逢魔が時の出会い、罪深き朝

もやしいため

第1話

 微睡みからふわりと意識が戻る。

 最初に感じたのは『頭が痛い』という、本能的な危機の報せ。

 次いで感じ取るのはトイレがあたしを呼んでる気配。

 喉の渇きもなかなか深刻で、されど動くのも億劫なほど全身くまなく怠い。


 どう考えても二日酔いの症状に、『いい年して』と内心一人でごちる。

 それにしても……昨日は何をしていたんだっけ?

 開かない重い瞼をそのままに、記憶を探っていく。

 たしか友達アヤと居酒屋で……そう、昼から飲んでたんだった。


 一軒目はたこ焼き屋。

 狭い角地にせり出すように建っていたところ。

 店舗の窓から受け渡しできるテイクアウトスタイルだったかな。

 店の壁に沿ってカウンターテーブルと椅子が何脚か置かれてた。


 そこの二つを陣取って、アツアツのたこ焼きを口に頬張る。

 ふはふと口の中で躍らせて熱さを逃す。

 トロリと舌を撫でるダシとソースの味、青のりの香りが鼻を抜けていく。

 空っぽの胃にじんわりと熱が広がっていくのを……冷えたチューハイで洗う――


 うん、この辺で余計に喉が渇くからやめとこう。

 その店でぐいっと一杯やってから、次に向かったのは立ち飲み屋。

 串揚げのお店で何本かつまんで違うお店に。油は正義。

 今度は焼き鳥が食べたくなっちゃって、別のお店にはしご酒。


 あちこちでゆっくり飲んでもまだ夕方に差し掛かったころ。

 少しはちゃんとご飯を食べようと、狭いカウンターのお寿司屋さんに。

 お酒の銘柄は忘れちゃったけど、日本酒美味しかったな。

 あ、ネタも新鮮で、お寿司も刺身も出してもらった。


 店主に見送られて、次に入った最後のお店で運命の出会いってやつが待っていた!

 そう、最後、そうだった!

 とびきり可愛い看板娘が、あたしの隣に来てくれてね!

 ふわぁって欠伸をしたりして、ほんと可愛いの!


 もちろん、すぐに差し入れしちゃったよ!

 そのお陰ですごく仲良くなってね。

 ほおずりなんかして、へへへ……周りに嫉妬されてたぜ!


 そして今は――布団に温かさを感じる。

 うん、ベッドで一緒に寝てるんだ。

 やばい……連れて帰って来ちゃったらしい。

 頭痛で言い訳も思い浮かばない。

 謝れば許してくれるかな……お店の看板娘このこどうしよう?


 ――にゃぁ


 あたしの葛藤も知らずに彼女にゃんこごはんを催促してか、一声鳴いて顔を舐めた。

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逢魔が時の出会い、罪深き朝 もやしいため @okmoyashi

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