いいわけ

斉藤一

いいわけ

 ほら、世の中にはプライベートっていうものがあるだろ? 昔から比べたら、個人にあまり関与しないのが美徳っていう感じの時代になったと思うんだ。もし、自分の家に勝手に人がやってきて、勝手にタンスを調べられたりしたら嫌だろ? まあ、そこまで行かないにしても、自分の敷地を通路代わりに使われるだけでも腹が立たないか? 立たない人も居るかもしれないけど、腹が立つって思う人も居るって知ってほしいかな。

 そうそう、急な来客も困るよね。約束もしていないのに急に来る。それも、複数人とかはありえない。一人で来られても対応に困るのに、何人も来られたら対応しきれないよ。そもそも、なんで対応してもらえると思っているのか。まあ、放っておいたら置いたでどうせ変な噂とか流されるんでしょきっと。あそこはいつも誰も出てこないとか。出たら出たで変な噂が流されるだろうから困るけど。

 特に今日は、天気が良くて、夜空が綺麗で機嫌がよかったのに、そんな日に限って暴走族みたいな、うるさい車で来客があった。車から出てきたのは、男女2人ずつだ。大学生に見えるけど、学生とは限らないか。年齢的に20前後ってところかな。


「こんにちわー」

「いや、こんばんわだろ」

「ああ、そっか。こんばんわー」


 どっちでもいいわ、うるさい。


「誰も居ないの?」

「勝手に入ろうよ」

「お邪魔します」


 ほら、ほうっておいたら勝手に入ってきた。居るって事はちゃんと示さないとだめか。じゃあ、ドアをバンッって閉めてやる。


「キャァッ!」

「だ、誰か居るのか?」


 居るって示しただろ。だから、早く帰れ。


「俺は怖くないぞ。一番奥の部屋まで行ってやる」


 一番奥の部屋って……俺の寝室じゃねーか。絶対来るなよ。来たら後悔させてやる。


「私たちは、ここで待ってるね」


 待ってるじゃなくて、連れて帰れよ! はぁ、やるしかないか。


その日、一人の男性が廃墟で行方不明になった。

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