後編

 あれから俺らは、変わりなく過ごしている。


 クリスとは相変わらず友達だし、あの時の実験の話は一切していない。


 だから、あの夜の出来事は本当に起こったことなのか。俺が夢を見ていただけじゃないのか。いまだにわからない。

 クリス本人に訊けばいいんだろうが、もし夢だとすれば、クリスにからかわれそうで、それは癪だ。というわけで、訊けないでいた。


 この日の化学の授業も、何となく身に入らず、ぼぅっとクリスを見ていた。

 柔らかな金の髪。あの時の、淡く光ったクリスの髪は、これ以上ないほどに綺麗だったなと、そう思って眺めていたら。


「カークランド、またぼけっとしているのか」


 担任教師に叱られて、また呼び出しを食らう始末。

 あーあ、目の前に座ってるのがクリスじゃなけりゃなぁ。


「また怒られたでしょ」


 なんて、クリスは悪戯っぽく言ってやがる。


「誰のせいだと思ってんだ」


 俺はぶすっとして、唇を尖らせて。


「え? 僕のせいって?」


 クリスのからかいに、俺は目を瞬かせる。

 クリスを見れば、頬を染めて、照れを誤魔化すかのように笑っていた。


「また、夜の実験する?」


 なんて、含みのある言い方してさ。


 あぁ、こいつには一生振り回される気がするな、なんて。

 そう思いながら、俺はクリスの瞳を見ていた。


.。*゚

『星屑の光に溺れて、君を見る』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星屑の光に溺れて、君を見る LeeArgent @LeeArgent

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