運営「ガチャなんてやめればよかった」

さてさて、今日もガチャである。悪いが時間がない!今は0時0分!深夜だが頑張って回していくぞ!


今日は第14エリア攻略の最終段階だからな。俺は今日見ることができるであろう、映画のような光景を見に行かなければならない。




さあ、今日の無料ガチャ!






ガタンッ




う、うおおおおおおおおおおビックリした!



金色のカプセル!SSR確定!今日はついてる!作戦も成功するんじゃないか⁉










SSR『ルール改変権』






一枚の封筒がヒラヒラと空から降りてきた。漆塗りのように黒い、封筒だ。ゴージャスさが溢れ出ている。

宛先も何も書かれていない、無地の封筒。




封筒を丁寧に開けると、中には封筒の色と同じ、漆黒のカードが封入されていた。






鑑定!





●ルール改変権


運営が定めたルールを僅かな期間改変することができる禁断の権利。一部を除いたほぼ全てのルールを改変できます。権利系統のアイテムの中でも最高レベルの権利です。




おお?これはまた、悪さができそうな権利だな。さーて、何に使うかな。



「待ってください!ちょっと待ってください!」



そう叫びながら、血相変えてこっちに来たのは、運営の小間使い、雑用、連絡係の運営スタッフだ。




俺は色々と察し、ニヤニヤしてしまう。こいつが困っているということは、これはつまり………





「今運営から連絡がありましてね?何かこのルール改変権はちょっと許容範囲を超えてるらしくて。かなりまずいらしいです。そこで提案なんですけど」



「やだね」



絶対にやだね!運営の邪魔を徹底的にしてやる!お前らの望みなんて、誰が叶えてやるか!



「えー、まあ、知ってましたけど」


「そもそも、その気になれば前みたいに制限すれば良いだろう。最悪、俺から無理矢理奪うことだってできるはずだ。そうなれば俺はどうしようもない。なんで運営はそんなことしないんだ」


「えー、やっぱりすぐに規制すると客から苦情が届くからじゃないですかね。山田さんの二つ名【ガチャ狂い】はあらゆる可能性が秘められた、予想不可能性が売りなので。運営に都合の悪い物を何でも制限すればゲームが不公平になってしまうからですよ。といっても、もう既に十分不公平なんですけどね」



うーん、確かに。ユーザーに与えられたアイテムや能力には明確に優劣が存在する。例えば【竜騎士】というユーザーがいる。こいつに与えられたのは竜と絆を深めやすくなる力だが、その一方で【龍神】という、最強クラスのドラゴンを生成できる能力持ちがいることが分かっている。


その点で言えば、俺に与えられたアイテムであるガチャは初期の頃だけ見れば他のユーザーに比べてかなり劣っていただろう。それを乗り越えてここまで来たのに、これ以上俺に制限すれば不公平すぎるということか。




というか。


「へぇー、俺のために苦情入れてくれる客なんかいるんだ、サンキュー」


「ファンは一定数いると思いますよ。最初から見てる人たちは、せっかく餓死の危機から苦労して生還したのに、この仕打ちはあんまりじゃないかと文句も言いたくなりますよ」


「一応聞いとくけど、運営に従ったら何してくれる?」


「えー、SSR確定コイン10枚くらいくれるらしいですね」


「なおさら嫌だね。この権利には、それだけの価値があるってことだ」






「見てるか運営ー!!俺がこの権利を使ってゲームを滅茶苦茶にしてやるからな!俺にガチャを与えたことを後悔しろ!客も楽しみにしておけ!」









さて、今日のログインボーナスは、資産確定ガチャコイン!





さあ、ガチャ!




ガタンッ





C『株』



企業が資金調達のために発行するもの。全ての株の51%以上取得すれば、その株主の物となる。






………何も起きない。これはつまり、地球で何かしらの異常現象が起きているということだろう。


地球から来たスカウト組が、地球では軌道エレベーターやら月面基地やらで大変なことになっているということを教えてくれた。

きっと何か、地球で起きているのだろう。





そういえば。俺の国にも、ついこの間証券取引所が完成していた。もう既に幾つもの企業が上場し、経済を活性化させている。


俺はふと気になり、テレビの経済ニュースを見ることにした。






『企業間抗争さらに激化』



ダンジョン第15層『砂丘神殿』にてミナモトインダストリー資源探査部隊をタイラ重工専属傭兵部隊が強襲撃破し、観測データを奪取しました。


これに対しミナモトインダストリーはタイラ重工燃料基地『a-65』の占拠を行い補給路に打撃を与えています。


企業間紛争調停委員会は両者に対する制裁として、空中母艦アストレアの拿捕と武器工場接収を行いました。


しかしこの隙をついて中小企業連合がミナモト、タイラ、調停委員会基地に同時攻撃を行い…






内戦が起きてる⁈ど、どういうことだ!



俺はニュースを聞き、以下のことがわかった。




企業間紛争法により合法化された抗争らしい。経済に大規模な影響を与えないように、事前に攻撃をしてはいけない施設や部隊などのリストを作成、リストに記載されていない資源を巡り争っているが、それは末端の末端。


日本で言うところの、企業がスポーツのようなものだと。この戦いの勝利が広告となる、広報活動の一環らしい。えぇ…





…んん?待てよ。リストに記載されていない施設は襲えるのか………?ということは………



………まだ時間はあるな。






その後、俺は法務局に開業届【業種:略奪】を提出し開業。銀行や商人に株を売り払って資金を調達、その金で傭兵を雇用。



そして、リストに記載されていない秘密研究所を襲撃制圧!この秘密研究所を足がかりに、どんどん俺の企業勢力を拡大していくぞ!





………と思ったら、全勢力が一致団結して俺の傭兵部隊を襲撃、見事に壊滅した。



おまけに臨時株主総会で俺の退任決議が可決され、会社は俺の手から離れてしまった。



クソッ!100%株を売り払うべきではなかった!










速報です。株式市場において、山田ハゲタカファイナンス名義で株式の買い付けが行われました。


購入されたのはアメリカ企業『ハングリーバーガー』『キングステーキ』『ビッグピザ』など外食産業、食品業が買い占められました。


これらの株式は株式市場から正規に購入されたものから、個人投資家や金融機関から取引時間外に強制的に購入された物であり、相場の10倍の値で買い取られたとのことです。この取引が有効かどうか議論されています。


また、この買い占めの影響で『星間艦隊』来襲リスクから冷え込んでいた株式市場は一転して外食産業はストップ高になりました。これは地球外への進出による売上増加を見込んでとのことです。















第14エリア前線司令部



「ああ………」



我が軍の航空基地防衛戦は突破され、滑走路に敵兵たちが雪崩れ込んでくる。次々と蛮族に航空機や施設が焼き討ちにされ、もはや基地機能の防衛は不可能だろう。


もちろん、天使達も抵抗はする。バリケードを築き、銃や魔法で最後まで応戦するが、そんな物あの蛮族相手に通用する物ではない。


その光景はこの航空基地だけではない。前線のあらゆる防衛設備が、無限にも感じる、殺到する敵の侵攻を阻止することができず一方的に敗北する。


既にこちらの精鋭達は皆戦死した。誰もこの勢いを止めることはできないだろう。






だが、どれだけ地上で負けてもよかった。我々には翼がある。この翼を活かして制空権を維持し、敵の後方を襲撃する。



空こそが我々の世界だった、制空権さえあれば、何もかもが違った。


だが、我々は制空権を失った、それもすべて………



「いったいなんだあれは!」


「竹です」


「そんなことは分かっている!」




一夜にして、敵の陣地を覆うように生えた緑色の壁!調査では竹らしい、意味が分からん!


あの空高くそびえる竹の高さは尋常ではない!我々天使でさえも、この竹を超えることはできないのだ!


