うっかり女神の転生ミスで、もらったチートスキルが「いいわけ」
帝国妖異対策局
こんなスキルじゃ死ぬるわ!
「……というわけで、私の大陸で好き勝手に暴れまわっている魔王を退治してください」
俺の目の前に突然現れた弓と純潔の女神エルフリン。何か色々おっしゃっていたようだが、私はその美しい顔の造形と長い銀髪、そしてスラリとしたスタイルに目を奪われて話をあまり聞いていなかった。話の内容はわからないが、つまり貧乳は最高だってことだな。
「……ということで、これからあなたを異世界に送ります。準備が必要ならその旨を申し出てください。……準備はいいようですね。では送ります!」
ぼわわー-ん!
俺は自分の身体が薄くなってきたときになって初めて、女神の白くて長くて踏んでもらいたい魅惑的な足から目を放すことができた。
「ちょっ!? 俺の身体が消えてる!? どうなってんの?」
「あまり動揺しないでください。異世界転移は非常に繊細な作業なのです」
「で、でもでも! 俺の身体が消えてる! ヤバイよ! ヤバイ!」
「あぁ、暴れないで! そんなに動いたらステータスの定着が! あっ……」
女神は一瞬「しまった!」という顔をしたが、とりあえず明らかな愛想笑いで俺に手を振った。
「まぁ……大丈夫? だと思うので頑張ってください」
ぼわわー-ん!
こうして俺は異世界にあるラミニスタ大陸に転移されてしまったのだ。
「なんじゃこりゃ!?」
異世界についたときにまずやることと言えば「ステータス」の確認だ。まぁ、それなりの値っぽい内容だと思う。ただスキルはたった一つしかなかった。
そのスキルは【いいわけ貫通MAX】。
スキルの説明欄を読むと、どんな無茶な言い訳でも押し通せてしまうというものらしい。
凄い! これが日本だったら凄く有能なスキルな気がする! これで政治家になったら首相まで狙えそう……な気がする!
だがここは異世界だ! こんなスキルでどうやって魔王を倒せっていうんだ!
……と、思っていた時期が俺にもありました。
超チートスキルだった。
すぐに俺はこのスキルが、論破王が魔王を退治する路線で応用することができることに気付いた。
論破王の場合、「ハイ論破!」とか言って、曲がりなりにも相手をやり込めている攻撃的な戦い方をする。
俺のスキルは逆。相手にへりくだる感じなのがちょっと情けない。けれど、このスキルの凄いところは「いいわけ」の中に「お願いごと」を入れても有効だという点である。
うまく使えば、無敵だ。
魔王城に辿り着いても、俺は相変わらずへりくだった感じだった。
「異世界の勇者! よくも我輩の前に顔を出せたものだな!」
魔王は牛頭の恐ろしい巨人だった。だが彼の隣にいる女王と姫は、顔は超美人で胸が素晴らしいサキュバスもかくやというエロ魔人だった。
「お義父さん! 話を聞いてください!」
俺は魔王にいいわけを開始する。
「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」
「パパ! 私のお腹の中にはもう異世界勇者との子がいるの!」
俺の【いいわけ】スキルをフル発動させて、口説き落として、行くところまでいってしまった魔王の姫が、俺をかばうように間に入る。
「き、き、貴様! 我が愛娘に……ゆるざん!!!!」
「まってくださいお義父さん! それにお義母さん! ぼくたちは、お二人の孫たちに家族が憎しみ合う姿を見せたくないんです!」
「孫!?」(魔王)
「孫たち!?」(女王)
【いいわけ】スキルの良いところは、【論破】スキルと違って論理性や整合性は必要ない。必要なのは熱量。それだけだ。
「孫たちにはおじいちゃんとおばあちゃんを大好きになって欲しい! 俺は人間だから人間とも争わないで欲しい。孫には半分は人間の血が入っているんですよ! なのにおじいちゃんが人間を憎んでいるなんて孫が知ったら……」
俺はスキルをさらに発動させて話す。
「女神に使わされた勇者である俺が、貴方たちの娘と結ばれて彼女が子供を宿した。これは大いなる意志! 天なる父と大地の魔神が願う人と魔族の和解! 種族を超えた愛! 大いなる愛です! これが愛!」
俺は叫びながら姫のお腹をさする。
「孫に争いの世界を引き継がせたいですか? それとも……」
魔王と女王の視線が姫のお腹に釘付けになっている。
「平和な世界をありがとう! おじいちゃん! おばあちゃん!と孫たちが喜ぶ顔を見たくないですか?」
魔王と女王が頭をこくこくと頷いていた。
こうして――
魔族と人間の間に和平条約が交わされた。
あとで女神からクレームが入ったが、俺のスキルは女神にも通じたようで、
「まぁ、平和になったからこれでも良いわ」
と話はまるく収まったのだった。
~ おしまい ~
うっかり女神の転生ミスで、もらったチートスキルが「いいわけ」 帝国妖異対策局 @teikokuyouitaisakukyoku
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