負け犬少女の悪足掻き 〜負けから勝利を掴み取れ〜

遊多

負け犬少女の悪足掻き

 私は負けた。

 一世一代の大勝負、一対一の真剣勝負に負けたのだ。

 握る拳から力が抜け、生まれて初めて膝から崩れ落ちるという感覚を味わってしまった。


「惨めねぇ、アンタ」


「なん……だと……」


「肝心な所で勝てない……所詮その程度の器……つまり、ざぁこっ……!!」


 栄冠ティアラを手にした仇敵メスガキ が、項垂れる私を嘲笑あざわらう。


「私はぁっ! 何千ものシミュレーションをしんだぞっ!!」


「この日のために?」


「当たり前だ。神にすら縋った!!」


 だから負けるはずがない。だってそうだ。

 私は勝ち上がってきた。修練を積み、決勝まで戦い抜いてきたのだ。

 悔しい。あまりにも悔しすぎる。だけど、これで終わるものか。


「……イカサマ」


「は?」


「思考盗聴したでしょお!?」


「頭イカれた?」


 私も何言ってるかわからない。


「アルミホイルを頭に巻いていなかったから、貴女は私の心を読んだ。じゃなきゃ負けるはずがない、だって」


「っぷ、くくっ……」


「何がおかしい!」


 私の頭が一番おかしいと思う。


「何を言い出すかと思えば、その程度の戯言なんてねえ……!」


「戯言? やっぱ貴女」


「いいや、確かにアンタは強い。だからこそ、私は『立場』を利用した」


 立場?

 っ、まさか!


「そう、癖を知りつくしていた。アンタは勝負所で力が入りすぎる癖がある」


「っ、そんな……まさか!」


「だからぁ」


 額を両手で覆う私に、彼女は耳元で囁いた。


「アンタは、グーを出して、負けた」


「ぁ、あ、ああっ」


 脳が理解してしまった。

 私は完全に『敗北』していたのだと。


「私の揚げパンがああああああっっ!!」


 私は旧友に、たった一つの『おかわり』を取られ。

 給食終了のチャイムと共に、私の絶叫が教室に響き渡った。


「はい二人とも席に座ってー」


「あ、はい」


「時間無いし分けよっか?」


「マジ? さんきゅ」


 他の子から白い目で見られても関係ない。

 こんな馬鹿やれる親友が居るだけで、私は勝ってるのだから。

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負け犬少女の悪足掻き 〜負けから勝利を掴み取れ〜 遊多 @seal_yuta

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