第20話
母さんに金は送金した。
それから店を開いていたら
「おっす。店長。昼休みだから飯食いに来た」
下田が来た。
ガラガラなので何処でも勝手に座れと言っておく。
「平日は流石に客来ないんだな」
「立地がね」
都心部からは離れてるし駅からもそこそこの距離離れてるんだよなここ。
だから下田みたいに気軽に来れる人間は少ない。
「そこで耳寄りの話を持ってきたんだが、聞きたくないか?」
「なにさ?」
「駅前の物件が1つ空いててな。この店よりちょっと広いくらいなんだが、興味無いか?」
「まぁ、ないこともないけど」
んー、でも家もついてて下が店っていうこの人をダメにする物件も中々良くてなぁ。
そのことを相談すると。
「そこも上が家の下が店だってよ」
「見に行きたいなぁ?」
◇
結論から言うと俺はすぐさま下田に紹介された物件を借りることにした。
どうやら下田が紹介してくれた物件は下田の知り合いが取り扱ってた物件らしく、いろいろと好条件で契約できた。
「結構いい物件だろ?今の店長ならスグに元も取れるだろう?」
「そうだな。うん。良さそうだ」
今まで使ってきた店を捨てるみたいだけど、やっぱ稼げるうちに稼いでおきたい、というのはある。
リーナもピカピカの床を這ってるしガルもぴょんぴょん跳ねたりしてる。
新しい物件というのはそれだけ気持ちいいのかもしれない。
「モンスターたちも喜んでるな」
微笑ましそうに見る下田。
俺もみんなが嬉しそうにしてると嬉しくなってくるものだ。
「店長も優しいよな。林田のスライムの面倒まで見てやるなんて」
「スライムは残飯とかなんでも食べるし特に負担はないしね?」
なんなら廃棄するものがほとんどなくなったし、節約になってる気もする。
「こいつら何でも食べてくれるもん。俺は食べさせないけど虫とかも食べるらしいし」
「うへぇ……そんなんも食うの?」
「家で放し飼いしとけば黒いカサカサ動くあれもすぐ消えるってさ」
「そう聞くと飼いたくなるけど俺には懐かないんだろうなぁ」
スライムを飼い始めた頃動画見たけど、基本的にスライムは懐きにくいらしい。
俺にはベタ慣れしてるけど、結構珍しいことだそうだ。
正直ちょっと優越感もある。
口には出さないけどね。
と、そのとき。下田の電話が鳴った。
少し会話して
「わり。店長。ここまでだわ。後のことは頑張れよ」
そう言って下田はここを出ていった。
電話の向こうからギルマスの声が聞こえたから呼び出されたんだろう。
さてと、俺はリーナとガルに目を向けた。
「んじゃ、掃除しますか」
「ピィ!」
「ガル!」
前にここを使ってたのも飲食店だったらしく、座席なんかは前のまんま残ってる。
だからそれを掃除すればそのまま使えそうだけど。
……ってかさ。
「結構座席あるな」
下田はちょっと広いくらいって言ってたけどちょっとどころじゃない倍……へたすりゃ3倍くらい広くないか?
座席も50くらいある。
まぁ、今の集客力を考えるとこんなもんで丁度いいかもしれない。
んで、掃除風景もまた配信する事にした。
タイトルは。
お引越しすることにしました、とかでいいか。
概要欄にはもっと多くのお客さんにどーのこーのって書いておいた。
あと住所も。
すると、またスグにコメントがつき始めた。
"お?店広くするのか?ワクワク"
"前の店狭すぎたからなw"
"あんだけ狭かったら行きにくかったし。これは嬉しい"
"しかも立地もぶっちゃけ最悪だったしw"
"でも立地があれなせいで、知る人ぞ知る店みたいになってたけどw"
"これめちゃくちゃお客さん増えそう。俺も立地のせいで行かなかったし"
その間も
「ピピピー」
「ガルー」
リーナとガルは一生懸命床を拭いたり机を拭いたりしていた。
んで、スラリンはというと。
「ズピィー」
よく見るとガルの頭の上で寝てる。
初めて見た時からのんびり屋っぽいなぁとは思ってたけどやっぱのんびり屋っぽい。
"なんかスライム増えてるー"
"愛好家から助けたスライムだっけ?店長さんに拾われて幸せそーだなぁ"
"あの愛好家に抱えられてた時ブルブル震えてたしなw"
"やっぱスラ虐してたんかなぁ?あの愛好家は"
実際のとこは分からないけど。
まぁ、スライムらしい生活はできてなかったんだろうなぁとは思う。
リーナたちに掃除をやらせつつ俺はコメント欄を見た。
"この店いつから営業するの?行ったことないから早く行きたい"
"自分も行ったことないから行ってみたい"
「オープン時期はまた告知しますよー」
そう言っておく。
まぁ、ほんとにいつになるかは分からないからなー。
そこはこっちから告知するつもりだ。
そうして俺はそんなチャットに答えながら引越し作業を進めていくことにする。
・
・
・
「ピィ……」
疲れたのか俺の頭に乗ってくるリーナ。
ここが1番落ち着くのかな?
「グルゥ」
ガルも設置した客用のソファで寝転がってる。
その頭の上には相変わらずスラリン。
「みんな、お疲れ様だな」
そう言って俺は厨房に向かう。
んで今日もみんなにご飯を作ることにした。
「ガル!」
「ピィ!」
「ブルブル」
ガルはともかくスライムで反応が違うのってなかなか面白いかもしれない。
そんなことを思いながらみんなの前にご飯を出すとそのまま食べ始めた。
と、そんなことをしていたとき。
メッセージが届く。
田口:発売日までもう少しですよ!
俺が監修した冷食の発売日がもう少しということを知らせるものだった。
初動。
どれだけ売れてくれるんだろう?
初めてのことだからワクワクする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます