面倒な彼女の面倒ないいわけ

MURASAKI

口癖

「お前のいいわけはもう聞きたくない! おかしくなりそうだ」


 こうして、私はフラれた。初カレはかっこ良くてモテる人で、ちょっと背伸びした恋だったから……余計に未練たらたらになってしまうのは仕方ないと思う。

 落ち込む私を見かねて、幼稚園からの腐れ縁で幼馴染のユイが愚痴を聞いてくれると言うので、居酒屋で女子会が開かれることになった。


「「カンパーイ」」


 普段は頼まない生中をグビグビと一気に流し込む。お通しに手を付けず、空の胃袋に一気に流れ込む冷たい感触が今日は少し心地いい。身の丈に合わない男より、気の合う女友達がイチバンだとしみじみ思う。

 本題に入らず、たわいない話をしながら料理をつまみ酒を飲む。ビールのおかげでいつもより酔いが早く回って、ふわふわと心地よい気分になってきた。嗚呼、心の傷が癒されていく……。


 そんな心地の良い気分を、あろうことかユイがぶち壊した。


「いやー、でも“いいわけ”が理由でフラれるとか、アンタ何をいいわけしたの?」

「知らない! 私が知りたいくらいだよ。あんな別れ方、いいわけ?」

「ええ? 理由も分からずに別れたの?」

「そうだよ、いっぱい尽くしたわけ。いい? 私だって……ひっく」


 アルコールの勢いで泣き始めた私をなだめようと頑張るユイだったけど、逆効果だった。


「うんうん、そうだよね。ユイは凄く頑張ってたのワタシは知ってるから」

「こんないい女、振っていいわけ?」

「うん、うん」

「一生懸命作ったお弁当を捨てるとか、そんなのいいわけ?」

「シンプルにヒドイしそんなことしてもいいわけ?」

「いいわけ? 私は今までずっと頑張ってきたのォ!」

「いいわけないじゃないー」

「こんないい女捨てていいわけ?」

「ぶっちゃけ、いいわけェ」


「アンタ、それじゃね?」


 あまりの“いいわけ”の多さに、ユイは既にゲッソリしている。


 私は「いいわけ」の多い女。既に口癖と言っても

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

面倒な彼女の面倒ないいわけ MURASAKI @Mura_saki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