第7話 大手Vチューバ―の目に止まったらしい
ピロン!
ピロン!
ピロン!
「なんだよ……まだ朝だぞ……」
眠い目を擦りながら俺は起きた。
時計を見る。
朝7時。
クソ眠いのに、なんだなんだ。
俺の睡眠を邪魔してくれた元凶に目をくれる。
「またお前か」
ボヤきながら机に向かうとクソ迷惑なスマホを取った。
相変わらず通知が止まっていないようだ。
「今度はなんだ?解体屋のおっさんがクレームか?」
そんなことを思いながら見ると。
またヨンチューブからの通知だ。
この前バズってからしばらく大人しかったと思ったがまた通知の嵐を連れてきやがったか。
忘れた頃にやってきたな。
「なになに」
通知タブを開くと。
"スライムが料理?!"
"すごすぎ!スライムが料理してる!"
"てかスライムが人型になってる?!こんなのできるんだ?!"
何事かと思ったら昨日アップロードした動画に対しての反応があったらしい。
昨日アップロードしたのはリーナがスライムになったり人間になったりしながら料理する動画だったな。
「やっぱりスライムが料理するのが珍しいか」
コメントのほとんどがリーナが料理していることへの驚きだ。
それから
「また、お前か。一周回って俺の事好きだろこいつ」
"スライム愛好家です。またこの非常識な男はスライムを虐待しているようですね。スライムは人型になりません。料理もしません。合成です。騙されないように。皆さんもこの動画は通報してください。これはスライム虐待動画です。子供も見るヨンチューブでこのような動画をあげるなど本当に常識がない男です"
なんだこいつ。
偉そうに。
名前覚えとくか。
「えーっと。スライム愛好家、林田 サトル、か」
今度からこの名前を見てもスルーすることにしよう。
それにしても愛好家のくせにスライムの知識ないんじゃないのか?こいつは。
「はぁ……」
もう少し余裕があるから寝直すか?とか思うけど。
「いや、起きとくか」
なんて思いながらヨンチューブのホーム画面を見ると。
ん?
大手Vtuberである天兎ピョンの配信のアーカイブが急上昇に出てきていた。
「なんだこれ?」
普段は見ないけどVtuberの配信を見てみることにした。
広告が流れたあと本編が始まると。
しばらくリスナーと雑談していた。
「なんでこんなのが急上昇?」
不思議に思って興味もないし配信を閉じようとした時だった。
"ピョンちゃん今日投稿された料理するスライムの動画みた?"
めっちゃタイムリーなコメントがされていた。
それに食いつく天兎。
『え?入力間違えてない?料理するスライム?料理されるスライムじゃなくて?』
なんだそれ。
スライムを使ったメシなんて不味いだろ。
そもそも食えるのかよ?スライムって。
"違うよー。スライムが料理してるんだよ"
『えーっと。日本語って難しい?』
何を言ってるのか本当に分からないような反応をしている配信者。
そこにリスナーの一人が動画のリンクを貼った。
『なにこれ?これがスライムの動画?わっ。すごい1000万回再生されてるよ?!誰?これ!てんちょー?聞いたことない人だなぁ』
ピッ。
配信者がタップして動画の視聴を始めると
『リーナちゃんが料理できるようになりました!』
配信から俺の声が聞こえてきた。
自分の声だ。
聞き間違えるはずもない。
『え?リーナって誰?このスライム?』
動画の再生を始めていきなり困惑している配信者。
"その青色のぷよぷよしてるのがスライムだよ"
『え?この子が料理するの?どうやって?……って人型になった?!えぇぇぇぇぇぇ?!!!!』
"すごくない?!このスライム!"
『スライムって人型になるんだ〜知らなかったな〜』
"でも、これで終わらないんだよなぁ〜"
その後
『ピィ!』
リーナの声が聞こえてきた。
『わぁ!すごい!冷蔵庫からなんか取り出した?!これは……えーっと。鶏肉?それで。えーっと。もしかして唐揚げ作ってる?!』
『ピィ!ピィ!』
配信者に答えるようにリーナがピィピィ鳴いていた。
ただの偶然だけど。
『え?やば。スライムって料理できるんだ』
"すごくない?このスライム"
"ぴょんちゃんもスライム育てようよ"
『いやいや〜。育てるのはいいけどたぶんこんなふうにならないよ?』
"そこはぴょんちゃんの力でさ。頑張ろうよ"
『むりむり〜。えーでもこのスライムかわいい〜』
それからしばらく料理をするスライムの話題で盛り上がってこの配信は終了したらしい。
やはり料理をするスライムはかなり珍しいようだ。
それに人型になるのもたぶん珍しい。
今の配信を見ているとそれくらいはなんとなく分かった。
「よし、いけるぞ」
リーナの力を借りれば物珍しさで俺の店に来てくれる人も増えるかもしれない。
宣伝してみよう。
そう思いながら俺はヨンチューブのプロフィールを編集した。
今まで空白だったプロフィール欄にお店の名前と住所を書き込む。
それから
「えーっと、これかな」
これからの事とかを少し告知できる機能があったのでそこにこう書いた。
「ライブ配信もするつもりです、と」
その時にふと自分のチャンネルの詳細が見える。
「登録者10万人?!」
この前からめちゃくちゃ増えた。
この短時間で?!
こんなに増えるの?!
そう思っていたら新たに通知が届く。
昨日の動画にコメントがついたようだ。
"天兎ぴょんの配信から来ました!"
どうやらあのVtuberの配信を見て動画を見てくれたらしい。
あのVtuberはチャンネル登録者数100万人の大手。
その人に紹介されたからこうしてたくさんの人が来てくれた、ということか。
コメントをじっくり見てみるとそういう人が多いらしい。
(紹介してくれたのはかなりデカイな )
「ピィ?」
声が聞こえた。
そちらを見るともぞもぞと布団からリーナが出てきていたところだった。
時間を見る。
8時くらい、か。
少し早いような気もするが。
「リーナ、今日はもう降りようか」
「ピィ?」
不思議そうな返事をしてきたが手を差し出すと、にゅるんと巻きついてきた。
そんなリーナを連れて俺は店に向かう。
それで俺は速攻紙とペンを用意して、紙にこう書いた。
【ただ今ライブ配信中】
と。
そう書いた紙を俺は扉から外に出て表の誰からも見えるところに貼り付けた。
それで店に戻ると。
「じゃあ今日も準備始めようか」
「ピィ!」
返事をして先に働き始めるリーナ。
俺はスマホを厨房の色んなものを置くところに立てかけて
「よし、じゃあ配信スタート」
配信をスタートさせることにした。
聞けばこうやって店内のライブ配信をして客が増えた店もあるみたいだし期待できるかも!
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