第3話 co(n)-fliction

海を伝わる音が変わった。姫島は1年前にも聞いた声に身構える。海が荒れる前兆だ。この音は人にも聞こえているらしく、その前後で表面のコライトが刈り取られるし、中の動きも忙しなくなる。


台風は三日三晩続いた。荒れた海は、それはそれなりに見応えがあるが、吹き寄せるたびにしなる腕と老体にかかる圧力には堪えた。嵐を楽しむのにも体力がいる。



伊勢湾を台風が通過した翌日、3日ぶりに島の上に出た姫島は、そこかしこに屋根と窓ガラスが散乱しているのを目の当たりにする。奥に見える灯台にもそれなりに被害があるようだ。被害報告書と修繕費の請求だけで2日はかかるなと思いながら、潮溜まりになった海杭の凹みを飛び越え集落へと歩いていくと、片付けをする老人の姿があった。


「おケガはないですか?」

「大丈夫だ。今回ばかりは中に入れてもらったよ。酷い台風だった。」

見るとガラス2枚が破れ、床は半分以上浸水している。

「修繕手伝いますよ。」

「あんたにはもっと仕事があるだろう。」

それもその通りだった。

「灯台の修繕でおじいさんには力をお借りしたいところがあります。あのあたりは入り組んでいて組成がわからない。そのために手を貸させてください。」

「灯台か。あれは、厄介かもしれない。」

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