さらに竹の上には、砲台や機関銃で武装され、天使は一方的に打ち落とされ、射程内のあらゆる地上の陣地が叩かれてしまった。これでは空に飛び立つことが出来ない。


「閣下。第322臨時混成師団より連絡です。我が師団の損耗率80%を超過。援軍の第324臨時混成師団も既に崩壊。これ以上の戦闘は不可能、撤退の許可を求めると」



「だめだ、撤退は許可できない」


「しかし………」


「撤退してどうする!もはや一度下がらせて再編成する余裕はない!既にどの部隊も壊滅状態だ!322だけを特別扱いすることは出来ん!



「閣下。中央から援軍です。それだけでは有りません、南部軍管区より追加の援軍を派兵するとのこと」


「………よし、これで一安心だ。気にするな、兵力だけは我々の味方だ。ただ兵士をぶつけ続ける、それで時間を稼げればそれでいい」




安堵した瞬間。



司令部を何の前兆もなく、地下深くから湧き上がるような力強い揺れが襲った。


急激な揺れに、机や椅子が踊り出し、書類や機材や装置が倒れる。壁のひび割れが広がり、天井からは埃が舞い上がる。


未だ体験したことのない強烈な地震が、司令部を揺るがし、混沌とした状況を作り出した。




「じ、地震か⁉」


「待て、な、なんだあれは」



司令部要員の一人が絶叫しながら指を指す。


総司令部があるはずの山脈がひっくり返り、地面の中から神話に語られるような獣の巨人が起き上がり始めた。









「陽動作戦、成功ですね」


首無しは笑う。全てが作戦通りだ。


ホムンクルス軍によるこれまでの作戦は全て陽動。


この隙をついて、味方の砲撃部隊や空爆部隊には、爆弾以外にもネクロマンサーの蘇生能力と効率を向上させる魔道具をばら撒かせた。



先んじて潜入させた愉悦のフォーは率先して神を制御する人員を撃破した。



また、幾度となく北部戦線に兵力を拠出したことで、警備が薄くなり、山脈全域に首無しとその配下であるネクロマンサーを潜伏させることにも成功。



ダメ押しに、星読みの聖女が襲撃した要塞。あれは地下に眠る神を封印する要所だ。いやはや、直感というのは恐ろしい。我々の作戦など知らないはずなのだが。




「さあ、蘇りなさい」




冥府の神エリオ。あなたはこれから、山田様の神話体系に組み込まれます。








山田視点



「うおおおおおおおお」


そこだ、いけ!ぶん殴れ!


山脈各地に配置された基地が神により踏み潰され、高塔が小枝のようにへし折られていく。



山脈の下に眠っていた冥府の神が蘇生した。


相当な巨体であり、全長数キロ!敵の総司令部が存在すると予想されていた神殿群は冥府の神の腹の上にあったらしい。地面からひっくり返され、文字通り崩壊。敵の総司令部を失った敵軍は大混乱!


そしてこれまで天使軍に与えていた加護が反転し、今は逆に呪いをまき散らす。各地の砲台や結界は暴発し、天使達に照準をさだめ打ち落としていく。




もはや何のジャンルかわからない。神は何故か紫色の極太ビームを何十発も打ち続け、蹂躙していく。



特撮映画みたいで凄いな!




●第14エリア司令官オルト・ヒストリアエネルギー担当大臣が死亡しました。






やったぜ!


敵軍は完全に統制を失い、逃げ惑っている。神と戦うという選択肢はないのだろう。敗残兵狩りは冥府の神と傭兵たちに任せるとしよう。






さあ、次はどのエリアを攻略しようかな。









●クラン【中位ユーザー連盟】所属アルカディア帝国指定ユーザー【マレニア・ユグドラシル・ワン】により【アイテム禁止権】が発動しました。今後山田竜氏に与えられたアイテムであるガチャの使用が禁止されます。権利有効時間24時間。




は?



●クラン【中位ユーザー連盟】により【招待制中規模ルーム】へと招待されました。


ルーム内は非武装であり、殺傷行為は禁止されています。ホストの許可無くルームに侵入することが出来ません。最大定員50人。現在49人が入場中。


●メッセージが届きました。


「選択しろ。我らに従属するか、滅びるか」






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