第16話 はじめてのポーション作り
水龍ちゃんは、おばばさまにポーションを作ってみないかと言われて、ちょっと驚いてしまいました。
「お前さんは賢いし、適性さえあれば、十分ポーション作りが出来るじゃろう。どうじゃ? 試しにやってみんか?」
「う~ん、ちょっとおもしろそうだし、やってみようかしら」
「ふはははは、そうこなくちゃのう。それじゃ、準備をするから手伝っておくれ」
「うん」
おばばさまは、棚から小さな錬金釜を取り出して、水龍ちゃんへ渡しました。
「小さな錬金釜ね」
水龍ちゃんは、手にしたコップサイズの錬金釜をまじまじと見ながらテーブルの上へと運びます。
「初心者向けの錬金釜じゃよ。ポーション2個分くらいを錬成できる大きさじゃ」
「なるほど、練習用に少量を作るのね」
「まぁ、そんなところじゃな」
おばばさまは、小さな計量カップを棚から出しながら、小さな錬金釜について説明してくれました。
「さぁ、この計量カップで適量の魔法水を測るのじゃ」
「この線のところまで魔法水を入れればいいのね」
「その通りじゃ。魔法水は、先ほどわしが出したものを使うとええ」
「ん? 魔法で水くらい出せるわよ」
水龍ちゃんが、ひょいっと人差し指を立てると、小さな魔法の水球が生じました。水龍ちゃんが指先をひょいっと動かすと、それに合わせて水球が動き、計量カップへ水が注ぎこまれました。
「ほほう、杖を使わずとも水の魔法が使えるのかい。しかも、ちょうど適量の水を出すとは、驚いたねぇ」
「ふふん、凄いでしょ」
目を見張って驚くおばばさまに、水龍ちゃんは腰に手を当てドヤ顔をしてみせました。
「これは期待できそうじゃのう。それじゃぁ、乾燥薬草をこの計量スプーンで測って錬金釜へと入れておくれ」
「はい」
水龍ちゃんは、おばばさまから渡された計量スプーンで、金属製の筒からお茶っ葉みたいな乾燥薬草をすくって、小さな錬金釜へと入れました。
「ここに魔法の水を入れるのね」
「そのとおりじゃ」
水龍ちゃんは、おばばさまに確認して、計量カップの魔法水を錬金釜へと注ぎ入れました。
「じゃぁ、魔導コンロで錬金釜を温めるのじゃ。魔導コンロの使い方は、台所にあるのとほぼ同じじゃから分かるじゃろう」
「分かったわ」
おばばさまの指示に従い、水龍ちゃんは魔導コンロのスイッチを入れ、温度調節つまみを回しました。魔導コンロの使い方は、おばばさまと料理を作ったときに教えてもらっています。熱量を上げすぎて、目玉焼きを焦がしてしまったのはご愛嬌です。
「温度が上がって、薬草成分が魔法水に溶けだしてきたら、こいつに魔力を込めながら、かき混ぜるのじゃ」
水龍ちゃんは、おばばさまの指示にコクリと頷いて、ミスリル製の掻き混ぜ棒を手に取りました。魔法水の温度が上がってくると、黄色い薬草成分が溶け出してきました。水龍ちゃんは、おばばさまに言われたとおり、掻き混ぜ棒へ魔力を込めて、魔法水をかき混ぜます。
やがて、魔法水が沸々と煮立ってきました。
「魔法水が煮立ったら、魔導コンロを弱めてじっくりコトコト魔力を込めてかき混ぜるのじゃ」
水龍ちゃんは真剣な表情で頷くと、魔導コンロのつまみを回して熱量を弱めます。 錬金釜の魔法水は、もう随分と緑色に変わっています。さらに、魔力を込めてかき混ぜていると、濃い緑色になってきました。
「ばばさま、いつまで混ぜ続ければいいの?」
「そうじゃな、魔法水の色が変わらなくなったら完成じゃな」
「なるほど。ばばさまが作ったポーションと同じ色合いになればいいわよね」
「ふはははは、そこまでいければええのう。まぁ、出来るところまでやってみるといいのじゃ」
おばばさまが、なにか含みのある言い方をしましたが、水龍ちゃんは、気にせず魔力を込めてかき混ぜることに集中します。徐々に魔法水の色が変わってゆき、ついには青みがかった緑色になりました。
「うん、こんなところね」
水龍ちゃんは、かき混ぜるのを止めて魔導コンロのスイッチを切りました。
「うむ、出来たようじゃな。色合いはどんなもんじゃ?」
「いい感じよ」
おばばさまは、水龍ちゃんの作ったポーションを覗き込みました。
「なんと! 青みが入った色合いではないか!」
「ふふん、どうかしら?」
ポーションの色合いをみて、目を見開いて驚くおばばさまに、水龍ちゃんは、腰に手を当てドヤ顔です。
「こりゃぁ、たまげたわい。まさか、初めてにしてこれほどのものが出来るとは思っておらなかったのじゃ」
おばばさまは、そう言うと、がしっと水龍ちゃんの両肩を掴み、ずいっと顔を近づけてきました。
「どうじゃ? ポーション錬成技術の資格試験を受けてみんか?」
「えっ?」
真面目な顔をしたおばばさまから突然投げかけられた言葉に、水龍ちゃんは呆けた声を上げるのでした。
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