第19話 敗北


「リヒト大丈夫だったの?」


「危ない事にならなかった?」


「揉め事に成らなかったか?」


「ああっ、全然大丈夫だよ! 衛兵を呼んだら『ちゃんと解決』してくれたから!待たせてごめんね!さぁ食べようか!」


流石は高級店、まだ食事は出されてなく、マリア達には飲み物だけが出されていた。


「「「うん」」」


何だか凄く嬉しそうだ。


こんな高級料理食べた事ないからな。


ある意味勇者パーティは不遇だ。


1箇所に長い事居られないから、予約がとりづらい。


使うお金は『支援金』だから、余り豪遊は本来できない。


だが、それは世間体を気にするからだ。


一応、4職は教皇に並ぶ貴人扱いだ。


実際に権力を振るえないが地位はある。


つまり、王族や貴族でも、本来は文句等言えない。


まして、平民の命等虫けらみたいに扱っても誰も文句は言わない。


『さっきの奴らはあそこで殺されて幸せだった、もし生きていたら異端者の家族として身内に迄咎が行く可能性がある』


あと…悪い、俺の財布になってくれ。


◆◆◆


「美味しい…流石高級レストラン、お肉が凄く柔らかい」


「うんうん、本当に美味いよ…このお肉頬っぺたが落ちそうだよ」


「このワインも最高だぁぁぁあーー」


うん、やっぱり個室で正解だった。


食事の仕方が最悪だ。


マリアは上品に食べようとしているが、偶にお皿をもって犬食いしている。


リタは上品に食べているつもりなのだろうが、食べながら話すから口から食べ物が見え隠れしている。


エルザなんて、うん食事をポロポロ落として実に冒険者らしい食事風景だ。


俺だけでも…一応はマナーを守るか。


暫く食事をしているとリタの手が止まった。


その後、何故か俺を見ている。


俺、何かおかしい事をしたのか?


「綺麗…」


急にリタが漏らした。


「どうかしたの?」


「いや、リヒトに見惚れていたの…食事の仕方が綺麗だなって、まるで貴族の人の食べ方見たい…」


「そうか? 普通に食べているだけだよ」


俺の食べ方は前世のテーブルマナーだから、この世界で正しいかどうか解らない。


少なくとも、まぁ三人よりは綺麗ではあるな。


「そんな事無いよ! 気品があると言うか…うん凄く綺麗」


「そうか?もし、そう見えるなら、それは3人と一緒だからかな、一応これでも男だから、好きな女の子の前位はねカッコ良く振舞う努力位はするよ」


「確かにリタが言うだけあって上品に見えるね」


「本当に貴族か王子様みたい…リヒト凄くカッコ良いよ、最近どうしたの急に大人っぽくなって…なんと言えば良いのか…あはははっ良く解んないけど、凄くカッコ良く見えるよ」


「確かに…そうだな」


「そう言って貰えたら嬉しいな…頑張ったかいがあるよ…さぁ冷めないうちに食べよう」


「「「うん」」」


この笑顔癒されるな。


やはり、俺にはこの3人が凄く可愛く見える。


楽しい、食事の時間も、もうじき終わり、今はデザートを食べている。


この世界で初めて食べるショートケーキは格別に美味しく感じた。


3人もこれには感動したようだった。


「凄く美味しかったわ、リヒトありがとう」


「うん、凄く美味しくて感動しちゃった…本当に美味しかったよ、こんなの初めて、本当にありがとうね」


「こんなごちそう初めてだありがとうな」


「堪能してくれたなら良かった…それとプレゼントがあるんだ! 受け取ってくれるかな?」


俺はあらかじめ用意した宝石のペンダントを袋ごと渡した。



「これ…シャルロー宝石店の袋じゃない、どうしてこんな高価な物をくれるの、流石にこれは受け取れないな」


「リヒト…私は受け取るよ。これはリヒトの気持ちなんだよね!嬉しい…本当にありがとうね!」


「私もこれは受け取れない、私はリヒトじゃなくガイアを選んだんだ…悪いな」


「そう、だけどこれは、そう言うつもりじゃ無くて、大好きな幼馴染へのプレゼントで…」


「そうかも知れない…だけどリヒトが私達の事を好きな気持ちが嫌と言うほど解ったよ、だけど私はその気持ちに応えてあげられない…ごめんねリヒト」


「…」


「私も同じだ、好きなになってくれて嬉しい…だけどゴメン」


あはははっまだ早かったか。


でもこの『ゴメンなさい』は堪えるな。


「そう…一応部屋をとって置いたんだけど」


「やっぱり下心があったのね、ごめんなさい…私が選んだのはリヒトじゃなくてガイアだから」


「…そう」


「私もそうだ…」


いや、流石にそんな事考えてないよ?


幼馴染相手に4Pなんて…あっ!どこぞのアホはやっていたな。


「あはは、それは違うよ! 王国ホテルはリゾート施設満載なんだよ!とった部屋は3つだけだから、元から俺は帰る予定だったから、折角だから楽しんでいってよ、もう支払い済みだし…下心じゃないから」


「ごめん…勘違いしたみたいね。それじゃ楽しんでいこうかな…だけど、もうこう言う事はしないで良いから」


「…」


「そうだな、ガイアと付き合っているのに心苦しいから…悪い」


これは完全な完敗だな…


また、何か考えないとな…


ガイアを折角切り離せそうなのに…


「そうだよね…ちゃんと解っているから…大丈夫だから、あはははごめんね…それじゃ…」


解っていた事じゃないか。


一流と言われた『佐々木さん』や『鷹さん』でも『特定の女1人』を口説くのは難しいって…


前世でも失恋しただろう…


馬鹿だな、なに俺は勘違いしていたんだ。


俺はその場を立ち去るしか無かった。

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