第3話 動画がバズったらしい
朝起きてスマホチェック。
それが俺のモーニングルーティンだったのだが。
今日はそのモーニングルーティンに起こされた。
なぜなら。
ピロン!
ピロン!
ピロン!
なんとこのスマホ朝から通知が鳴り止まないではないか。
朝っぱらからふざけやがって。うるさいんだよこのクソスマホ。
「ふぁ〜クソ眠いわ」
「ピィ〜」
飼い主にもう似てきたのか、ぐでーっとした様子でリーナも布団から出てきた。
ちなみに今もスライムモードだった。
グヌヌヌーーー。
ぴょーん。
足に力を入れたのだろうか?
そのままジャンプして俺の腕に巻きついてきた。
「ははは、お前は媚びを売るのが上手いなぁ」
「ピィ♪」
この媚び売りの達人を腕に巻き付けながらスマホをチェック。
「なんだ?入荷キャンセルの連絡か?それでも頻度を考えやがれよなぁ」
どうせまた仕入先のハゲオヤジが在庫を確保できなかったからとかそんな理由でマシンガンメッセージを送っているものだと思ったが、
「お?」
どうやら違ったらしい。
「入荷は関係ないのか?」
いつもやり取りは某SNSでしているのだがそこからの通知ではない。
「ヨンチューブからの通知?」
それは超有名大手動画サイトのヨンチューブからの通知だった。
「あ?バグか?」
ヨンチューブからの通知なんて今までほとんど来たことがないし来るものと言えば業務連絡?のようなその程度のものだけだ。
しかし、今日はヨンチューブからの通知が山のように来ていた。
通知は今も増え続けていてそれは大人気ヨンチューバーのチャット欄のような速度になっていた。
とにかく通知が流れる。
「なんのバグだ?」
そう思いながらSNSを起動してヨンチューブ、バグで検索してみたが
「嘘だろ?バグってないのか?」
ニワカには信じられないが俺はヨンチューブアプリを起動してみた。
そんで右上の通知アイコンに
99+
と表示されていることに気付いた。
「なんだ?これ?」
俺はそのアイコンをタップ。
そしてなんの通知がきているのかを確認してみたら。
〇〇さんがコメントしました
〇〇さんがGoodを押しました
〇〇さんがコメントしました
・
・
・
こんな表示がズラーっと並んでいた。
「どゆこと?」
間違いなくこれは俺のチャンネルのはずなのに何が起きているのかを俺が理解出来ていなかった。
なんかしたっけ?俺
炎上してるのか?
それで叩きたいやつがいっぱい叩いてんのか?
そんなことを思いながらとりあえずコメントを見てみる。
"このスライムちゃん可愛い!"
あ?スライム?
俺は腕に巻きついているリーナを見た。
「あーそういや、昨日リーナの動画投稿したけど」
そんなことを思いながら他のコメントも見てみると
"一日でこんなにベッタリ懐くんですか?!"
そんな質問みたいなコメントもあったけど、他のやつがこれに返信していた。
"懐くわけないじゃん。スライムって温厚だけどモンスターだよ?野良で拾ったスライムが一日でこんなに懐くわけない"
と否定されていた。
俺はリーナに目をやった。
「懐いてるんだよなぁ」
でもこの懐き方がおかしいのか?
確かに警察の人も大人しいとか珍しいとは言ってたけど。
更にコメントを見てみると
"スライム愛好家です。通常スライムはここまで懐きません。このスライムは虐待されている可能性があります。懐いてるように見せないと餌を貰えないのでしょう。スライム虐待を違法にすべきです。魂の殺人です。死刑にすべきです"
こんなコメントもあった。
「うわー……マジでいるんだこんなの……」
怖いなぁ。
関わりたくないなぁ。
そんなことを思うが基本的にコメントしてくれている人達は俺とリーナのことを好意的に見てくれているようで応援するようなものが多かった。
しっかし一日でこんなに多くの反応を貰えるとは思わなかった。
で、ふと思った。
こんだけ反応もらえてるならひょっとして登録者10人くらいいるかなぁ?
