第14話 チーズハンバーグ
水龍ちゃんは、ハンターギルドマスターにお昼ご飯に誘われて、アーニャさんと一緒にハンターギルドからほど近いレストランへとやって来ました。
「ここのチーズハンバーグが絶品なのよ」
「そうなんですか!? 是非食べてみたいです!!」
アーニャさんからおすすめを聞いて、水龍ちゃんが、瞳をキラキラ輝かせながらチーズハンバーグをオーダーすると、アーニャさんとギルマスも同じくチーズハンバーグを頼みました。
「それで、水龍ちゃんは、もう仮名文字をいくつか覚えたのかな?」
「仮名文字は、全部覚えましたよ」
「なんと! 凄いじゃないか!」
「えへへ」
食事を待っている間に、ギルマスが読み書きの話題を切り出すと、すでに仮名文字を習得した水龍ちゃんは、褒められて嬉しそうに笑いました。
「それが、凄いんですよ。水龍ちゃんってば、一通り教えただけで仮名文字を覚えてしまって、今は表意文字を勉強しているんですよ」
「ほう、それは凄いな。まるで神童のようだ」
「ギルマス、水龍ちゃんは間違いなく神童だと思いますよ」
「ふむ、それだけ覚えが早いのならば、図書館へ行ってみたらどうだ?」
アーニャさんが、水龍ちゃんを褒めまくっていると、ギルマスが顎に手を当て、図書館へ行くことを提案してきました。
「図書館?」
「そうだ。図書館ならば、いろいろな本もあるし、辞書だってある。辞書の使い方を覚えれば、分からない字を自分で調べて学習することが出来るぞ」
水龍ちゃんが、可愛らしく小首を傾げて呟くと、ギルマスは、図書館の利点を教えてくれました。
「いろいろな本があるの? ぜひ、図書館に行ってみたいわ!」
「アーニャくん、午後からでも連れて行って、案内してみてはどうだ?」
「そうですね、行ってみますわ」
水龍ちゃんが、キラキラと瞳を輝かせて図書館へ行きたいと言うので、ギルマスの指示の下、アーニャさんが連れて行ってくれることになりました。
それから、図書館の場所や利用の仕方、どんな本があるかなど、図書館の話で盛り上がっていると、ウエイトレスさんが、チーズハンバーグを持ってきてくれました。
「うわぁ! 美味しそう!!」
熱々のチーズが乗ったハンバーグを目の前にして、水龍ちゃんは、その可愛らしい小さな手を組んで歓喜の声を上げました。キラキラと輝くその瞳は、完全にハンバーグをロックオンしています。
「「「いただきます」」」
みんなでいただきますを言ってから、水龍ちゃんはナイフとフォークを使ってチーズハンバーグを切り分けて口に運びます。
「ん~!!」
水龍ちゃんは、瞳をこれでもかというほどに輝かせ、もぐもぐしながら声にならない声を漏らします。そして、味わうようによく噛んでから飲み込むと自然と声がもれました。
「お~いし~い!!」
水龍ちゃんの溢れんばかりの笑顔に、ギルマスもアーニャさんも、お店のウエイトレスさんもほっこり笑顔になりました。
あまりにも美味しそうに食べる人がいると、不思議と食事が美味しくなるのでしょう、ギルマスとアーニャさんも舌鼓を打ちながら、笑顔で食事を楽しんでいました。
「「「ごちそうさまでした」」」
3人とも、付け合わせの野菜を含め、残さず綺麗に食べ終わると、そろってごちそうさまをして、席を立ちました。
レストランを出た水龍ちゃんは、一度、ハンターギルドへ戻ってから、アーニャさんの用意してくれた紙とペンを持って図書館へと向かいました。
アーニャさんの後に続いて図書館の中へと足を踏み入れると、びっしりと本が詰まった本棚がたくさん並んでいて、本の香りに満ちていました。
「うわぁ、なんか凄いです!」
図書館の中の景色に、水龍ちゃんは瞳をキラキラとさせて感嘆の声を上げました。
「うふふ、すごくたくさんの本があるでしょ。きっと水龍ちゃんの気に入る本も見つかると思うわよ」
「はい!」
「だけど、まずは、辞書の引き方を学びましょうね」
「はっ!? そうだった。早く読み書きを覚えなきゃだわ」
たくさんの本を前にテンションあげあげだった水龍ちゃんも、アーニャさんに言われて、まずは辞書の引き方を教えてもらいます。
図書館には、ゆっくりと本を読めるようにと、机と椅子が並べられている場所があるので、そこでレクチャーしてもらいました。
それから、アーニャさんが選んでくれた比較的やさしい表意文字で書かれた児童向けの本を教科書にして、辞書を片手に読み書きの練習を始めます。
水龍ちゃんは、初めて見る文字を辞書で調べて、読み方を確認すると紙にその文字を書いて、字を覚えてゆきました。
となりで、ようすを眺めていたアーニャさんも、水龍ちゃんのもの覚えの良さに改めて驚いていたようです。
こうして、水龍ちゃんは、読み書きの学習初日にして、辞書を片手にですが、1人で本を読めるようになってしまいました。
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