穴

穴

俺には穴があいているから

何をそそいでも無駄だぞ

世界中の宝石をもらっても

全人類に誉めまくられても

全然うれしくない

君にどんなに愛されても恨むぞ

こんなもんか、とせせら笑うぞ

みんな出ちゃうからな、穴から

かように与えるだけ無駄で損な

ぼったくり詐欺野郎です

傷つけられるばっかで

なんの見返りもなく

といって

赤子みたいに可愛くもない

いったい、こんなのを愛せるのか

あなたに

俺には穴があいているから

どんなに愛されようが

ぜんぶ出てっちゃう　なくなっちゃう

それで「もっとよこせ」と

わめきちらして暴力ふるう

まさに底なしザル・ハート

酒なら肝臓癌で死ねるのに

溜まらない愛は

そいつを殺しもせずに

醜く老け込ませる

むしろ最高の罰かもしれんな

俺には穴があいている

底にぽっかりあいている

そんな穴の上に

立派な家を建てました

でも穴だからストーンと落ちちゃう

屋根も壁も床も天井も

それ以前に建つわけねえ

材料を穴に放り込んだだけで

なにもかも嘘だったのさ　フカシだったのさ

この大嘘つきを

愛せるものなら愛してみろ

この仕打ちを

許せるなら許してみせろ

笑ってやるから

この首吊り台から

すぐ戻ってくるお出かけみたいに

気楽に「じゃ、またね」と

鶏のように死んでいく

くびり殺され、焼き鳥になる

一度は

串刺しになっても飛んでみたいよな

そうだろう、通り魔

俺には穴があいているから

いくらそそいでも無駄だ

なのに、おかしいだろ

憎しみだけは流れずに

ずっと残るなんて

全部流れてしまえよ

なにもかも流れきって

無になってしまえよ

だって

もともと穴じゃないか

おまえ自体が

ただの穴じゃないか

俺には穴があいているから

もっともっと愛をくれ

やっと地球を支配した

あまりの惨めさに泣けてくる