第7話 それ以上は俺の息《チン》子が切れる!

 ハンナちゃんを追って洞窟に入ると、ハンナちゃんがゴブリンにヤラれそうだったので、なんやかんやゴブリンを皆殺したボク。

 で、ハンナちゃんをスカウトした人達が、割とピンチそうなのを聞いて、着替え終わったハンナちゃんと、その地点へ走る。

 

 ハンナちゃんをスカウトしたのは前衛職の男女二人組。

 重戦士の男と格闘家の女の子……ハンナちゃんも入れたら、ちょっとしたハーレムじゃん、この野郎……。


 で、洞窟の最深部でゴブリンが十匹ぐらい出迎えてきたので、ハンナちゃんが二人を魔法で支援する前に、ハンナちゃんは後ろからゴブリンに転ばされ、眠り薬を嗅がされて、あそこにいたと。

 ……問題の最深部に着いてボクが気付いたのは、ゴブリンの数が二十匹以上と増えてることと、なぜかちょっぴりイカ臭いこと。


 あ、格闘家の女の子が結構ピンチ!

 えーっと、ゴブリンは耳か生殖器が穫れればOKって話だから……頭と腰の間を消せば瞬殺だね、オリャー! とその子に群がるゴブリンどもを毒で消す。


 その子を助けたお礼代わりに、ゴブリンが多くなってる理由を尋ねると、向こうの方で男戦士がゴブリンマザー? とかいうゴブリンの上位種に精液を搾り取られてるらしい。

 三人で、ここいらのゴブリンを掃除しながら、男戦士とゴブリンマザーとかいうのが待つ奥へ向かう。



 ……奥の景色の感想は、欲情より不快感が勝つものだった。

 あの景色の中で、服の類を着てるのは、死んでこそないみたいだけど、ほとんど虫の息な男戦士だけ。

 あとは、ゴブリンの乱交パーティー。


 掃除してるときは気に留めてなかったけど、普通のゴブリンって雌雄問わず、腰に前かけみたいな毛が生えてるんだ……。

 ハンナちゃんを襲おうとしてた、あのゴブリンどもは服――というよりほとんど裸エプロンみたいなアレ――着てて前に毛的なものすら見えなかったのに。


 ゴブリンの不思議はさておき、交わり合ってる雑魚ゴブリンを静かに掃除し、ボクは不快感の元凶たるゴブリンマザーの後ろに立つ。


 ボクはマザーの何が不快か。

 こちらに気付かず男戦士の棒に夢中な所? 違う。

 男戦士の棒を貪りながら尻を上下させてる所? ちょっと違う。


 排泄するように出産し続ける所。

 地面に受け身を取れなかったとか打ち所が悪くて死んだと思われるゴブリンをクッションに、新しいゴブリンが生まれ続けてる所。

 ……ボクはこんなやつを、マザーなんて呼びたくない……。


 頭が出た新ゴブごと、産んでるメスの尻を割れ目にそって斬ったら五体満足のゴブリンが左右にいた所。

 割れ目に対して概ね垂直に斬ったら、満足ゴブリンが上下に別れに行った所。

 いくら尻を斬っても斬ってもゴブリンが出てくる所――――


「ま、待て! それ以上は俺のチン子が切れる!」

 ――剣を振りかぶると同時に聞こえたその言葉に気がついたら、産んでたゴブリンの首と頭しか残ってなかった所。



 そっと剣を下ろすと、ゴブリンの血なのか、なんか蛍光ピンクな液体が、地面に注がれる。

 ボクの知らないタイミングで、ハンナちゃんが男戦士に治癒魔法でもかけてたのか、意外と元気そう。


 後ろにゴブリンがいるかの確認も兼ねて「……ボクの後ろに何がいる?」って聞いてみたら、ハンナちゃんと格闘家ちゃんの名前しか上がらなかったので、後ろを向く。


 うん、事実だし、こいつもボクに敵意は無い――ボクが後ろを向く前に、こいつがボクに敵意を向けたら塵になる毒を、念のため、こいつ周辺の大気に漂わせてた――。


 首と頭しか残ってないゴブリン産みゴブリンは、構造の特殊性から頭部ごと買い取られるらしい。

 洞窟からの帰り道、ボクは、魔力回復用のフェアリーミルクしか口にしたくなかった。

 いつもなら美味しそうと思う調理されたお肉や魚を見ても、野菜や果物を食べる音を聞いてても、出来立てのご飯やパンのにおいが鼻に届いても食べたいとは思えなかった。


 ……中絶手術のあとは、いつもそうなったから、婦人科には、あまり出入りしなくなってたのに……ああ、エリー、ボクがそんなだからキミは――――。

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