第18話 馬鹿にすることは死を意味する


「あの、リヒト流石に此処は場違いなんじゃない…」


「私達、ちょっと浮いているし恥ずかしいよ」


「こう言う所に来るのにこれは…」


確かに浮いているし周りからはヒソヒソ声が聞こえる。


『嫌ね…王国ホテルに来るのにあの恰好、信じられないわ』


『どこの田舎者なのかしら? あ~あ恥ずかしい』


『ドレスコードも守れないのに良く来るな、馬鹿じゃないのか?』


俺は個室をとってあるから、この後は問題が無いが…俺の幼馴染を悲しそうな顔にしやがって…腹が立つな。


『おい、あれ注意しろ』


俺は案内しているホテルマンに注意した。


『出来ません、あの方たちは大商人デルモンド商会の方で』


『お前が注意しなかったのが悪いんだからな…知らないぞ』


『えっ』


貴族じゃ無いなら簡単だ。


◆◆◆


「おい、お前等今、俺達を馬鹿にしなかったか?」


「したも何も、田舎者を馬鹿にしてなにが悪い」


「ドレスコードも解らないような野蛮な人を馬鹿にして何が悪いのかしら?」


「田舎者はお前達だ…豚が着飾っただけで偉くなった気になっているんだな…」


「本当に野蛮な奴…貧乏人の癖に儂を豚だと、笑わせてくれる」


「そう…だが、これから一瞬でお前は犯罪者で貧乏人になるぞ?」


「天下のデルモンドがか? 衛兵につまみ出されないうちにやめたまえ..薄汚い野良犬が…」


「だったら、衛兵を呼べば?」


「ああっ、呼んでやろう野良犬が…」


「嫌な思いをさせるのは嫌だから俺の連れは先に個室に案内して置いてくれ」


「「「リヒト」」」


「大丈夫だから…ほら、そんな顔をしないで」


「解りました」


これで良い…これで3人に嫌な所を見せないで済む。


◆◆◆


「なんだ、女の前で恰好をつけたかったのか? 見た感じ田舎娘だがそこそこの器量だ。こちらに差し出すなら先ほど無礼は許してやろう…なんなら少しは真面な生活が出るように下っ端として雇ってやろうか」


ようやく衛兵が駆けつけて来たな。


「何事ですか? デルモンド様じゃないですか?」


「この者が絡んでくるのだ…牢屋に放り込んでくれ」


「はっ」


「お前、こちらの言い分も聴かないのか?」


「黙れ、デルモンド様に逆らったのだ、牢屋に放り込んでくれる、すぐに出て来れるとは思うなよ」


「その男の連れの娘も無礼を働いた、そちらはこっちに引き渡してくれるか」


「お望みのままに」


癒着かよ…


全部で10人か…


「一応聞いておくけど? 他の9人も同じ考えなのかな?」


「「「「「「「「「…」」」」」」」」」


だんまりか?


止めなかった時点で同罪。


「それじゃ衛兵が来た所で癒着が判明と…俺は此処迄したく無かったんだよ…ただ2~3発殴って終わらせても良かったんだが…悪いな『もう死しかない』…取り敢えずはこれだ…ファイヤーソード」


「やめろーーーっ!ぎやゃあぁぁぁぁぁぁぁ熱い、ああ、助けてくれーーーっ」


空中に剣が現れデルモンドの肩を貫いた。


「痛ぇぇぇぇぇーーー誰か誰か…そいつを殺せーーっ」


手加減したから死なないだろう…まぁ後で殺されるだろうけど。


「貴様、我らの前で暴力なぞしょって、しかもデルモンド様を…」


俺は冒険者証を取り出した。


「勇者パーティ『ブラックウィング』所属 リヒト。勇者保護法にある『聖女侮辱罪』で処刑させて貰った。恐れ多くも聖女であるマリア様をあざ笑い、自分の女として差し出せと喚いたあげく、賢者リタ様や剣聖エルザ様を侮辱した罪だ…それじゃ残りの客も同罪…なので処刑する、アイスソード」


「待て、待ってくれ、俺は聖女だなんて知らなかったんだ」


「止めてよ止めて…謝るから、謝るから、この通りよ」


空中に無数の氷の剣が現れ…デルモンドの連れの客の体を貫いた。


ちゃんと死なないように手加減はしてやった。


「ゆゆゆ勇者パーティですか?」


「いや、そうなんだよ! 折角3職を囲んで食事をしようとしていたら侮辱の声が飛んできてね…聖女様達を馬鹿にしてきたんだ。いかに大商人と言えど許せないだろう…可哀そうだから、君達で殺して終わりにしてくれないか? あとデルモンドの資産は、これから行って全部差し押さえして『冒険者ギルドのパーティの物にして置いて』任せるから…どうだい? 今回はこの後食事の予定があるからこれで『癒着』の件は黙っててあげるよ…どうだろうか?更に今なら教皇様に『聖女様を侮辱した者の処刑に協力してくれた』と書類に君たちの名前を書いておくけど…どうする?」


「ハッ、有難き幸せ…お前等、そこの罪人を連れていけ! こちらで処分しますのでご安心下さい!」


「そうだ、折角だから徴収したお金の5パーセントをついでにあげるから…全部終わったらギルドに報告しにきてくれ!受け渡すから」


「宜しいのですか?」


「ああっ構わない」


この世界は物凄く『勇者達に甘い』勇者や聖女は実際の権力は兎も角『半分信仰の対象』だから教皇や王並みの立場にあり、侮辱したら死刑になる。


尤も殆ど歴代の勇者や聖女は性格が良かったのか、俺みたいな事をしたと言う話は聞かないが、教皇や王族、それ処か貴族ですら怒らせたら殺されるのが当たり前の世界。聖女を侮辱したら死んで当たり前だ。


殺してあげるのも実は慈悲なんだ…彼らが死ななければ、その一族まで罪が及ぶからな。


さてと…


『ホテルマンくん、君がしっかり注意してくれれば、あのお客たち死なないで済んだのに…これからは気を付けるんだよ』


此処迄やれば、もうこの系列ホテルで粗相される事も無いだろう。









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