雲上庭園『管理人』・天使ホロロの【言い訳】封じ
渡貫とゐち
天使ホロロの【言い訳】封じ
横一文字、であった。
なにがと言われれば、彼女の口が――だ。
天使ホロロ。
山吹色の髪を持ち、重さを感じさせない細さで、腰まで伸びている。
彼女は『神のメイド』であると同時、
そんな彼女は現在、長期間も手入れがされていない濁った池の手前、一切整えられていない歪な形の植木の前で立たされていた。
まるでイタズラがばれた学生が、教室の外の廊下で立たされているかのように……。
「どういうことか説明してもらえるか?」
天使ホロロは質問に答えない。
横一文字どころか唇を内側に入れるように、さらに口を閉ざしてしまった。これでは無理やり指でこじ開けることもできない。
……仮にすれば、神であってもセクハラで訴えられてしまうだろうが。
法は神を裁けない。
しかし、周囲の天使の目は神を罪悪感に浸すだろう。法で裁けなくとも、罪悪感に苛まれた本人が「罰を受けたい」と言えば可能なのだ。
結果、法で裁くのと同じことである。
中世的な容姿を持つ黒髪の神様。
彼は溜息を吐いた。怒っているかどうかと言われたら、怒っている。
怒ってはいるが、なにも問答無用で罰を与えるわけではないのだ……理由を言ってくれればいい。どうして庭園の手入れもせず、以前は綺麗だったこの場所が、こうも悲惨な状態になっているのか……。
「言えないことなのか? 理由を話してくれなければ、前に進めないだろう。
それとも偏見と思い込みで、君の『サボり』と断定してもいいのか?」
「どうせ同じでしょうし」
久しぶりに聞いた声だ。
やっと、彼女が話してくれた。
「どうせ、理由を言っても『言い訳』だと決め付けますし」
「そんなことはない。ちゃんと聞くさ」
「それ、神様の嘘ですし。どうせ『言い訳』になるなら……黙りますし」
天使ホロロは、言い訳に『ならないように』――黙秘する。
黙ってしまえば、絶対に言い訳にはならないのだから。
―― 完 ――
雲上庭園『管理人』・天使ホロロの【言い訳】封じ 渡貫とゐち @josho
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