第6話

「そうだよ?逆に知らなかったの?」

「えっ」

こんなにすんなり肯定されるとは思っていなかった。聞きたいことは沢山あるのに声が出ない。私が何も言えずに立ちすくんでいるとアナが不思議そうに首をかしげた。

「あれ今更ビビってる?もしかして知らなかった感じ?」

「し、知らないよ」

私はこんなに驚いているのにアナは変わらない態度で接してくる。今までは少しうざかった態度が少し安心できる。

「へぇーそっか。知らなかったんだ。じゃあなんであたしらがここ、裏通りにいる理由ってなんでだと思ってたの?」

「えっと、それはずっと不思議に思ってて罪人か何かかななのかな、って勝手に思ってた。で、正直悪魔とかって作り話で実際にいるとは思ってなかった。」

「まじか。最近の子って悪魔とか信じてない感じ?」

最近の子って。アナは何歳なんだろう。てか、アナの性格とかまるっきり最近の陽キャっていうかギャルじゃん。

「うん。少なくとも私の周りはそうだった。お母さんがそういう関係の仕事だけど一回もそういう話聞いたことないし、、!」

そこまで話して話すべきではなかったと気付いた。今は違うけどお母さん昔はいわゆるシスターだったし。思いっきり敵対関係じゃ、、。

「へ~。そっか、存在しないと思われてたんだ。なんか面白いな。」

でもそんなに気にしてる感じないしいっか。

話が一区切り終わったみたいだから今度は私が気になっていたことを質問する。

「アナが悪魔ならネウとジェナもそうなの?それとも違うの?」

「あー。私は正確にはただの悪魔ではないけどそういうことにしておく。でも二人とも違うよ。別に悪魔じゃない。」

「そうなんだ」

今まで話してきた全員が得体の知れない生物ではないことに安堵したが、アナの言葉には続きがあった。

「ネウは逆だよ、天使。まぁ元天使だよ」

「え?」

「あ、分かりづらいか。あの堕天使とかいうやつ。」

「は?」

情報量が多すぎて頭がパンクしそう。何?ネウも人間じゃないの?確かに不思議なオーラをまとってはいたけど。

「ほんとに?」

「ほんとほんと!嘘じゃないし、わざわざここで下らない嘘をつく必要もないし。」

「確かに」

アナの話し方が上手で納得しかけそうになる。でも私はアナの呟きを聞き逃さなかった。

「まぁ、リオの驚く顔は面白いけど。」

「アナ!?」

「あれ?聞こえてた?」

「聞こえてたよ!耳だけはいいの!」

驚いているように声を出してるけど表情は変わっていない。ほんとに何なのこいつ。

「だって事実じゃん」

「はぁ!?」

ちょくちょく馬鹿にして来てウザい。こんな話をしている中でも煽ることを忘れないのは一周回ってすごいと思う。でも、この調子ならもしかしたらアナ達とこれからも仲良くし続けることだってできるかもしれない。

「で、どこまで話したんだっけ?」

「私の話聞いてた?」

「それでさ、リオのお母さんって教会関係者なの?」

アナとは全く話が嚙み合わない。私どころかひとつ前に自分が出した話題にすら乗っていない。私が呆れている間もアナは真剣な表情で問いかけてくる。

「教会関係者なの?」

「う、うん。そうだけど」

真剣な声に思わずひるんでしまう。やっぱり何か問題でもあるのかもしれない。言わない方が良かったかも。でもアナは真剣な表情から戻って楽しそうに笑っている。

「そっかそっか。ならあの子と相性最悪だねー」

そう言って笑うアナの顔はどこか困っているように感じた。

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