第8話 中絶の代償と祝福計画

 ハンナちゃんを追いかけてたらゴブリンを、母体から生まれるはずだったゴブリンをいっぱい殺したボク。

 で、ボクとハンナちゃんと、ハンナちゃんをゴブリン退治に誘って、ハンナちゃんをろくな目に合わせなかった雑魚二人と報酬を山分けした――といっても一番戦ったボクと、危ない目にあったハンナちゃんの取り分は割と多めだったから、ボクが二人を殺すのはやめといた――。


 それから、そこそこ日が経っても、魔力回復用のフェアリーミルクや、その加工品――チーズとかヨーグルトとか具無しシチューとか――と、野菜とかのジュースや水ぐらいしか口にしない、というより、しようと思えないボク。

 冒険者は身体が資本なのに……。


「……なんでキミはここにいるの?」

 夕飯に頼んだニンジンひとかけら入りシチューをどうにか残さず食べられたボクは、目の前に座っているハンナちゃんにそう尋ねてみる。

「ロビンさんが、気になって……」

 ボクはハンナちゃんの言葉に、ため息をつくように、そう、と返事する。

「……ボク、ここに来るちょっと前まで外科医やってたんだけど、中絶手術が苦手でさ……。技術的な理由じゃなく、術後に、結構食欲減っちゃうんだよね。

 手術ってかなり体力使うから、中絶以外なら割とガッツリめでも食べられるんだけど……中絶だけは、お肉とか動物を食べれなくなっちゃって。

 中絶した子が大きければ大きいほど食べれない期間が伸びるし、食べれないものも増えちゃう……お肉に限らず固形物すらあんまり食べたくないって、かなり久々。

 ……あのゴブリン達なんて、ボクからすれば中絶できる期間超えちゃってる子だから余計に……ほんと何あの成長速度」


「ロビンさんって、誰でも殺せる人だと思ってたんですけど、違うんですか?」

「ボクが殺すのは、ボクに殺せって依頼されるのも納得な生き物と、ボクやボクが気に入ったあれこれを邪魔したり不快にしたりする奴だけだよ。

 胎児が前者になる場合もあるにはあるけど、そうじゃなきゃ積極的に殺そうと思えないってだけ」

 胎児と比べちゃうのはあれだけど、家の中のゴキブリを殺そうとは思っても、家の外のゴキブリをわざわざ殺そうとは思わない、って言って伝わるかな?


 いや、でも、エルフって自然の中で暮らしてることが多いらしいから、ハンナちゃんが家の中のゴキブリも殺さない派だったら、あれだし……黙っとこう。

 まあボクの場合、町や自然のゴキブリがこっちに来たら不快・邪魔なやつとして殺すけど、それも今重要じゃないから置いとこう。

「話してたらお腹空いてきちゃった……ハンナちゃん、何にする? お礼に一品奢るよ」



 ハンナちゃんと話したおかげか、思いの外早く、どんなご飯もちゃんと食べられるようになったボクは、妖精の集落に入るための祝福についてのあれこれを、ハンナちゃんに話す。

 途中でハンナちゃんが、自分がエルフって知ってる理由を聞いたけど、ゴブリンの洞窟でいろいろ見えたってことにした。あながち嘘でもないしね。


「――問題はどうやって全身に浴びれるぐらいの体液を確保するかだけど……指名手配犯デッド・オア・アライブなエルフをひっ捕まえて動脈かっきってシャワー感覚で……いや、血を浴槽とかに溜めてから祝福のほうがハンナちゃんの負担が少ないかな?」

「あの、血液以外を使うって発想は無いんですか?」

「浴びれるぐらい、が引っ掛かってちょっと……他にましな方法があるの?」

「……そうですね。……その、エルフの体液は、わたしがなんとかします。

ロビンさんは、宿で浴室つきの部屋を確保してもらえますか?」

「ん、わかったよ」

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