佳夏の世界の七大珍味 Lost Story

ろくろわ

Last Story

 政治家や海外の著名人がお忍びで通うレストラン『Lost Story』


 佳夏よしかはこのレストランのシェフであり、その料理は至高の逸品だった。

 野菜から肉料理を。

 お肉から魚料理を。

 例えそこに無い食材でも作り出す事が出来る創意と工夫の天才。皆から敬意を込めて『料理の錬金術師』と呼ばれていた。


 そんな佳夏には心配な事があった。


 それは一人娘の佳子よしこの事だ。

 佳子には佳夏を凌ぐ料理の才能があった。少し不器用で調理器具の使い方は下手だが、とても幼稚園児とは思えない母親譲りの舌と創造力が料理の幅を広げた。

 母親の佳夏の料理ですらそれを欲する人達が奪い合う事があった。

 佳夏本人を手に入れようとする輩もいた。

 このまま佳子が上手に調理器具を使い料理を一人で作れたら、どんな危険な目に合うか分からない。

 だけど成長していく佳子の腕を止める事は出来ない。


 佳夏は悩み一つの古いレシピを開いた。

「願いの叶う世界の七大珍味料理」

 その余りの美味しさに願いが叶うと言われているレシピ。本来、材料を揃える事すら難しいのだが、佳夏はお店で作った人脈を使い全ての材料を揃える事が出来た。


 揃えた珍味を佳夏は料理にしていく。

 ラフレシアの花弁のサラダ。

 不死鳥の舌のボイル。

 キャビアのクラッカー。

 八咫烏の巣のスープとトリュフの香り付け。

 マンモスステーキのフォアグラ乗せ。


 佳夏はその料理を佳子の前に並べ心から「佳子の料理が上手くならないように」と祈った。

 佳夏の願いが通じたのか佳子はその日以降、調理のセンスは残ったが調理器具の使い方や手順が壊滅的に下手になっていた。

 佳夏はそんな佳子の様子を見て、料理の道を閉ざしてしまった事を悩んでいた。

 だけどこれで佳子が狙われる事は無い。

 そう佳夏は自分にをして七大珍味料理を作った後、店をたたみその姿を消した。




 今は失われた話。

 Lost Story。



 これは佳子の幼き日に起きた話。




 了






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

佳夏の世界の七大珍味 Lost Story ろくろわ @sakiyomiroku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