第5話 食材調達

ギルドに到着した俺は目当ての食材があるダンジョンの依頼を手に取ることにした。


今日狩りに行く食材はブールー豚という豚だ。

とにかく手頃で美味しいのが特徴の豚。


現在の主流となりつつある。

チェーン店でも使うくらいだ。


だがまだまだ供給が追いついていなく、今までの豚と比べたら高くなる。


ちなみにダンジョンが現れる前までに使用されていた豚などはもう既に安価な食材となっている。

今はもう俺みたいな弱小店とかしか使ってない。


だがそれも終わりだ。

俺は今日からリーナと共にブールー豚を狩りそれをチャーシューにする。


「さ、いきますか」

「ピィ!」


ブールー草原というダンジョンにブールー豚は生息している。

そこにあるブールー石という鉱石を集めてくれ、というのが依頼内容だった。


それを手に取りカウンターに向かうと


「ん?」


カウンターにいた男が俺の顔を見た。


「あれ、店長じゃん。なんでクエスト持ってんの?」


高校時代の友人の下田がそこに立っていた。


たまに俺の店に食いに来てくれるのだ。


「訳あってね」


リーナに目をやる下田。


「パーティメンバーってわけか。一緒にパーティ組んでたころが懐かしいな」

「ま、そういうわけさ」


そんな会話をしていた時だった。


「あれ?あれあれあれあれ?!」


また声が聞こえそちらを見ると。


「この前のクソ遅店の店長じゃん」


と以前見かけた金髪の男がいた。


「ノロマのおめぇがまさか冒険者?受けるわーwww」


そう言いながら近寄ってくる。


「チャーハンすら満足に作れないお前が冒険?やめとけってwwwいいからお前は俺たち冒険者のために鍋でも振ってろwww」


ゲラゲラ笑いながら男は下田にクエストを渡した。

手馴れた様子で下田は処理を行い男をクエストに出発させた。


俺とは違って高校卒業してすぐギルドで働いてんだっけ?

だからだろう、随分手慣れている。


下田がそれから会話を続けてくれる。


「ブールー豚が欲しいだけなら取り扱ってる奴を紹介してもいいが」

「金がないんだ。自分で取りに行った方が安い」

「なるほど。それならもう何も言えないな」


そう言って俺の分の手続きもしてくれた。


「んじゃま。店長の料理楽しみにしてるぜ」


肩に手を置いて俺を送り出してくれる下田。

それに頷いて俺はリーナを連れてギルドを出ていくことにした。


そんでやってきた草原。

まずは依頼にあった鉱石を回収していく。

石のようにそこらに落ちているのだ。


「依頼の方はこれで終わりかな」


俺は次にリーナを連れてブールー豚を探し始めた。

しばらく探すと


「いた、あそこだ」

「ピィ」


にゅるん。


豚を見て戦闘態勢に入るリーナ。


手を剣の形にしていた。

んで。

ズバッ!


「ピッ」


豚を倒していた。

ここまで俺何もしてない件について。


(俺いらなくね?)


そのまま倒した豚を背負い始めるリーナ。


「ピッ」


んで、俺の前に歩いてきた。

ドサッ。

降ろして手をまた剣にして、解体でもしようとしてるのだろうか?


「あーそれね。街に戻ると解体してくれる人いるからその人に頼むわ」

「ピィ?」


よく分かってなさそう。

まぁそれもそうか。人間の言葉わかる方が怖いよなぁ。


俺はモーションも込でとりあえず背負うように指示を出す。


「ピィ!」


背中に豚を背負ったリーナを見つつ俺も


「スラッシュ!」


昔に学校で習った剣術スキルを発動させて豚を倒す。


ズバッ!

ズゥゥゥンと倒れる豚。


ふぅ……学校で習ったのも、もう何十年も前になる。

できるか不安だったけど問題なくできた。


「一度習ったスキルはそう簡単に忘れないとは聞くが、ほんとだったのか」


よいしょ。

倒した豚を背負い。


「じゃ、帰ろうか」

「ピッ!」


そんなリーナと二人で豚を背負って俺は街に帰るのだった。



「おっ。店長じゃねぇか。ガハハ」


解体屋に着くと中から禿げかけたおっさんが出てきた。

解体屋と言っても俺がそう呼んでるだけで本業は別らしいけど。


「豚の解体を頼みたいんだが」

「任せろ」


クイッ。

右手の親指で隣にある台車に載せとけと指示されたので。


ドカッ。

頑張って豚を載せた。

血抜きとかも全くしてないからくそ重いんだよなこの豚。


なんでしないか?って?

俺がグロいの無理だから。


「ピッ!」


リーナも背負っていたのを真似して台車に乗せた。


「すげぇ筋力だな嬢ちゃん。店長顔負けじゃねぇかよ」


ガハハと笑って見習いに店の奥に運ばせる店長。


「代金はいくら?」

「あの量ならすぐ終わるぜ。それと見習い使うから3000円で構わねぇよ。へへっ」

「恩に着るぜ」


俺はおっさんにお金を渡した。

このおっさんともそこそこ長い付き合いだからこうして安くはしてくれている。


「にしても料理するくせにグロいの無理って珍しくないか?」

「俺は丸鶏の丸焼きで吐いた男だぞ」

「げははは、そういやそんな話も聞いたな。」


なぁ、丸鶏の丸焼きって原型めっちゃ残ってんの無理じゃね?

俺は無理だった。


まぁ、どうでもいいか。

解体屋が口を開く。


「んじゃま、解体終わったら届けに行くぜ」


おっさんはそう言って店の中に戻って行った。


「多分ここまで頼むことないと思うけどこうやって狩ってきたのは解体屋に解体を頼む」

「ピィ」


人との会話が必要なことは俺がやるつもりだから多分やらせることはないけどな。

一応まぁ、説明しておくってことで。


「んじゃまぁ、帰ろっか」

「ピィ♪」


俺はリーナを連れて店に戻る。

町の人たちは多分俺の横を歩くのがスライムだなんて誰1人思っていないと思う。


それくらいリーナの擬人化は凄かった。


これってスライムなら誰でも出来るんだろうか?

どうなんだろうなぁ。


そんなことを思っていたら店の前に到着。

中に入るとリーナの撮影をすることにした。


「ピィ?」

「豚来るまで暇だから休んでていいよ」


そう言うとヌメーっと溶けるようにしてスライム状態に戻るリーナ。

それから俺の腕ににゅるん!と伸びてくる。


「ほんとヌルヌルするな〜」


ヌルヌルでナメクジが這うように俺の腕を移動する。

冷たくてきもちー。


「はぁ〜」


俺は客用のソファに腰を下ろした。


「眠くなるなぁ……」


ウトウト……。

元々あまり寝付きのいいほうでは無いし、睡眠時間も充分とは言えない。


それに久々に剣を持って狩りを行った。

普段使わない筋力を使ってすごく疲れたのだと思う。


だからだろう。すごく眠い。

やっぱ慣れないことはするもんじゃないか。


「少し寝るわ……」


俺の意識はそのまま闇に沈んでいくのだった。



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