第143話その頃のアゼリア王国 セシリア退場とその後
気分がふわふわする中、見覚えのある場所にリアは立っていた。
えぇ~とぉ………ウソッ……やだ、戻ってきちゃったの?
それとも、今までのコトは全てが夢だったの?
グレンが居たコトも、ルリやユナ、レオやグリやナナにクイン達が居たのは夢?
トラウマレベルの厭な場所に立っているコトを知って、リアはパニックになる。
そう、ソコはリアが、公爵令嬢で生贄として過ごしていたアゼリア王国貴族学院の祈りの間だったのだ。
必要な必修の授業の時間以外は、生徒達が休み時間をくつろぐ時間でさえ、セシリアは浄化の為に祈りを捧げさせられていた苦行の場所。
だが、そこでセシリアは、そのコトにやっと気付く。
そう、いや、リアとして生き始めたコトとも浄化の為の魔道具を外されているコトもあって、自分の身に殺到するモノが無いコトに。
室内にわだかまる穢れや瘴気が渦巻く空間に居るというのに、リアの存在に反応していないコトで、自分が夢を見ているコトを自覚する。
あっ……なぁ~んだ……そっか………コレは何時もの時空神様のおちゃめさんだわ
一瞬、自由になったコトが夢だったかと錯覚してしまったわ
そうよねぇ~……トラウマレベルに…この部屋は嫌いだったモノねぇ……
そう思ってから、室内をゆっくりと見回す。
確かに何時も穢れや瘴気が漂っていた場所だけど、こんなに酷い場所じゃなかったはずなんだけどぉ~……
なんか、私が倒れて数日浄化できなかった時より数倍凄い状態なんですけど
どういうコトなのかしら?? ここは確認してみた方が良いわよねぇ………
浄化の生贄をさせられていたセシリアとしては、思い出したくもない
そう、今のリアは『好奇心は猫をも殺す』の状態なのだ。
勿論、現状が時空神による好意からの恩恵で、時を超えて観ているだけだと理解しているからこその好奇心でもあった。
リアは、その場所から出るコトにした。
現在守リアが居るのは、アゼリア王国貴族学院の祈りの間なので、そこから渡り廊下を渡れば、公爵令嬢としてのセシリアが、無実の罪で断罪されて追放された広い講堂があるのだ。
リアは、そこへと向かった。
勿論、幽体なので扉とかに触れないが、その代わりにすり抜けるコトが出来るので、なんの苦労もなく部屋から出て渡り廊下へと向かう。
思えば、王妃の配下には随分と嫌がらせされたわよねぇ~………
あの瘴気と穢れの漂う祈りの部屋で昼食をとらされたりしていたし
部屋の中へと集められた瘴気や穢れを浄化しないと、授業にすら出られなくて………
だからって、授業を受けられなければ王妃様や取り巻きに不出来だって蔑まれるし
下手すると、取り巻き達が居る場所で、平気で鞭打ちの折檻をされて、晒しモノにされたし
ああ…思い出すだけでも、イヤな気分になるわね
でも、そんな場所……というか、空間に送ってくれたってコトは……何か良い見世物があるのかしら?
時空神様って…意外と子供っぽいところある方のようだしねぇ~……
ナナにつまみ食いされたモノを取り戻そうとして、何度も試行錯誤してみたりしていたし………
などと、リアは無意識にクスクスクしながら、たどり着いた講堂の中へとスゥーっと抵抗もなく入っていくのだった。
リアがたどり着いて観たモノは、今、まさに断罪されているシーンの自分だった。
ただ、今のリアは既に前世を思い出し、未来に希望を持って前を向いているので、そんなシーンを観ても、アニメのワンシーンを観ているような気分で済んでいた。
あららら……よりにもよって、このシーンからですか? 時空神様?
