第136話ジャンボモアの卵をゲット
リアは、空中に浮かせたままにしてある、水晶球に封印した蟲毒虫(見掛けは、触手が無数に生えたマダニ)をマジマジと見て、眉をひそめる。
この姿…大きさは全然こっちの方が数百倍も大きいけど、見れば見るほどだわぁ~……
前世の実家のお隣で飼っていた、大型犬のタロちゃんの耳元に張り付いていたのにそっくりだわ
でも、ここには専用の殺虫薬とか無いんだろうなぁ……はぁ~……
それに、コレ(蟲毒虫)って人工的につくられたモノかもしれないのよねぇ
特に、前世の知識からすると、蟲毒ってアレよねぇ~……
色々な毒虫とかを集めて、ひとつの壷の中に入れて生き残った一匹とか言うヤツ
前世知識を持った前世持ちか……もしかしたら、異世界転移者とか………
そういう者が、持ち込んだ邪悪な知識から作られたモノかもしれないわね
だいたい、錬金術師が巣食って居たらしい、謎の超古代遺跡なんてモノが存在していたしねぇ………
下手をしたら、あの惨状(結局は、外観だけで中身は見れなかったけど)は、神の鉄槌を受けたセイかもだし
そうじゃなくても、錬金術師の他にも、呪術師なんてモノもいるようだしねぇ
私に、靈石を埋め込んだのも、よくは覚えてないけど、呪術師だったみたいだし
グレンやルリの魂と身体の交換なんて悍ましいコトしたのも、呪術師だったようだし
なんか、ここのところ呪術師ってワードが多いわねぇ………はぁ~………
かかわり合いになんてなりたくはないけど、私達に害意を持つなら撃退するわよ
そんなコトを考えつつ、リアは悍ましい蟲毒虫が入った水晶球をクルクルと回して、何か見て取れないかと悩む。
が、もともとそういう類いが嫌いなリアは、右掌の上に浮かぶ水晶球の中身に、流石に気分が悪くなって、手首のアイテムボックスに収納する。
「ダメ……なんか…気持ち悪くなったわ……はぁ~……流石に、気持ち悪いわぁ~……マダニってだけで……うっ……ミント系の飲み物でも欲しいくらいだわ」
リアが水晶球に封印した蟲毒虫とにらめっこしている間に、レイニーは身づくろいを済ませて戻って来ていた。
グレンはグレンで、リアが欲しいと言ったモノを物々交換していた。
ルリはルリで、グレンやユナが物々交換などの交渉をしている間、リアを狙うモノが現われたりしないか警戒していた。
リア自身は全然気付いていなかったが、たった今やったコトは、ある種の聖女と呼ばれてもおかしくない行為だったのだ。
それも、自身の能力を補助する小道具も薬草類や触媒となる魔道具も無しに、自身の持つ能力だけで、最終段階にまで変異した蟲毒虫を難なく取り除き、被害者を癒し救ったのだから、その能力は驚異的といえよう。
それも、素肌に取り付いた蟲毒虫ではなく、体内に巣食って、触手という根を被害者の全身へと張り巡らせている蟲毒虫を取り除いたのだから、奇跡扱いになるコトは必定だったりする。
これもリアの知らないコトだが、呪術師が作り上げた蟲毒虫は、通常は外皮に張り付いて、宿主に浸食していくモノなのだ。
主に首筋や背中、又は手足などに吸い着き、リアが無理矢理に魔力障壁で縮めた触手をでもって、ジワジワと浸食していくものなのだ。
触手という根が浸食した場所は、だから切り捨てるしか無くなるのだ。
ある種の毒と一緒なのだが、解毒できない類いなので、切除するしかないのだ。
今は廃れているが、呪術師が作る蟲毒虫というモノは、一時期は情報を取る為の拷問用の道具として徴用されていた時期があった。
そして今もなお、裏社会では、それが脈々と受け継がれ、存在しているのも確かなコトだった。
いつだって、権力者の欲望は尽きるコトなく、そういう後ろ暗い者達の懐(ふところ)と探求心を潤す糧(かて)となっていた。
そんな、ちょっとやそっとの力を持つ者には手に負えないようなモノ(最終段階に入った蟲毒虫)を、リアは気軽にレイニーから引っぺがし、封印してアイテムボックスに収納してしまったのだ。
見る者のが視れば、誰の作品で、どういう呪力が込められたかを知るコトも出来る、生きた確たる証拠が、リアの手首に納められてしまったのだ。
勿論、そういうモノ(蟲毒虫)の経過観察するモノもちゃんと存在しているのだが、リアに手を伸ばすコトなど到底無理だったりする。
