【KAC20237】 言い訳嫌いなんだよ

下東 良雄

言い訳嫌いなんだよ

 太った男子高校生・太が走ってきた。

 駅前には、美しい金髪をなびかせる女子高生・亜由美が待っている。


「またオマエは遅刻かよ」

「実は……」


 太は、来る途中でお年寄りを助けていたことを説明した。


「そっか……んじゃ、しょうがないか」

「ゴメンね、姉御」


 優しく微笑む亜由美。


「それはさておき、モモキックの刑な」


 名前の通り、腿の裏側を思い切り蹴る技である。


「えーっ!」

「後ろ向け」

「ちょ……待っ……」


 スパーーーン!


「いってーーっ!!」


 腿の後ろ側を押さえて涙目の太。


「私、言い訳嫌いなんだよ」


 亜由美はニヤッと笑った。



 ふたりは、ショッピングセンターの中のジェラート屋に来た。

 目的は一日七個限定の虹色ジェラート『セブンレインボー』だ。


「最後尾七人目……」

「ボクはいいから、姉御食べてよ」

「うーん……お言葉に甘えようかな。悪いね」


 申し訳無さそうな亜由美に、微笑む太。


「ターカシ、お待たせ!」


 突然やって来て、亜由美の前にいる男性と腕を組む派手目の女。


「六人目だから買えるぜ」

「やったー」


 すかさず動く亜由美。


「並んでるんだけど……」

「あぁ?」


 顔を寄せて凄んできたヤンキー系ギャル。



 このギャルは知らない。

 世の中にはケンカを売ってはいけない女がいることを。



 ガッ グイッ


 ギャルの胸倉を掴み、目の前まで顔を寄せる亜由美。


「聞こえねぇのか?」

「あ……いえ……」


 ビビるギャル。


「おい、エリを離せ」


 亜由美の肩を掴むギャルの彼氏。


「お前はフルスイングの刑な」

「は?」


 ブンッ バッチーーン!


 フルスイングのビンタ……というか、掌底が炸裂。

 吹っ飛ぶ彼氏にビビるギャル。


「何か言いたいことは?」


 ギャル半泣き。


「あ、あの、並ぶトコ間違えて、その」


 顔を寄せて凄む亜由美。


「私、言い訳嫌いなんだよ」


 慌ててその場から逃げ去るギャルと彼氏。


「姉御、やりすぎ……」

「ひとりで食ってもうまくないだろ」


 亜由美は太を列に引き入れ、笑顔でウインクした。


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