伝記『山田竜国王伝【地球編】』 書籍化記念

山田ドラゴンガチャ王国は人類史上類を見ない超国家。


何十もの星系を中心とする広大な領土、宇宙航行可能な技術、圧倒的な力を持つ軍隊…その他、あらゆる分野で、既存の国家を上回っている。


王国を支配する国王は、あらゆる特権を保持する。


民主主義ではなく絶対君主制なので、王の命令は圧倒的な力を持つ。どんな無茶苦茶なことだってできる。給料や福利厚生も万全なのだ。


一生暮らしていける年金、特別な護衛、別荘…とにかく、国を好きなように、まるでシミュレーションゲームのように好き放題できるのだ。


山田竜国王はこの特権を使い、お菓子でできた星を作ったり、太平洋の上に空中空母都市を築いたり、星を超新星爆発させてそれを見物したり…まあ、結構好き放題した。


そんな、まさかに人類の支配者ではある王になる方法がある。





それは。








『求人』『緊急』『即日採用』『大規模採用中』『人材求む』『今すぐ』『正社員採用』『助けて』『即日勤務可能』『残業代付き』『地球の労働基準法などは適応されません。国王緊急労働措置法が適応されます。過労死しても即座に蘇生させます。』



求人サイトで応募するだけである。応募次第、魔王軍特別採用隊が座標を特定、連行します。












「実験施設から、家畜化実験中の大型の電気鰻が脱走しました!」


「すぐに魔王軍を出動させろ。付近に訓練中の魔剣師団が展開されていたはずだ!傭兵にも応援要請を!」


「品種改良により、成層圏スレスレを飛行しています!魔剣師団では攻撃が届きません!」


「なんで羽を生やすんだ!空軍に連絡!撃墜せよ」


「ダメです!遺伝子改良の結果全身に生えたメデューサの石化魔眼で、航空機が近づけません!」


「だから何で魔眼か全身にあるんだ⁈」


「眼球食が一部で流行っており、その需要解消のため…あと廃棄物処理に便利だと、地球の国家に需要が…」




なぜ国王の仕事を求人サイトで募集をしているか。


それは誰もやりたがらないからだ!このクソったれな、馬鹿みたいな事案が毎秒のように押し寄せる!溜まりに溜まったタスクは膨大!給料を高くしても、みんな逃げでしまうのだ!




「閣下!衛星砲での狙撃より撃墜に成功しました!」


「…ん?お前は誰だ?初めて見る顔だが…?」


「衛星軌道担当者との入れ替わりの決闘にて勝利し、本日より私が担当者となります。前の担当者は有休を取得し、現在鍛え直しています。というわけで、国王に挑戦します!噂通りの強敵なのか、いざ勝負!」



そう叫び、衛星軌道担当ホムンクルスが襲ってきた!ちなみにここは玉座の間である。周りのホムンクルスたちは突然の戦闘に対し、ビールを飲みながら賭けを始めていた。



これだよ、これ!


こいつら戦闘ホムンクルスは、自分の上司の力を確かめるため、ところ構わず挑戦状を叩きつけるのだ!


一回、王を政治家を任せようと適当な地球の政治家を集め、代わりに任せようとしたのだが、自分より弱い奴に従う必要はないとかいいだしてストライキを起こした!



おかげで研修の新人政治家養成コースに山田魔王軍での軍属経験が必要となった。


地球から来た権力目当ての馬鹿どもはこの軍隊での訓練に耐えきれず大半がリタイア、今も残っている野心に溢れた奴らも、まだ小規模な自治体を担当したり、各省庁で下っ端として働いているだけ。いつになったら国王の仕事を任せられるかわかったもんじゃない!




「先日買収したアルゼンチンで混乱が…

「アメリカ大統領よりホムンクルスカウボーイ同士の戦いについて抗議が…」

「火星入植記念式典の出席要請が届いています」

「第1級危険区域『奈落』にて、マッドサイエンティストが許可なく実験を…」

「海軍大臣より、決闘の申し出が」




あああああああああああ!



とにかく、馬鹿みたいな仕事が多すぎる!


今は暴食の邪神とか魔王とか王女とかダンジョンマスターとか傭兵会社の社長とか、まだまともな奴らで交代制で仕事を行なっている。おかげで週休完全5日制だが、マジでやりたくない。






「閣下!大変です!こちらを見てください!」



おお、君は優秀でまともな第4秘書ホムンクルスのビネガーくん!


…ん?何だねそれは。嫌な予感がする本だな。やめろ、見たくない、こっちにくるな。



「閣下の伝記です!『山田竜国王伝(地球編)』既に世界中に出回っています!」



「はぁ⁈」



すぐに手を取って伝記を読む!


本には、俺の小学校卒業文集まで載っていた!






小学校卒業文集『青空』


僕の将来の夢 山田竜



僕の将来の夢は、競馬で暮らしていくことです。大好きな馬で暮らしていくことが、僕の夢です。


まだ未成年なので馬券は買えないので、代わりにいとこのお兄さんに買ってもらっています。僕といとこのお兄ちゃんは信頼できる相棒でした。けどこの前の中山大障害で、僕に嘘をついて、お金をピンハネしていたことがわかりました。


なので仕返しとして、嘘の予想を教えました。この3連単は絶対に当たると。


その結果いとこのお兄ちゃんは全財産を無くしました。

ざまぁみろ。僕の敵になるから、こんなことが起きたんだ。



でも、いとこのお兄ちゃんは僕の謝罪として、北海道の牧場に連れてってくれたので、許すことにしました。帰りに食べたジンギスカンが美味しかったです。ばんえいで旅費も稼げて満足でした。


ゆくゆくは資金を貯めて、オーナーになりたいです。




伊藤先生からのコメント。

山田くんならできる!また勝ちそうな馬教えてね!





「どこの出版社だ⁈言論統制してやる!」


「王立出版院です」


「身内じゃねえか!クソガッ!ただちに近衛隊を送り込め!制裁だ!」


「もうしてますよ」




『現地では鎮圧のため出動した近衛隊と出版社自由軍が王立出版社委任統治区域全域で戦闘が続けています。出版社側は自慢の戦車隊を中心に抵抗を続けていますが、戦力差は圧倒的であります。また、この混乱に乗じて人気作家を誘拐しようとミナモトブックスとタイラ書店が暗躍しているとの噂があり、さらに魔法使いが禁書を強奪しようと局所的にですが近衛隊と戦闘を…」






その後、伝記は発禁処分としたが、様々な媒体で拡散してしまった。














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カクヨムコン9、現在ファンタジー部門特別賞を受賞しました!


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