いや100人くらいいるんじゃないか?って。
そうなったらお店の宣伝をしてみたら客が増えるかもしれない。
で、登録者を見てみたら
「い、1万人?!」
予想していたよりかなり多くの人がチャンネル登録してくれていた。
俺は一本動画投稿しただけなのに。
「ひえっ……」
驚きと同時に思う。
それだけスライムとの日常動画が少ないのだろうか?
まぁちょくちょく調べてはいるけどスライムの動画って意外と出てこないんだよな。
意外と飼ってる人って少ないのだろうか?
まぁいいや。
「それより仕事だな」
時計を見る。
もう9時だ。
開店準備も早くしないといけない。
というより
「あぁもう時間が経つの早いなぁ」
思ったよりヨンチューブを見ていたようだ。
俺は部屋を出て直ぐに店に向かう。
「ピィ」
その道中でリーナも人型になってくれた。
「ピィ」
小さくガッツポーズを作る。
「お、頑張ってくれるか?」
「ピッ」
相変わらず何を言ってるかは分からないが頑張ってくれそうなのは態度でわかる。
「期待してるよ」
「ピィ!」
いい返事をしてくれたのでいろいろと頼んでいく。
「リーナ。鶏の漬け方は教えたよね?よろしく」
「ピィ!」
リーナは俺の教えた通りのものを冷蔵庫から取り出してそれを容器にまとめて入れていく。
こんな単純作業1つでも時間を取られていたが、今はリーナがいてくれる。
「豚も切っといて」
「ピィ!」
リーナは下から包丁を取り出してチャーシューを切っていく。
おー、俺の負担が減っているのが本当によくわかる。
俺は俺で別々のことを行っていく。
そして全ての仕込みが終わった。
時計を確認。
「あれ?まだ9時半?」
いつもならもっとギリギリの10時半とかに仕込みが終わるのに。
今日は1時間も早い。
「あれ、なんか忘れてる?」
とチェックしてみるけど。
「なにも忘れてないよな?」
正直な話リーナには1度しかやり方を教えていないからあまり期待はしてなかったんだけど。
(あれ?もしかしてスライムってめちゃくちゃ優秀なのか?)
多分リーナがいてくれたからすごく早く仕込みが終わったのだろう。
(このままリーナが慣れていけばもっと早くなるだろうしな)
俺は内心で笑った。
スライムを使うのは最高だな。
人件費0。
俺をイライラさせない。
仕事はバックれそうにない。
癒し効果あり。
素直。
このモンスターで溢れた日本でまだ人を雇うやつはバカです。
そうして迎えた開店時間。
カランカラン。
「いらっしゃいませー!空いてる席へどうぞ!」
迎えた最初の客はこの店の一応常連客だった。
「よう。店長。いつもの頼むぜ」
いつもので通じるくらいの頻度で来てくれる人だが。
当然リーナは分からないので。
「唐揚げ定食ねー」
俺は厨房にいるリーナに声をかけた。
すると常連が聞いてきた。
「お?誰かいるのか?バイト雇わないんじゃなかったのか?」
「それが雇っちゃいました」
なんて話をしていると厨房から返事が。
「ピィ!」
返事がきて。
「特徴的な返事をする子だな」
とのこと。
「えぇ、ちょっと変わった子でしてね」
面と向かってスライム使ってますなんてことは言いにくいし誤魔化しておく。
「ピィ」
そんで出来上がると教えたようにリーナが常連のところに唐揚げ、だけを持ってきた。
「勘弁してやってくだせぇ。入ったばかりでしてね」
俺がご飯と味噌汁を入れて付け足して定食を完成させる。
ガリっ。
唐揚げを食べる常連。
「うん。上手い!」
そうして平らげるとリーナに目を向ける常連。
「頑張りなよ?店長は良い奴だから辞めないでやってくれな」
「ピィ!」
「ははは」
そう笑って帰っていく常連を見送る。
さて、1人目では大きな問題は起きなかった。
後はピークをどれだけこなせるか、だよなぁ。
でもこの様子だと期待できそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます