第2話

「ま、待ってく、くださぁい!」

イヤリングを拾って十数分。私は人混みのなかを全速力で走っていた。

すぐに追いついて、イヤリングを渡して、すぐに帰るのが理想だった。

が、あの女の子が歩くのが早すぎて全く追いつけない。追いつくどころか見失わないように追いかけるのが精一杯で、周りを気にする余裕もなく走り続けた。そのせいで進んでいくごとに人が少なくなって行くことに気付きもしなかった。


自分以外に人がいないことに気付き、足を止めた私はやっと自分が迷い込んでしまった場所を悟った。

裏通り。穏やかなフィアバの裏的存在で、国を追い出された罪人たちが住み着いているらしい。ガラが悪く危険なため、一般人は入れないようになっているはずだが、何故か私はここにいる。抜け道でもあったのだろうか。

「帰らなきゃ、、」

まだ日が落ちていないはずなのに、辺りは薄暗く、やはり恐ろしさを感じてしまう。

通ってきた道を思い出そうとふらふらと歩いていると苦しそうな声が聞こえた。

振り返ってみると倒れこんだ男の人がこちらに手を伸ばし何か言っている。

「な、かくれ。お、、すい、tあ」

恐怖と混乱で頭が真っ白になり何も考えられなくなる。動けずにいると、顔の横で声がした。

「何をしているの?」

「ひゃあぁぁ」

驚きすぎて変な声をあげながら振り向くとずっと探していたピアスの女の子がいた。

何故この子がここにいるのだろう。何一つとして状況を理解できずに立ち尽くしていると

「だ、大丈夫?」

とあの女の子の声がした。俯いて顔を覆ってるため、笑いを堪えているのだろう。複雑な気持ちに何も言えずにいると、高らかな笑い声が聞こえた。

「あっはははははははははははは!」

「、笑っちゃだめだよ」

「だって、だって」

女の子の後ろから声が聞こえてきて、気になり目を凝らして見てみると女の子の後ろにも二人の女の子がいた。一人は髪の短い子で、もう一人はツインテールの子。フードを目深に被っているうえに、薄暗く辺りが見ずらいため、二人とも顔はよく見えない。さっき笑っていたのはツインテールの方の子のようでまだお腹を抱えて笑っている。

「あー、ほんと傑作だわ」

「し、失礼だな!」

「てか、あんたはこんなところで何してんの?」

急に来る真面目な話題に驚きつつも、私は自分が置かれている状況を思い出す。あの男の人の今にも死にそうな顔を思い出し、恐怖で震える指先を伝えるべき方向に向ける。

「あ、あの、この人が、、」

「なるほど。大丈夫?どうかしたの?」

男の人を見つけたイヤリングの女の子は驚きと恐怖で動けない私の前にでると、躊躇することもなく、話を始めた。

「な、くれ。お、、すいtあ」

「わかった。けどごめんね。生憎今はこのパンしか持っていないんだ。」

あの人は相変わらず何を言ってるかわからなかったけれど、女の子は自分のバッグからパンを取り出すと男の人に差し出した。男の人はに食らいつき、そこそこの大きさがあるパンを一瞬で食べつくしてしまった。その時の表情がこれ以上ないほどに嬉しそうだったので、なんだか複雑な気持ちになった。

「帰りたいんでしょ?さぁ行こう」

イヤリングの女の子は私の手を取ると、迷いもせずに進んでいく。あの二人も私たちについてくる。この子たちはいったい何者なんだろう。

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