拾った猫は猫じゃなかった

文月 和奏

猫の正体

どうして、こうなった!?

僕は悪い事はしていない……はず。そう思っていた。


今日の学校の帰り道、いつもの通学路を歩いて帰っていたんだ。


「にゃ……にゃ~ん」

っと、大木の影から心地良い音色が耳を擽る。


音色に誘われて猫がいるであろう、木の影を覗き込む。

それを見た僕は頬が落ちたかのように、にんまりと笑う。


僕を見て警戒したのであろう、耳をイカのようにピンッと立てて、瑠璃の眼を見開きこちらの目をジッと見据えてくる。

これは目を離した瞬間に必殺の猫パンチを食らうフラグだな?

そうに違いないと勝手に思い込む。


僕と捨て猫? は恋仲であるかのようにずっと見つめ合う……尻尾が何かを言いたげに地面を何度も叩いている。

どれだけの時間がたったのだろう? 

オレンジ色の雲、カラスの鳴き声が夕闇に響きわたり、子供達は遊びを終え賑やかに帰っている。


そこで僕はこの子に根負けしてしまい、家へと招きいれてしまう。

そもそも、父さんが帰ってくる前にこの子を隠さないといけない。


いそいそと家へと招いきれ僕の部屋へと押し込む。


「よし、お前、ぜっ……ったいに、ここから出るんじゃないぞ!」

僕は猫に何を言っているんだろうか? けれど、そうしないといけないと思ったんだ。


夕飯が終わり、いい気分で湯船に使ってた時、事件が起きる。

父さんが声にならない悲鳴を上げている……くそっなんでわかったんだよ!?

僕は早々に湯から上がって、父さんの説得を試みる。


「父さん、この猫は捨て猫だったんだ。最初は拾う気なんてなかったんだよ。だけど、寂しそうにしていたし何よりカラスもいたしさ? あのまま放置してたら、どうなっていたかわからないじゃないか。それに可愛いだろう? だからさ、うちで面倒みてもいいよね?」


「可愛いのは認めるがな? お前な……猫は猫でもなんかおかしいと思わないのか? 」

何を言っているんだこの親父は!? どう見てもただの猫……? 

僕は猫へと振り向く――あれ? おかしいぞ? 拾ってきたのは猫だったはず。

僕が振り向くと猫耳と尻尾が生えた猫っぽい美少女が居た。


これは夢だ。夢に違いない!

……僕は夢を見ているのだ。うん。そうに違いない。


「にゃーわ。私を拾ったんだから最後まで面倒見てくれるんだよにゃ?」

なんだこれ!? 言葉喋るし、面倒見ろってニートかよ!? しかも俺の服着てるし!?


「いや、僕は猫を拾ってきたんだ。お前みたいな変な生き物じゃない」


「まったく、お前という奴は恋人がいるならそう言えばいいものを……だが、そのコスプレ趣味は私の居ないところでやってくれ」


「コスプレ……? ようは、ご主人様は変態にゃのか?」


「おまえ!!! ご主人様ってなんだよ!? 僕はそういった趣味は無いぞ!」

あぁ……もう滅茶苦茶だ。

なんでこうなった? 僕は悪くないはずだぞ!?


こうして、怪しい猫の妖怪?のような生き物とのドタバタな日常が始まるのであった。



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拾った猫は猫じゃなかった 文月 和奏 @fumitukiwakana

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