第131話食材が尽きていたようです



 そう声を掛けてから、リアは腕輪型アイテムボックスに姿見を収納して、クインとアクアを振り返って、ハッとする。


 あっと…忘れていたわ、クインとアクアに従魔だって判るモノ着けないと

 そう言えば、首輪型のアクセサリー…少し前に頭数分作ったのあったっけ

 クインは赤い魔石が嵌め込んであるヤツで、アクアは青い魔石のにしましょう


 「ちょっと待って、従魔だって思ってもらえるように、首輪を出すわね」


 と言って、リアは到底、単なる従魔の首輪とは思えないような、見事な細工の首輪型アクセサリーを取り出す。


 「はい、クインは赤いのね…アクアは青いのよ」


 そう言って、立ち止まり、ササッとリアの前にお座りして見せたクインとアクアに、それぞれの首輪を着ける。


 「これでよしっ…と……ルリは、従魔の首……んぅ~…なんか、ソレって見栄えが悪いわねぇ……そうだ」


 と言って、ルリの首に嵌められている隷属の首輪を、膨大な魔力を注ぎ込んで無理矢理外してしまう。

 そして、腕輪型アイテムボックスに収納した、これまだ豪奢な首飾りを取り出して、ルリの首に着けるのだった。


 「ナナでさえ、ああいうのを着けて居るんだから、このぐらいは身に付けないとね」


 「ああ…そうだねぇ……アタシもすっかり忘れていたよ……」


 ルリも、一応従魔としての、ごつい如何にもな隷属の首輪を着けていたが、あまり気にならなかったので、すっかりと忘れていたのだ。

 それをたった今外されて、見事な細工の首飾りへと変えられたルリだった。


 あっさりと従魔としての首輪を外してしまうリアに、ルリはクスッと笑う。


 本当に、困ったご主人様だよ、リアは

 普通は、こんな簡単に外さないモノなんだけどねぇ

 だからこそ、リアは危なっかしくて目が離せないんだよねぇ


 「それじゃ、外に出ようかねぇ…とにかく、リアは直接口を聞いちゃいけないよ…特に、交渉事はグレンにやらせるんだよ」


 こころの中でそう呟きながら、ルリはリアに再度注意して、クインとアクアを連れて馬車の外へと出たのだった。

 外に出たリアは、ルリの注意をスルーして、自分の幸運を噛み締めていたりする。


 ほんとぉ~に、命ある生き物も入れて、居住可能な姿見をゲット出来て良かったわぁ

 こういうのを僥倖って言うんでしょうねぇ~……本当に、助かっているわ

 もう、何度…姿見のお陰で助かったコトかしらねぇ……っと、あれ? ナナは何処?


 側に居たはずのナナは、リアの側から離れて、軍馬の側に寄り、軍馬がもらった木桶に入っている水をちゃっかりと飲んでいた。

 木桶に顔を突っ込まれたコトで、軍馬はしょうがないという表情を浮かべて一歩さがっている。


 その姿を見て、リアは溜め息を吐き、ルリが念話で話しかけて来る。


 『リア、買い物に行く前に、ナナのお乳を搾ってやりな……また、乳房がパンパンになっているよ……本当に、ナナはリア達と出合ってから、いい加減になったものだねぇ…はぁ~…あのくらいの子供達が居たら、それはもう狂暴になっているもんなんだけどねぇ……安全安心なところに子供達をおいておけて、美味しいご飯を満足するまで食べられたら、子育て中のウクダでも、ああなちまうのかねぇ………』


 ルリの念話で、リアはナナの乳房へと視線を向けて溜め息を吐く。


 あらあら……確かに、もの凄くプリンプリンに張っているわ

 好奇心旺盛なナナは、そっちに意識が向いちゃってたのねぇ

 これは、壷四つかなぁ? 取り敢えず、搾ってあげないとダメね


 「はぁ~…ナナ…戻っておいで…お乳が張っているじゃない…それじゃぁ痛いでしょ…今日の分を搾っちゃっておきましょう……ご褒美は、砕け麦かしらねぇ~……」


 そんなリアに、何時の間にか側に来たグレンが首を振る。


 「リア…その…もう…大麦も小麦も終わっているみたいだ……取り敢えず、残った干し肉か干し果物か………その…冒険者用の非常食(ある程度腹持ちするけど、とにかく不味い)くらいしか残ってない」


