第4話 四天王が残り3人と、魔王がいる?
さて村に近づくなり、
「勇者様」長老みたいな人が僕に近づいてきた。「話は聞いております……シオンを助け、さらにアヴァールまで倒してくれたとか……」
「アヴァール……」あのドラゴンか。「いえ……その、僕が倒したわけじゃなくて……」
「なんと……シオンの頑張りも評価してくださるのですね」違います。本当に僕がやったんじゃないです。「とにかく……ようこそお越しくださいました。ここは小さな村ですが……精一杯のおもてなしをさせていただきます」
「そ、そんなおもてなしなんて……」
「ご遠慮なさらず」遠慮じゃない。本当にもてなされるようなことはしてない。「しかし、まずはシオンの手当てですな……」
「あ……そうですね」
僕は背中に背負っていた少女……シオンさんを村の人たちに渡す。これできっと治療を受けることができるだろう。助かるかどうかは不明だが……まぁ息はあったし大丈夫だろう。
「さて……ではこちらへ……」長老は僕の手を引いて、「皆、勇者様の登場を心待ちにしております。もう少しでパーティの準備が整いますので、しばらくお待ちを」
「パーティとかそんな……」
マジでやめてほしい。罪悪感がすごい。僕は本当に何もしてないのに……
そのまま、村の中に僕は運び込まれた。そこまで大きくない村らしいが、多くの人が僕を……勇者を見に来ていた。全員が僕に尊敬の目線を向けていた。これで僕が本当に勇者だったら良かったのだけれど……僕は偽物だ。しかし期待は裏切りたくない。
しょうがない……ここは勇者のフリでごまかそう。少ししたら逃げればいい。
「さぁ、こちらをどうぞ」案内されたのは、とある部屋のテーブル。そして目の前には……「この村にある最高級の食材たちです……お口に合えばいいのですが……」
大きなテーブルに、所狭しと食材が並んでいた。もう見るからに美味しそうな食材が、大量に用意されていた。勇者が現れたと聞いて、すぐに準備されたのだろう。どれも完成したばかりで、ヨダレが出るほど美味しそうだった。輝いてみえた。
しかし……こんな量は食べられない。それに最高級の食材なんて、僕にはふさわしくない。あのドラゴンと戦っていた少女に差し上げてくれ。
しかたがないので、
「……せっかくですし、村のみんなでいただきませんか? ここまでの食材を……独り占めするのは、あまりにも忍びない」
「おお……!」なぜか感動された。「なんと慈悲深い……」
「慈悲とかでは……」
「なるほど……苦しんでいる民を救うのは当然のことだと」なんでそうなるの。「わかりました……勇者様のご厚意に甘えさせていただきましょう。この料理は、後ほどのパーティで村のみんなでいただきます」
パーティとかもいらないんだけど。
……このままだと向こうの空気に載せられ続けるので、こちらから話題を振ってみる。
「あの……勇者、というのは?」
「え……?」しまった。勇者じゃないとバレたか? 「ああ……ご存知ないのは当然ですね。勇者というのは……この村に古くから伝わる伝説です」
「伝説……」
「はい。『世界の滅亡を救うのは、別世界から現れし勇者』という記述が古い石碑にありましてな……その石碑によると、勇者は世界の苦境に現れ、瞬く間に世界を救ってしまうのです。四天王を討伐し、さらに魔王までも……」
「え……」なんか聞き捨てならない単語が聞こえてきた。「……四天王? 魔王?」
「はい……今回討伐されたアヴァールは、四天王の一角に過ぎません」
「……」なんだと……? 「つまり……四天王が残り3人と、魔王がいる?」
「はい」あっさり言うな。重大な事実だ。「その四天王たちに村を襲われて、もう村は限界でした。勇者様が現れて……ついに苦しみから開放されます。本当にありがとうございます」
……苦しみから開放? てことは……僕が残りの四天王と魔王を倒すの? そういうことになってるの? 勇者じゃないのに?
そんなことしたら死んじゃうのでは? 僕が死んじゃうのでは? 異世界に来て、さっそく死んじゃうのでは?
ヤバい……このままだと四天王と戦うことになる。そうなったら僕は死んでしまう。なんとか逃げなければ……様子を見て逃げ出さなければ。村の人達には気の毒だが、なんとかして逃げなければ
そうじゃないと、死んでしまう。
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