第5話
「はぁ、はぁ、はぁ」
あの後どうやって家に帰ってきたのか、詳しくは覚えていない。ただあの異常な光景だけは覚えていた。二人がずっと被り続けて外してこなかったフードの下には溶けかけた天使の輪と悪魔の角があった。あの時は逆光で二人の顔が見えなくて、それが余計に不気味な雰囲気を作っていた。でも、もしかしたら見間違いかもしれない。いや、見間違いであってほしい。
「どこから間違えたんだろう。」
あの時振り返らなければ、今日も二人に会いにいかなければ、ピアスを届けなければこんなことにはならなかったのかもしれない。
「死んじゃうのかな」
今まで神も、悪魔も、天使も実在はしないと思い込んでいた。大人たちがついた不真面目な嘘だと思っていた。でもこんな風に証明されてしまった。
この世界には天使も悪魔もいる。人間以外に言語を話せる生き物が存在している。
この事実は衝撃的で不気味で恐ろしくて、面白くもあった。もしそんな子たちと楽しい日々を送ることができるなら
「そんなの最高の非日常じゃん」
もし、ネウもアナも裏表がなくて、今まで通り友好的なら、このまま仲良く居続けるのも不可能じゃないかもしれない。そうだったらいいな。きっとそうだ。
「きっと大丈夫。」
どこから湧いてきたかは知らないがその謎の安心感が私を安堵させた。
「まずは確認しなきゃ」
この事実を知ってしまった私は痛い目にあったり、殺されたりするのかもしれない。でもどうせ死んでしまうのなら、全てを知って悔いのないようにこの世を去りたい。そして私は明日に期待を膨らませながら眠りについた。
「やっほー。今日も来たんだ。そんなに気に入ってくれた?」
「う、うん。まぁ、そんなところ」
覚悟してきたはずなのにやっぱり目を合わせて話ができない。また今日はジェナもネウもいないようでアナと二人っきり。もともと強気な雰囲気もあって一対一だと少し話しづらい。私が考えていることを読んだのか手をゆらゆらと振り、笑いながら言った。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。怖くなんかないよー。」
「こ、怖がってなんかないし!」
小馬鹿にしているようなこのうざい感じ。いつも通りのアナだ。
今までと変わらない雰囲気に少し安心を覚える。どうしよう。このまま勢いで話を切り出してしまおうか。
「あ、あのさ」
「うん。どうした?」
アナは話し出した私の目を一直線に見つめてくる。その真剣でどこか面白がっているような瞳を見て思わず体が強張り、直感的に感じてしまった。
怖い。
私が恐怖で何も言えずに固まってもアナは変わらず、私の目をずっと見つめてくる。
あぁもう、どうにでもなれ!
「あ、アナって何者なの?」
どうにでもなれって投げやりに思っても怖いのはやっぱり怖くて声が震えてしまう。
「私は私だよ?」
どや顔で少しずれたこと口では言っているが、不思議そうで鋭い目。怖いけど、ここで言わなきゃいけない気がして声にだす。
「そういうことじゃなくて、」
アナの顔を見ずに勢いで言葉を続ける。
「アナたちは人間じゃないんでしょ!」
「、、、!」
アナは驚いた顔をすると声を出した。
「そうだよ、逆に知らなかったの?」
整った少女の口が不気味に歪む。
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