第137話お米もありました




 そこでのコトは終わったと判断して、ナナはトテトテと自分が気になったモノを置いているところへと向かってしまう。

 リアはナナがさっさと移動したのは、まだ馬車に戻りたくない(物々交換をまだしたい)からだとわかり、ちょっと溜め息を吐いて、その後を追う。


 「どうやら、まだナナは欲しいモノがあったみたいね……あの子が欲しがるモノなら……私達にも有用なモノでしょう……取り敢えず行ってみようか?」


 「しかたがありませんわね、ナナですし」


 「うん、ナナちゃんだもんね」


 「了解した、後を追おう」


 と、全員で頷いて少し離れたところで盛大にお店を広げているそこを、ナナは覗き込んでいた。

 それでも、ナナが主を持つ従魔らしいコトは判っているので、誰も表立って捕縛しようとはしなかった。


 また、ナナがどういう種類(リアが甘やかした為、本来の姿からかけ離れすぎていて判別不能)の従魔かは判らない為でもあった。

 その上で、従魔の好きにさせているので、たぶんに自衛の為の戦闘能力があるだろうと判断された為だった。


 勿論、もとが野生のウクダなので、ツバ攻撃(単にめっちゃ臭いから溶解まで)もあれば、立派な牙(普段は草食の歯だが、戦闘時は鋭い牙に変形する)もあり、四肢の先にある爪も立派な武器になるのだ。

 まして、現在は丸々と肥えているので、戦闘能力も最高スペックまで引き上がっていたりする。


 そんなナナは、クインとアクアにガードされながら追い付いたリアに、クククククッと喉を鳴らして、この辺が欲しいモノなのぉ~…と、アピールする。


 「どれどれ……んぅ~……コレは何かしら? 大きなクルミ? こっちはアーモンドかしら? ………って……えっと…うそっ…もしかして、お米?」


 リアは、色々とあって目移りしながら、見ていた中に、ソレがあるのを見付けてビックリする。


 うっそ……本当に…ラノベあるあるってやつなのぉ~……モミ状態のお米があるわ

 いや…私の知っているお米の粒よりふた回りぐらい大きいけど、お米だよね

 山盛りでこういう風に置かれているところを見ると、やっぱり馬とかの飼料あつかいなの?


 前世の異世界転生や転移における、あるあると同じように、目の前に出現したお米に、リアは小首を傾げてグレンを振り返る。


 「ねぇ~グレン……あれってお米?」


 グレンは、リアが指さしたモノを見て肩を竦める。


 「ああそれは、確かにコメだな……家畜の飼料につかわれるモノだ……食べられなくは無いが、とにかく不味いな……よっぱど飢えてなければ、貧民でも食べないな……ただ、痩せた土地でも、麦より採れる……作らなくても勝手に生えてくれから…厄介モノ扱いだな……ただ、実がみのる前の青々とした葉は、草食動物がやたらと喜ぶな」


 来ました…お米です……それも大粒な品種のようです……やっぱり家畜飼料みたいです

 でも、葉っぱは大好きなようです…猫草みたいに短期間に青々と生えるのでしょうか?

 貧民でも飢えなければ食べないようくらい不味いってことですけど………


 正しく脱穀した後に、ちゃんとモミ摺りして、精米しないと美味しくないんですよね

 ヌカや胚芽を除去して、やっと前世のお店で買っていた米になるんだよね

 ちゃんと、精米にまでしたら、美味しく食べられるかしら?


