謝罪

凰 百花

ごめんなさい

「ごめんなさい、本当に悪かったと思っているわ。

植木鉢を落としてしまったことがあったけれど、あれは手が滑ったの。本当に。

あなたに当たらずにすんだけれども、ごめんなさい。

でも植木鉢の落ちた場所から、あなたは離れていた気がするわ。

貴方の落としたブローチを壊してしまったのは、下をよく見ていなかったから気が付かずに踏んでしまったの。本当にごめんなさい。

わざとじゃないのよ。

あなたの行動に対して苦言を呈したのは、マナーは守るべきだと思って助言しただけで、嫌みでもなんでもなかったの。それが気に触ったのね。

私が、思わず声を荒らげてしまって貴方を怖がらせたことがあったでしょう。

でもあれば、貴方が私に「アタナはライオネル様御本人を愛してはいらしゃらないわ。あの人のお立場に固執されているだけだわ」

と仰ったでしょう。あの言葉は、私の心を知りもしないで否定されたと思ったからだわ。

でも、あなたはそれも気に入らなかったのね。

ごめんなさい。


でも、それ以外は判らないわ。私がしたという記憶はないの。

あなたの教科書が破られて捨てられていたというお話でしたけど、私はそんなことはしていないわ。

届かなかったお茶会の招待状の行方も私には判らないわ。

あなたが中庭の池に突き飛ばされたというお話でしたけど、私、貴方と中庭に行ったことはなかったわ。

階段から突き落とされたというお話でしたけれど、私、そんなことはしておりません。

でも、私が行ったことは私の罪だと言われればその通りです。

ごめんなさい」


「わかったわよ、謝罪を受け入れるわ。だからもう謝らなくていい。ここから出ていって」

「ごめんなさい」

「もういいって言ってるじゃない!」

「ごめんなさい」

「もう嫌、お願いだから出て行って。もう来ないで」


処刑された令嬢は、夜毎彼女の枕元に立って謝罪をし続ける。

恐れをなした夫は、妻の元には訪れなくなった。

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謝罪 凰 百花 @ootori-momo

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