第17話 ポーションの鑑定

 水龍ちゃんは、おばばさまに手ほどきしてもらい、はじめてポーションを作りました。そして、水龍ちゃんが錬成したポーションを見たおばばさまが、突然ポーション錬成技術の資格試験を受けてみないかと誘ってきたのです。


「えっと、ばばさま? 少し落ち着いてください」

「はっ!? こりゃぁ、すまなんだ。お前さんの作ったポーションが見事な出来栄えじゃったから、ついつい我を忘れてしもうたわい」


 水龍ちゃんに諭されて、おばばさまは、はっと我に返って水龍ちゃんの肩から手を離しました。


「そのポーション試験?の話はあとにして、作ったポーションから薬草を取り除いてしまいましょ」


「そうじゃったな。わしが作ったポーションも粗熱が取れたころじゃろう。手伝っておくれ」

「はい」


 おばばさまは、棚から口の広い瓶を取り出して水龍ちゃんへと手渡し、さらに棚の引き出しから漏斗と正方形の紙を出してきました。そして、紙を四つ折りにしてから1部を広げて漏斗へ張り付けるようにセットし、水龍ちゃんがテーブルへ置いた広口瓶に乗せました。


「ざるを使うと思っていたのだけど、違うのね」

「これは、ろ紙と言ってな、ざるをすり抜けてしまうような細かな薬草も取り除くことが出来る優れものじゃ」


「ふうん、おもしろいわね」

「まぁ、ざるに比べて時間が掛かるがの」


 そんな話をしながら、おばばさまは、お玉を使って錬金釜から漏斗へと少しずつポーションを注いでゆきました。漏斗の出口からは、ろ紙を通してろ過された青緑色のポーションがぽたぽたと瓶の中へと流れ落ちてゆきます。


「ばばさま、代わりますよ」

「そうかい、それじゃぁ、お言葉に甘えようかねぇ」


 水龍ちゃんが、おばばさまに代わって漏斗へ少しずつポーションを注ぎ入れてゆきます。おばばさまが作ったポーションのろ過が終わると、おばばさまは、小さな小瓶と、ろ紙がセットされた小さな漏斗を差し出してきました。


「お前さんが作ったポーションは、この瓶に入れるとええ」

「可愛らしい小瓶ね」


「ポーション瓶じゃよ。ポーションは、この小瓶に入れて販売されておるのじゃ」

「ふうん、この小さな錬金釜で作ると、この瓶2個分のポーションが出来るのね」


「そういうことじゃ」


 水龍ちゃんは、ポーション瓶をまじまじと見た後、小さな漏斗を使って、自分が作ったポーションをろ過して小瓶へ注ぎ入れました。


「それじゃぁ、作ったポーションの出来栄えを鑑定してみようかの」

「えっ!? ばばさま、鑑定できるの!?」


「ふはははは、わしは鑑定なんぞ出来んぞ。この魔道具を使うんじゃよ」

「魔道具?」


 おばばさまは、壁際の小さな台に置かれている箱を持ち上げ、テーブルの上に移しました。箱は宝箱のような形をしていて正面にアナログなメーターが付いているのが特徴的です。


「こいつが、ポーション鑑定の魔道具じゃよ」

「これで鑑定ができるのね? どんな仕組みになってるのかしら?」


 水龍ちゃんは、ポーション鑑定の魔道具に興味津々のようで、瞳をランランと輝かせて魔道具を見つめています。


「仕組みは分からんが、錬成した成分を計測しているらしいのう」

「ねぇ、ばばさま、早く鑑定してみましょ!」


 水龍ちゃんに急かされて、おばばさまは、自身が作ったポーションの入った小瓶を手に取りました。水龍ちゃんが自身の作ったポーションをろ過している間に、おばばさまが、準備していたものです。


 おばばさまは、ポーション鑑定の魔道具の蓋を開け、手にしたポーション小瓶を箱の中央部にある窪みへと入れて蓋を閉じました。


 続いて、おばばさまが魔道具正面のスイッチを入れると、キュイーンと甲高い音が鳴り、魔道具正面のアナログメーターがゆるゆると動き出しました。


 水龍ちゃんが、まじまじとメーターの動きを見ていると、やがてメーターが動かなくなり、ピロリロリ~ン♪と魔道具から音が鳴りました。


「鑑定完了じゃ。ポーションの品質は、このメーターの針を読み取るのじゃ」

「えーっと、メーターの針は3って書いてあるところで止まっているわ」


「うむ、わしの作ったポーションは、3級ポーションということじゃよ」

「なるほど、おもしろいわね。次は私の作ったポーションの鑑定ね」


 水龍ちゃんは、おばばさまに指示してもらいながら、魔道具を操作します。中に入っているポーションの小瓶を自分が作ったポーションと入れ替えて、鑑定開始のスイッチを押しました。キュイーンと甲高い音が鳴り、アナログメーターがゆるゆると動き出します。


 水龍ちゃんのポーションを鑑定している間に、おばばさまが、ポーションの品質は高品質な方から1級~5級に分類されるのだと教えてくれました。


「ふむ、お前さんの作ったポーションも3級じゃな。初めて作ったというのに たいしたもんじゃ」

「えへへ」


 おばばさまに褒められて、水龍ちゃんは、ちょっと照れ臭そうに笑いました。


「そこでじゃ、改めて言うが、お前さん、ポーション錬成技術の資格試験を受けてみんか?」


 おばばさまは、改めて、水龍ちゃんにポーション錬成技術の試験を受けるように勧めてきたのでした。

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