 それにしても、クルミらしい木の実も、アーモンドらしい木の実も、かなり大きいわね

 前世で見たことあるオニグルミを、グレンのコブシぐらい大きくしたモノだもの

 アーモンドらしきモノは、前世で使っていたパソのマウスを二つ縦に並べたくらいあるわ


 ああ…本当に……異世界だって…こうしてみると実感するわねぇ…はぁ~……

 今までは、限られた空間で、人とかモノとかしか見てなかったけど………

 自由な思考を取り戻して、前世の記憶を思い出した後に、色々と見たけど


 前世で見知ったモノとの違いに、妙な違和感を感じるわねぇ

 それでも、ほぼ前世と名前が変わらないモノがあるのは助かるわねぇ

 特に、食べ物の名前が見知っているモノとあまり変わらないしね…大きさは違うけどね


 リアはちょっと考えてから、グレンを振り返る。


 「グレン、このお米…いっぱい欲しい……試してみたいコトあるの………それと、クルミ? アーモンド? そっちの二種類の木の実? も、欲しいな」


 リアの様子から、そう言うんじゃないかと思ったグレンだが、リアが欲しいならと頷く。


 「了解…オヤジ…どのくらいあるんだ? 一応、ウチもマジックポーチがあるから、ある程度は買えるぜ……物々交換もできる………」


 と、交渉を始めたグレンを放置し、リアはナナが鼻先を寄せてから、振り返ってククククッと鳴いて見せたモノを覗き込む。


 「ナナ、何か良いモノはあったぁ~……どれどれ……」


 えぇ~…と……コレって何? 見た目だけなら、大きなヘチマ? かしらねぇ?

 ただ、色は薄茶色…というか……砂漠色かしらねぇ? 用途不明だわ

 見た目からして、もの凄く硬そうなモノなんだけど………


 リアはソレ(見た目が砂漠色のヘチマもどき)が何か判らず、ルリを振り返る。


 「ルリ…コレって何かなぁ? ナナが興味を示したんだけど………」


 リアに問い掛けられたルリは、ソレを見て答える。


 「それですかは…ソレは確か『タトウ』て名前のモノじゃなかったでしょうかねぇ……その殻を割り開くと、大きな豆が入っていたと記憶してます……『タトウ』も家畜飼料ですよ……ウクダが好んで食べていたはずです……そのままガリガリと……行軍中の軍馬の飼料として使われるコトもありますね……エンペラーラビットやサンドビーバを釣るエサに使うコトあると聞いたコトがありますよ……かなりの好物らしいですね……」


 ルリが説明している間に、物々交換を取り敢えず済ませたグレンとユナ(現在、マジックポーチに、物々交換したモノを入れて出し係り)がリアの側に戻って来て、その説明に付け加える。


 「確か『タトウ』はロマリス王国の外れにある集落で、なんとか栽培できるようになったって聞いたな……天然ものを探さなくても買えるから、エンペラーラビットやサンドビーバの討伐依頼が出たら、冒険者が買うらしいぞ」


 へぇ~…『タトウ』ねぇ…中身はどうなっているのかな? いくつか欲しいなぁ~……

 殻はナナや軍馬達に食べてもらって、中身が食べれそうなら食べたいなぁ

 お米をゲット出来たから、色々と作れそうだしねぇ………ふふふふ


 「そういうモノなのねぇ……まだ、物々交換する余裕ってあるかなぁ?」


 リアの言葉に、グレンがユナを見れば、マジックポーチの中身をほぼ把握しているユナが頷いて言う。


 「大丈夫だよぉ~……まだまだ余裕あるよぉ~……ナナのお乳を入れた壷も………」


 とユナが口にすれば。


 「すみません、よろしければ、そのお乳と物々交換をしていただけませんか?」


 と、かぶせ気味に、オヤジが言って来る。

 どうやら、ここのオヤジも、ナナのお乳が欲しかったようである。


 「どうするリア?」


 グレンの問いかけに、ちょっと買い物に飽きて来たリアは答える。


 「もう、お米とクルミとアーモンドは交換が終わっているんだよね」


 「ああ、終わっているぞ」


 「それじゃぁ……ナナのお乳ひと壷分で……香辛料を色々と、ナナが欲しがった『タトウ』を交換できるだけ交換してくれるかな? 私とルリで、ナナを連れて帰るから……そろそろご飯にしたいから、先に馬車に帰ってるね……後を頼むわね、グレン、ユナ、クイン…さぁ…馬車に戻るわよ、ナナ……アクア、ルリ…戻りましょう」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る