第4話

「はぁ」

なんとなく予感はしていたが来てしまった。前来た時にあんなに怖い思いをしたのに好奇心の方が勝ってしまうとは。やっぱり私は好奇心に抗えるほど強くはないようだ。ここに来たことを母さんに知られたらただでは済まないだろう。

(ごめんなさい、、)

心の中で必死に謝りながら薄暗い道を歩き出した。


「わぁ!ほんとに来ちゃった!」

「え!?逆に来ないと思ってたの?」

「来てほしいなーとは思ってたわ」

「、私も来ては欲しかった。」

「だよねぇ」

私が顔を出すなりアナがハイテンションで話しかけてきた。昨日も話してて思ってたけど、この人、マジの陽キャだ。

「ジェナさんはいないの?」

「、今出掛けてる。ジェナはやることが多くて忙しい。」

「そーそー。てか、呼び捨てでいいよ!その方がお互い気が楽じゃん?」

自分に話しかけられたわけじゃないのに気が楽とか言ってる。コミュ力が高いのか、ただただ能天気なのか。どちらにしてもウザさを感じてしまう。

「、どちらでもいいから、本題に入ってくれない?」

対してネウは物静かで口数が少なめなので一瞬存在を忘れかけてしまう。ネウが少ないのではなくてアナの口数が多いだけだが。

「本題って?」

質問の意味が分からず、私が聞き返すとネウは驚いたように目を丸くして答えた

「、もしかしてなんの用事もなくこの街に来たの?」

「え、うん。ないっちゃない。強いて言うなら誘われたから」

私が口から出した言葉一つ一つに目を丸くしながらネウはアナと目を合わせて意味深に頷いた。

「、やっぱ変わってるね。」

「だよねー」

「え?な、何が⁉」

急に始まった悪口(?)今度は私の方が目を丸くした

「え?私なんか変?」

「、うん。」

「変わってはいる」

急に滅茶苦茶言ってくるじゃん。というか、私より絶対二人の方が変わってるのに。それがムカついて敢えて不満を隠さずに言う。

「どこが?」

でも二人は動じず、表情を変えるどころか口を止めることすらなく言葉を続けてくる

「何にもないのに、ここに来れてること。普通の人だったら用事があっても足を踏み入れることをためらうっていうのに。」

「、それに私たちを怖がりもしてない。こんなの初めて。」

「そ、それは、、」

「それに顔を隠してない。下手したら特定されたり、拉致される危険もあるのに。」「そ、そんなに!」

今まで知らなかったマイナスな面ばかり言われて急に不安になってくる。

そんな私を見てアナが堪えきれないと言わんばかりに吹きだした。

「そんなに動じんの?」

「そ、それは動じるよ!」

「あっはははははははははははは!あー、マジ見てて飽きないわ。」

「、アナ五月蠅い」

「ごめんって」

謝りながらもまだ笑い続けている。この人は人をイラつかせる天才なのか。

「あーあ、おなか痛い。あ、さっきの話別に冗談でも嘘でもないからね」

「え!?」

急に雰囲気が変わって少し驚く。思ったことをそのままリアクションすると、また悪い顔でニヤニヤしだした。

「嘘だよ」

「だ、だよね」

「えー、どうだろう?」

「どっちなの!?」

「ふふっ」

私が言葉を発っそうとするとネウの言葉が遮った。

「、綺麗な赤。」

「何言って、あ!」

ネウの視線を追うと真っ赤な空が広がっていた。口喧嘩してる間にこんなに時間がたっているとは。

「や、やば!早く帰らないと!」

「ん、また」

私走り出してしばらくすると、ネウの声が聞こえて「またね」と返そうとして振り返った。そこに見えたのは


溶けかけた天使の輪と、悪魔の角。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る