第21話 いろいろ順調かな
一日が終わり寝る前にメッセージが届いた。
田口:店長さん!商品の方、いっぱい売れましたよ!やっぱり私の見立て通りでした!私はずっと売れると思ってましたから!
田口さんからメッセージ。
それは良かった。
そう思っていたら
ピロン。
また違う人からメッセージ。
(槙島か)
新着メッセージが来てた。
丁度槙島がメッセージを送ってきたらしい。
(どうしたんだろう?)
そう思いながら個別チャットを開いてみると。
槙島:店長さん、お時間ありますか?明日、のお話なんですけど
チラッ。
(丁度定休日だけど)
槙島:お、明日は空いてる感じですか?
槙島とメッセージを交換していくと、用件が分かった。
槙島:じゃあ明日ギルドで待ち合わせお願いできますか?
槙島に行けるということを伝えてスマホをしまった。
さてと。
今日も店の方に行きますか。
◇
翌日。
槙島と待ち合わせていたギルドまできた。
「おはようございます師匠」
「うん、おはよう」
そう言いながら今日の用件を聞く。
「今日はなんの用?」
「それがですねー」
槙島がそう言ったときだった。
ギルドの扉が開いた。
自然とギルド内にいた人達の視線がそっちに向けられた。
もちろん、俺も反射的に見てしまったのだけど、それを後悔した。
(タケルかよ)
そこに立っていたのは俺の弟だった。
タケルは俺に気付くと、近寄ってくる。
「前の話は断ったのに、まだ未練がましく、こんなところにいるのか?」
フン。
鼻で笑われた。
「出来の悪い兄を持つと大変だよ」
「ピッ」
頭の上でリーナがタケルを睨んでいるようだけど。
「情けないな。スライムに言い返させるなんて」
そう言ってカウンターの方に向かっていった。
こいつは俺に会う度に俺を罵倒しないと気が済まない病気なのだろうか。
なんてことを思っていたら槙島が口を開く。
「店長さん、あの人のお兄さんだったんですか?」
「そうだよ」
「Aランク冒険者のタケルさん、ですよね?最近はそろそろSランク入りとも言われてますけど」
頷く。
「出来のいい弟を持つと大変だよ」
軽く笑って話題を変える。
「で、今日は何をするんだっけ?」
「それがですね。えーっと」
そうして俺は槙島に付き合うことにした。
槙島が俺を連れてきたのは草原だった。
「こんなとこ連れてきてどうしたんだ?」
「今日はコーチングして欲しいなぁと思いまして」
「俺に?」
驚いた。
俺にコーチング、ね。
そんなことできるほど立派じゃないんだけど。
「はい」
「まぁいいけど、でも俺は何をしたらいいの?」
「まず、狩りの様子を見てもらってそれでダメなところ、とか教えてもらえませんか?」
・
・
・
そうして槙島の訓練を見終えた。
「悪くないと思うけどね?」
「そ、そうですか?」
「ピッ!」
ほらリーナも悪くないって言ってる。
なんとなくだけど、分かるんだよね。
「で、今日はこれでおわり?」
俺がそう確認をとった時だった。
プルルルルル。
スマホに電話がかかってきてた。
「ごめん。出るわ」
「は、はい。構いませんけど」
謝ってから電話に出た。
「よう。店長。ちょっといいか?」
電話をかけてきてたのは下田だった。
「どうしたんだ?」
「言いにくいんだけどさ、店長の弟がクエストに行ったっきり帰ってきてないらしい」
「まじで?」
「マジだ」
別に俺としちゃどうでもいいんだけど。
あんな弟がどうなろう、とさ。
「一応こういうことって連絡しないといけないからさ。捜索に行くなら声をかけてくれ。クエストを発注しておく」
「そうか、サンキューな」
軽く礼を言ってから通話を終了。
んで槙島に目を戻すと。
「ちょっと聞こえましたけど、今の話は本当ですか?」
「らしいよ」
そう答えながら歩き出す。
「助けに行きましょうよ」
ピタッ。
足を止める。
「気が進まないけどな?」
あれだけ罵倒してくる弟を助けに、なんて正直行きたくないし。
それから。
「俺に助けに行けるとも思えないけど」
だって俺低ランクだし。
「私ももちろん行きますから。行きませんか?」
正直あんな弟どうなってもいいんだけどさ。
「店長さんがあんまりいい思いを持ってないのは分かりますけど、あの人も素直になれてないだけなんですよきっと」
そう言われて思い出す。
小さな日のこと。
母さんはずーっとあんなんだけど、タケルは俺に懐いてた。
『兄ちゃん兄ちゃん!俺、大きくなったら兄ちゃんと冒険に行きたい!』
『兄ちゃんは強いよなぁ。俺も兄ちゃんみたいになりてぇ……』
タケルはずっと俺に憧れてた。
そんで俺なんかを目標にしてた気がする。
で、全部変わったのはあの日の事だった。
俺が足を悪くした時のこと。
『兄ちゃん……嘘だろ……もう、冒険者になれないって。約束したじゃないか!一緒に冒険に出るって!』
あのとき1番ショックを受けてたのって俺でも母さんでもなくて、タケルだったんだよな。
それからだ。あいつが俺を罵倒するようになったのは。
俺が足を悪くしたことに誰よりも怒ってた。
「私、見たことがあるんですよ。タケルさんが店長さんのことで泣いてたの。多分モヤモヤしてるんですよ。あの人も。で、やり場のない怒りって言うんですかね、それをあぁやって、ぶつけてるんだと思うんです」
槙島を見た。
んで、口を開く。
「タケルは助けに行かない」
「そんな、ほ、本気ですか?!」
そう言ってくる槙島に続ける。
「でも槙島は弟子。弟子がもしも危ないところに行こうとしてるなら着いてはいくけどな?それが一応師匠の役目ってわけだし」
そう言うとパァァァっと顔を明るくする槙島。
「素直になれないんですね。店長さんと弟さんも」
俺は割と素直な方だと思うけど。
少なくとも弟より、はね。
「ま、いいや。どっか行くなら連絡してよ。それまでに準備しておくからさ」
そう言うと槙島は笑顔で返事をした。
「はいっ!」
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