瓶をセットしてスイッチを押しました。
すると、器材がウイーンという音を鳴らして、チューブから吸いだしたポーション液を小瓶へ注ぎ入れ、適量が小瓶に注がれると自動的に止まりました。
「わぁ、なんか自動で止まったぁ」
「おっ? ポーションポンプは初めてみるか?」
「はい」
「こいつは、ポーション瓶に一定量のポーションが入ったら自動で止まるようになっている魔道具だ。とっても便利だぞ」
瞳をキラキラ輝かせながらポーションポンプの動きを見て呟いた水龍ちゃんに、薬師ギルドマスターが便利な魔道具だと説明します。
お姉さんは、水龍ちゃんのポーションが移された小瓶をポーションポンプから取り出すと、カウンター上の隅に置かれたポーション鑑定魔道具へセットして、ポーションの鑑定を行いました。横向きに置かれた鑑定魔道具は、お姉さんと水龍ちゃんの両側からメーターを確認することができます。
「まぁ!? 2級ポーションだわ!?」
「ふむ、どうやら安定して2級ポーションが作れるようだな」
「えへへ」
鑑定結果をみて口元を抑えて驚くお姉さんに、安定生産が確認出来て口角を上げる薬師ギルドマスター、そして2人の反応を見て、にへらと笑う水龍ちゃんです。
「そ、それでは、こちらの瓶の中身をポーション瓶へ入れていきますね」
「はい、よろしくお願いします」
お姉さんは、水龍ちゃんに確認すると、ポーションポンプを使ってポーション液を次々と小瓶へ入れて蓋をして、封かんラベルを張り付けてゆきました。
「全部でポーション12本ですね。買取金額はこちらの金額になります。ご確認ください」
全てのポーション液を小瓶に封入すると、お姉さんは買取金額を記入したボードを提示してくれました。水龍ちゃんは、ちゃんと金額を確認してから了承しました。
「ふふふっ、はじめての売り上げだわ」
ポーションの売却金を受け取り、水龍ちゃんはほくほく顔です。半端に余ったポーションは、元のガラス瓶に入れてもらい持って帰ります。
バックパックを背負い、水龍ちゃんが帰ろうとしたところで、薬師ギルドマスターが声を掛けてきました。
「ところでおチビちゃん」
「むぅ、おチビじゃないです。水龍という名前があります」
水龍ちゃんは、ぷうっと頬を膨らませました。
「ああ、すまない。水龍、君は試験の時に薬草を選り分けていたよな」
「ん? そうですね。ばばさまのところで見た薬草以外の葉っぱも混じっていたみたいだから、薬草だけ選びましたよ」
「ふふっ、そうか」
「?」
薬草ギルドマスターは、水龍ちゃんが薬草の選別が出来ると知って、ニヤリと口角を上げるのでした。
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