第一世界 国を想う、女王陛下
フルーツの片付けをしていると、
「いいかしら」
と、声が聞こえてきた。先程と全く同じ言葉だけれど、どこか凛とした声だ。振り返ると、ぶどう柄のドレスを着た、女性が立っていた。
「地の国の、女王陛下……!!」
にこりと微笑まれる姿は、先程の女王陛下とは違う。もっと、市民に近しく思えるお方だ。
「どうぞ、おかけになってください」
またにこりと微笑まれて、椅子にかけられる。
「香水の香りがするわ」
「あぁ、先程のお客様が……」
「火の国でしょ。さっきすれ違ったわ」
微笑まれて、恐縮です、と頭を下げる。
「私も、あの方ほどの華々しさが欲しかったわ」
「何を仰いますか。地の国といえば、治安のいい、豊かな国ではありませんか」
にこりと微笑まれた。
「フール、あなた占いができるのよね」
「あっ、はい」
「ちょっと見てくれないかしら」
驚いて、瞬きを繰り返してしまった。
「飲み物は、赤ワインを」
「あっ、はい」
急いで準備をする。
「あの方がね、アドバイスで気が晴れたと言っていたの」
「あ、それは、良かったです……」
けれど明らかに、雰囲気が違う。憂いているのが、一目でわかるのだ。ひっそり、自分の手持ちを見てみる。
『私に出来ることは無い』
参った。これは、国際問題かもしれない。
「……どうされたのですか」
「夫のことよ」
「国王陛下」
地の国の、寛大にして豊かの象徴の王様である。どの国よりも、裕福で、国も豊かだ。
「あの人、最近おかしいの」
「と、言いますと」
「税金を上げたり、事ある毎に民から搾取しようとするようになってしまったわ」
あまりのことに、絶句する。
「地の国の王が、ですか?」
「自分の肥やしを増やしていって、私の夫だからあまり言いたくないのだけれど」
まるで、暴君だわ。
「これは、私に相談する案件ではないかと」
「あなただから、話しに来たのよ。あの人、誰の声も聞こえないみたいだし、民に不安を与えたくないわ。どこかから来て、どこへ行くあなただから、言える話なの」
「左様ですか……」
参った。非常に参った。
占いを希望されているので、机を片付けて、カードを用意する。
「タロットカード?」
「はい。1番読みやすいので」
「道化らしいわ」
クスクス笑ってくださる。
シャッフルをして、緊張気味に、カードを引いた。
「……これは」
「何?」
「今は、時期じゃない、と」
「……嗚呼」
机に肘をついて、頭を抱えられてしまった。
私は必死に、言葉を考える。
「今冬が開けて、実りの季節がやって参ります。その時まで、税を一律にしておくように手配して、その後の」
「どうなるの?」
「えっ」
「私たちは、どうなるのかしら」
慌てて、カードをシャッフルする。
良い方に行きますように、良い方に行きますように。
願いながら、引いた。
「……」
「……そう。崩壊するのね」
女王陛下でも、わかったらしい。どうフォローするか、あたふたしたが、コインを置いて、女性は立ち上がる。
「聞いてくれて、ありがとう。何とかするわ」
何ともできない、と知った女王陛下は、颯爽と去っていった。
私は、カードを片付ける。
「……占い師って、嫌になるな」
『解説』
お客様:クイーンペンタクル
お話:皇帝逆位置、正義
アドバイス:運命の輪、星逆位置
結果:塔
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