第一世界 我を思う、国王陛下
雲行きが怪しい。
自分の無力を噛み締めながら、空を見た。雨でも降るだろうか。火の女王が、『もっと愚かに』と言われていたが、確かに今私は、フールらしくない。
無力だからこそ、これから学ぶんだ。学んで、前向きに、いろいろと
「いいかね」
「はい!!いらっしゃいま、」
せ、と言う前に、固まってしまった。
地の国の王が、立っている。
「あっ、はい、どうぞお座り下さい!!」
丸々と超えた国王だった。
どの世界でも地の国王陛下は、堂々として肥えている。それが富の証であり、懐の深さを感じさせていた。
けれどこの方は、あまりに肥えすぎではないか。
「きみ」
「はい、なんでしょう」
「移動型の喫茶店とやらは、どこに納税するのかね」
「は……」
ニヤニヤと、国王は笑っている。
「どこにも納めないのなら、君は肥やしを増やすだけではないかね」
しどろもどろに、言葉を探した。指が、不安で動く。
「あの、一応、怪我などは全額負担ですし、各世界で得たものは、世界へ返す約束になっていますので、私はいつも愚者でございます」
「なんだ、そうか」
面白くなさそうに、国王は言われた。少し考えて、
「せっかく足を運んでくださったので、今回料金はいただきません」
と言ってみると、みるみる顔が緩んでいく。
「そうか。そうだ、そうだ。お前はここを借りているぶん、返さねばなるまい。儂が許そう」
などと、仰った。そして、先客の女王と同じワインを選ばれた。
「いやぁ、いい時代だな」
「そうなのですか?」
グラスを拭きながら、聞いてみる。
「今、儂のことを、暴君と呼ぶ者もいるそうだが」
『まるで暴君だわ』
ゾッとした。けれど、上機嫌で、国王は言う。
「これが、儂の望んだ姿なのだ」
「えっ……」
思わず王を見るが、王はワインの追加を言った。
「ここまで豊かな国を作ったのは、儂なのだ。儂が得て、当然のものだ」
「……お言葉ですが」
私は口を開く。『愚かに』口を開く。
「私は数々の国を、見てまいりました。けれど、民を虐げる王は、いつも世も滅んでおります。今、貴方様は、耳を傾けるべきです。今がタイミングなのです。民を思う心を、思い出してください」
言って、首をはねられることを覚悟した。ぎゅっと目を瞑っていると、しばらくして笑い声がする。
驚いて目を開ければ、王はニヤニヤと笑っていた。
「お前も、焚き付けられたか」
「……」
「いいのだ。問題ない。儂が、儂を幸せにする限りよ。おっと、民が儂を、だな」
ハッハッハ、と笑い声が響く。
全く声が、届いていない。
女王の顔がよぎる。
『崩壊するのね』
「では、お暇するよ。やはり我が国のワインが1番だ」
呆ける私を置いて、国王は夕焼け空へと帰って行った。
『解説』
お客様:ペンタクルキング
お話:星、隠者逆位置
アドバイス:運命の輪、正義逆位置
結果:吊るされた男
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