 言外に、調理済みのモノ以外は、その程度しか材料となるモノが無いコトを告げるグレンに、リアはびっくりする。


 やだ…そう言えば、作るだけ作ったけど…材料の残りを確認していなかったわ

 もしかして、ここで商人が居たのって、もの凄くラッキーなコトかもしれないわね

 だって、入っていた塩も香辛料も、そんなに多くなかったのよねぇ~……


 今考えると、あの塩や香辛料って、私の分しかなかったのかもしれない

 奴隷(グレンやユナ)や従魔(ルリやレオ)の分までは、考えられていなかった可能性あるわね

 それに、時空神様にお供えしたり、ナナやクインとその仲間達の分なんて考慮外だものね


 支配下にあるモノ(奴隷や従魔)や、後から仲間となったモノ達の分など無いコトに初めて気付いたリアは、首を振る。


 いや、だったら、多少高くても、ここで買えば良いのよねぇ~………

 あれを見ると、ちゃんとここでも行商しているようだし……

 取り敢えず、お金の代わりの魔石はあるしねぇ~……


 なんなら、サンドウルフの毛皮なんかもかなりあるし、牙もあるもの

 こういうところって…ラノベだと物々交換なんかもありだったはずだしね

 じゃなくて、取り敢えずは、ナナのお乳を搾るしかないね


 そう言う会話をしている間に、ソッとルリは馬車へと戻り、人型になってフード付きマントをかぶり、馬車中に置いてあった空の壷を持って出て来る。


 「リア、壷は二つで良いかい? 一応、四つまでなら用意できるよ」


 ルリが壷を用意する間に、グレンは座って搾れるようにと、何時もの木箱を用意して居た。

 勿論、日差しが強いので、馬車の影に入って、リアはたったと何時もの調子でナナのお乳を搾り始める。


 そう、魔法でナナの乳房を優しく洗い、やはりグレンが用意した木桶に、洗い水(すこし温かい)を捨てる。

 グレンは、その捨て水を、軍馬達四頭に与えた。

 勿論、ナナに水を勝手に飲まれた軍馬へと多めに与えたコトは言うまでもない。


 あらあら……やっぱりかなり張っていただけあるわねぇ………

 大丈夫だとは思うけど、最初の少しは子供に飲ませられないわねぇ

 これは、勿体無いからクインとアクアにおすそ分けしちゃいましょう


 リアはナナのお乳の最初の方、コップ一杯程度ずつを、クインとアクアに差し出す。

 勿論、横着って水球(お乳の玉)にして、鼻先へと浮かべる。


 「クイン、アクア、飲んでみて…ナナのお乳は美味しいのよ」


 『『マスター、ありがとうございます』』


 クインとアクアは、ソッと水球(お乳の玉)を吸い込み、久しく飲んでなかった懐かしい味にうっとりする。


 「ふふふふ………美味しいでしょう…だから、ナナを守ってあげてね…クインやアクアみたいに、爪も牙もないから…ね」


 リアの言葉に、ナナの濃厚なお乳を味わった二頭は嬉しそうに、ウォンっと鳴く。


 『『はい』』


 そんな会話をしている間にも、リアは壷にナナのお乳を搾る。

 あっという間に四つの壷を満タンにしたナナは、お乳の張りによる痛みが無くなったコトで、ご機嫌のダンスを踊っていたりする。


 搾ってと要求していないだけで、やはり張った痛みはあるようだった。

 ただし、楽しいとソレ(お乳の張り)を忘れて、色々なコトに熱中してしまうのもナナだったりする。








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