ということは、この後、私が観た方が良いだろうシーンてコトでしょうかね
うふふふ……あの
セシリアから魔道具という魔道具の全てがむしり取られるシーンを観て、リアはこころが踊るのを感じた。
その目の前では、ヒロインらしいフローラ嬢が、エイダン王太子に胸を擦りつけて、セシリアから外した魔道具を
指輪を抜き取られたところで意識がブッツリと途切れたけど、こういう風にみんなに観られていたんだ……へぇ~……
っていうか、やっぱり、シモンズもフローラ嬢に攻略されていたんだねぇ……
じゃなくて、ソレ(セシリアから外したアクセサリー類)がどれだけ忌まわしいモノか知らないとは言え……ねぇ………
目の前では、セシリアから外した首飾りや額飾りなどをエイダン王太子に着けてもらい、指輪や腕輪を自分で嬉々として身に付けているフローラ嬢がいる。
リアは、溜め息を吐いて首を振る。
いや…本当に知らないって……凄いわよねぇ~…無知ゆえの無謀さは凄いわ
あんなモノを、次々と全部身に着けようとするなんてねぇ~……
まぁ…そういう義務と責任と隷属の為の儀式を受けさせられての装備じゃないから、大丈夫なのかな?
リアがそんなコトを思っている間にも、いかにもバカップルとかし、その取り巻きと化した側近候補達を引き連れて、卒業パーティーの中央へとルンルンで向かうエイダン王太子の腕にスリスリするフローラ嬢が居た。
その光景に視線が言っている間に、身分その他を全て失い、意識を失ったセシリアを、王太子付きの護衛騎士がどこぞへと運んで行く。
んぅ~……どうやって、あの馬車に放り込まれたかは気になるけど、断然、観るならこっちよね
あの卒業パーティーがどうなったか、やっぱり気になるものねぇ~……
っと……ン……へぇ~……目敏い方がいたのねぇ~……
あれは…辺境伯の弟君だったはずね……名前は…確か…ライル様……だったはず
あの方は、たまに誰も見ていない時を見計らって、珍しいお菓子などくれたのよねぇ
そうアイロスさんは甥っ子さんですか…ヒロインマジック(魅了?)に引っかかっていたんですね
目の前で眠らせたアイロスを担いで、急いでその場を離脱する姿に、リアは無意識に拍手を送っていた。
流石、辺境の地を任されているだけありますね……さっさと泥船から飛び降りましたか
うふふふ……良いモノが観れましたわねぇ……で、こっちは、まだまだ続きがあるみたいですねぇ
フローラ嬢に
視線の先では、もの凄い勢いで浄化を強要する魔道具へと瘴気や穢れが集まって、空間自体が澱み曇り始めていた。
そして、魔道具を身に付けなくても、その血に課せられた、その地に住む為の対価(穢れや瘴気の浄化の義務)を強制的に支払わされる現象が起こっていた。
強制的に浄化を司る魔道具を身に付けたフローラ嬢を腕に抱くエイダン王太子に、瘴気と穢れが殺到し、渦巻いていた。
ただ、正式な魔道具としては停止しているので、身に付けている本人にはほとんど影響はき無かった。
その分だとでも言うように、停止したとはいえずっとそういう魔道具として稼働しただけに、そういう属性(穢れや瘴気を収拾する)を帯びているので、止まらずに集め続けて居るままだった。
ただし、本来の持ち主(生贄のセシリア)から外されてしまっているので、集めはするが一切浄化されない為、澱み続ける。
そして、ついには顔色を悪くしていたエイダン王太子が、フローラ嬢を腕にしたまま崩れ落ちた。
やっと手にした我が世の春の中で、突然エイダン王太子が倒れたコトに驚いて、泣き叫ぶフローラ嬢がいた。
勿論、側近に選ばれるだけあって、シモンズなどが同じように膝くだけ状態へと陥っていた。
そして、王の血統を僅かなりとも引いている者達も、その場に溢れかえった瘴気や穢れに寄って、程度の差こそあれ、みな顔色を悪くしたり、体調を崩したりする者達が続出していた。
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