また、リアの凄さを見てしまった、監視役のモノは、リアに魅せられてしまい、自分の飼い主を、ポイッとしたコトは、リアの預かり知らないコトだった。
「はい…リアお姉ちゃん…お水……レモネの果汁を搾ったの入れたから…すっきりするよぉ……酸味〔さんみ〕の実と違って、こっちは飲みやすいんだよぉ……」
「あっ…ありがとう…ユナ……流石に…ちょっと……いや…かなり…気持ち悪かったから……それに、喉が渇いちゃったわ」
封印した蟲毒虫を手首のアイテムボックスに収納したリアは、ユナが差し出す冷たい水を受け取り、思わずクイっと一息で飲んでしまう。
あら…本当に美味しいわ……うん…こっちのがマイルドな感じね
酸味〔さんみ〕の実の方は、前世で使っていたお酢に近い味だものね
物々交換で手に入れてくれたのかなぁ~……ああ…喉もすっきりするわねぇ
「はぁ~……美味しいぃ~……ありがとうユナ……ってコトで、もう一杯頼めるかな?」
「うん」
嬉々として魔法で冷水を出し、レモネと呼ばれる果汁を入れてリアに差し出すユナは、にこにこと楽しそうにしていた。
が、そんなモノを見れば、顔を出すのがナナである。
ユナが果汁を搾ったレモネをパクッと口に銜えて、もしゃもしゃと食べてしまう。
が、やはりナナでも酸っぱいらしく、ちょっとしかめっ面をしていたりする。
「ふふふふ………ナナってば、そのまま食べちゃったのねぇ…酸味〔さんみ〕の実とは違うけど酸っぱかったでしょ……はい…お水ね」
と、リアはクスクス笑いながら、ナナの前に水球を作って出す。
ただし、ナナは野生っ子だったので、リアはちょっと冷たいかな?程度の汲みたての井戸水ぐらいで出して上げていた。
眼前に浮かんだ水球に、ナナは嬉しそうに口を付けてちゅぅ~っと吸い込むようにしてコクコクと水を飲む。
そう、リアは無自覚に、ナナにお水を与えていた。
ただ、そこで休憩の為に停泊している者達にとっては、かなり目に毒なコトだった。
砂漠の大街道を渡っている最中なので、持ち歩ける水にも限度量がある為、みんながみんな、ほぼ節水で制限して飲んでいるのだ。
勿論、ナナのお乳を余分に買い込んだ伯爵令嬢だって、例外ではなかったりする。
どうしたって、ある程度は我慢しなければならないのだ。
が、ナナはリアから気軽に飲みたいだけお水を飲み、貴重な果実も食べていたのだ。
だから、そこに集まった者達は納得する。
ナナが豊富にお乳を出すのは、リアという飼い主が居て、好きなだけ水分や食べ物を与えられているからだと。
それだけに、中には自分もリアに飼われたいと思うモノが、出て来てもしょうがないコトだった。
「リアお姉ちゃん…ローストビーフ、スライスしたの塊り肉を2つ分と、ソーセージを一袋(革袋小)と、フライドポテト一袋分(冒険者の持っていた小鍋に入れた)に、ミルクとチーズたっぷりのシチューを小鍋いっぱい(冒険者の持っていた別の小鍋に入れた)と、ハンバーグ10個出したよ……あとは、グレンお兄ちゃんが交渉してた」
ユナの言葉に、リアは頷く。
「そう、ジャンボモアの卵も交換してもらえたかしら?」
リアの言葉に、ユナが答える。
「大丈夫だよぉ~…オルトさんが、レイニーさんを馬車に運んだあと、グレンお兄ちゃんにジャンボモアの卵を手渡していたから………6つ…この中(マジックポーチ)に入ってるよぉ………うふふふ……また…プリン作って欲しいなぁ~…甘くてツルッとして美味しいのぉ~……」
うっとりするユナに、クスッと笑ってルリを振り返れば、ルリもちょっと舌なめずりしていた。
勿論、慌てて手で口元を隠したが、アイスクリームとセットにしたプリンアラモードのコトを思い出したらしい。
「うん…それじゃ……馬車に戻ったら、早速作って食べようか………グレン…終わった?」
側にグレンの気配が戻ったコトで、リアは振り返って聞く。
「ああ……お礼も込みで……結構、色々なモノと交換できたぞ……」
「そうなんだ……それじゃ…そろそろ………って…あっ……ナナっ……」
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