いいわけって考えるほど変な方向に行くよね
みない
第1話
ここに穴の開いた障子がある。
犯人はネコである。ここまではわかっている。
ただこの現状を客観的に見たとき、どう見ても僕が犯人にしか見えない。なぜなら僕がこの障子の穴に手を突っ込んでいるからである。
さて、ここで問題なのは僕はどうするべきかである。このまま手を抜いてもいいが、その場合確実に僕が犯人になる。かと言ってこの状態をキープするのは難しい。なぜかと言うと、いまの僕の体勢が凄まじいことになっている。自分の背後にある障子の一番下の枠に身体を捻りながら左手を突っ込んでいる状態だ。しかも座椅子に胡坐をかいているせいで立ち上がることもできない。
詰みか。
へんな体勢でいるせいで、だんだんと全身に痛みが広がってきた。
この体勢でいるのを諦め、腕を障子から抜いたところを同居人に見られた。
「なにしてんの?」
予想していた一番最悪な状況。障子から手を抜くタイミング。その現場を見られてしまった。
「いや、これは、その、アレだ。えーっと」
しどろもどろになりながら、なんとか言葉を繋ごうとする。
「…………」
「その、なんだ」
冷ややかな目を向けられ、更に言葉に詰まる。
「なに?」
感情の見えない問いかけに更に困る。
「あの、ぼーっとネコを撫でてたら、そのままトテテってと障子を破りながら行っちゃって」
自分の身に起きたことをありのままはなす。
信じてくれるかどうかは、僕の日頃の行い次第と言うところだろう。
「……本当に?」
全力で何度も頷く。
「はぁ、まあ信じてあげる。次は無いからね」
なんとか首の皮一枚つながった。
んなぁ
やぶられた障子の向こう側からネコが部屋に戻ってきてくれた。
「どうやらあなたの言葉は本当だったみたいね」
同居人はネコを抱き上げると、別室に戻っていった。
「助かったと言えば助かった。のか?」
元をただせばネコに腕を取られたことで起きた事故であり、その事故を自分の手? で解決したに過ぎなかった。
いいわけって考えるほど変な方向に行くよね みない @minaisan
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