第5話 やっと聞いた、魔王の顛末と今の状況

「あーだからだな、今から10年ほど前になるかの?」

 じいさんがそう聞くと、周りのばあさんたちが頷く。


「その頃から今まで居なかった、モンスターが出始めてな。それが始まりじゃった。それに対応するために軍を強化したが、手が足りなくてな。アルテリウム王国と共同で、モンスター退治を主として冒険者組合という物を立ち上げてな」

「冒険者?」

「ああその頃、ダンジョンも発見されたのじゃ。ここもそうだが、放って置くと氾濫を起こす。するとモンスターの大群がやって来る。普段は出てこない深い階層のモンスターまでな。じゃから、冒険者が山や荒野に踏み入り、未発見のダンジョンも探して駆除をするようになったのじゃ」


「ほう。ラノベの一般常識と一緒だな。まあ良い。それで」


「まあ苦労しながらも、生活をしておったのじゃ。ところが、3か月ほど前かのう。魔物の大群がダンジョン関係なく襲ってき始めたのじゃ。突然町の近くへ押し寄せて来た。王国の軍と、冒険者たちが力を合わせて押し返しておったのじゃが、奴らが来たんじゃ。四天王と呼ばれる奴らと魔王が」

 そう言って一息をつく爺さん。


「そして、おぬし水は持ってないか?」

「好きなだけ飲め」

 そう言って、魔法で出そうとしたが、魔法で出すと確実に起こる惨劇が目に浮かんだ。

 ミネラルウォーターのペットボトルを出す。

 紙コップを出して、どぼどぼ注ぐ。


「おおうまい。この水。程よい硬度の軟水じゃな。無駄なにおいも無し。料理に良し体にも優しい。うむうむ」

 そう言って口の中でむぎゅむぎゅして、唇をすぼめてずぞぞとテイスティングをする爺さん。

「良かったな。続きはよ」


「おうそうじゃ」

 ほかのジジババも欲しそうなので、コップを配る。


「どこまでしゃべったかの?」

「四天王と魔王が来たところだ」

「おうそうか、それで戦いになった時に一気に不利になってのう。足手まといな、わしらと子供を逃がしてもらい、ここに隠れ住んで居る。あれから一月経ったが迎えに来るものがおらんでな。モンスターを倒して食い物を得ておるのじゃ。可愛そうじゃろ。じゃから武器を……」


「残念だな、最初から理由を言って、貸せと言うなら分からんでもないが、勝手に盗って、人を牢に押し込むのは、人としてどうだ?」

「貸してくれるのか?」

 そう言って、満面の笑み。

「は・な・しを聞け。人としてどうだという部分を、飛ばすんじゃない」

 そう言うと、笑みがしぼむ。


「そうだな、町はどっちだ? 見て来る位はしてやる」

「本当か? 嘘なら承知せんぞ」

「どうしてあんたは、人のやる気を折るかな」

「すまんな。正直者なものでな」

「うん? 理解が出来んぞ」

「馬鹿じゃの」


「おい。もういい。真一帰るぞ」

「やっとか。じゃあ爺さん達者でな」

 そう言って立ち上がる。


「おいちょっと待て、ほんの軽い冗談じゃ。迎えが来ないと死んでしまう。若い者たちはみんな町なんじゃ」

「若い者? 若いものか。男だけじゃなく女もか?」

「そりゃそうじゃ。上には年寄りと子供だけじゃっただろ」

「そうだな」

「あいつら、自分ではモンスターを狩らんくせに、同じ肉は飽きただのどうだ、文句ばかり言いおって」


「まあ一月、肉ばかりだと飽きるだろうな。子供もいたな。チッ仕方が無い。ちょっと食糧使うぞ」

「ひゅーひゅー。広大君てば良い人」

「おい。人の傷口を抉るんじゃねえ」

 そう言って本気で睨む。


 今まで、優しそうな人で付き合いが始まり、良い人で付き合いが終わる。

 いつもの、振られるパターンだ。

 大抵そうなると、真一を巻き込んで酒を飲むから、事情をこいつは知っている。


 どうして最後は、私だけに優しい人がいいの。なんて、訳の分からない理由で振られるんだよ。

 そんなこと言ったら、生活が出来んだろ。


「この所、まともなものを食ってないんだろう。上に上がるぞ」

「もうちょっとで、モンスターが復活する。ちょっと待ってくれ」

「ああっ? もう1時間も経つのか」

 そう言っていると、リポップした。

 その瞬間、空気の刃を飛ばす。


 ぼてっと、肉が落ちる。

「ほら拾ってこい」

 そう言ってドアを出る。


 階段を3つ上がると、ギャン泣き娘がこちらを覗いていた。

 目が合うと、慌てて逃げていく。


 広場へ出て、

「おら。腹が減っている奴手を上げろ」

 そう言うと、ばらばらと手が上がる。

 一緒に上がって来た爺さんたちは、びしっと手を上げている。


「よし。食う奴だけこっちへ来い」

 数えると、子供16人と大人8人だな。


 えーと米なら、俺らが一食1合だから半分か? いや、一人1合で炊いておにぎりにするか。4合炊きの飯盒でちまちま炊いても足りんな。そうか、土鍋もあるな。


 炭やバーベキューコンロを取り出し、火を起こす。

 完全に燃やし、熾火になるまでにコメを炊こう。


 別に竈を作り、火を起こす。

 まきは大量にある、ゴブリンの棍棒だ。


 バーベキューコンロの火が落ち着いたら、焼くものを真一に渡す。

 当然野菜や、シイタケ、エリンギ、エノキ、牛肉、鶏肉や豚肉、焼きそばの麺もある。肉はすべてモンスターのドロップだ。


 たれを、深めの紙皿に入れ、回す。

 水や、お茶、ジュースも完璧。

 当然俺たちはビールだ。


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