第130話シャドウハウンドのリーダーとサブに名前を付けました
馬車の中に戻ったルリは、フード付きマントを脱ぎながら言う。
「リアが色々と見て歩きたいって言うんなら、アタシが護衛の従魔になって、ぴったりと付いて歩くコトにするよ…魔獣の姿の方が攻撃力が高いからね…ユナは、馬車の中に居て、この馬車を守って居てくれるかい……ここには、レオやグリがいるからね…子ウクダ達だって危ないよ……まして、奴隷商までいたからね……ああいう輩は、平気で人のモノを盗むコトを恥じとも思わないからね……まぁ…ナナは強いから、出して置いても平気だろうけどね」
その間に、リアは姿見を出して、リーダーとサブのシャドウハウンドを呼び出す。
ちなみに、リアを主と一方的にでも決めたコトで、全頭、伸縮自在になっていたりする。
気が抜けていると、元の大きさになってしまうが、リアに指示されれば、前世の超大型犬のボルゾイやグレートデンほどの大きさになるコトが出来たりする。
ついでに言えば、初めて姿見に入れる時に、リアがそのぐらいの大きさの方が良いと言ったコトを覚えていて、馬車の中へと飛び乗る時には、コンパクトな大きさになるクセが既に付いていた。
そして今も、一度姿見の中へと入ったので、超大型犬サイズでリアの前にお座りしていたりする。
そんな二頭に、リアは話しかける。
「え~と…いやじゃなければ…名前を付けても良いかな? あと、もふもふしているから、確かめるの大変だから聞くけど、リーダーは雄なの? 雌なの? 雄なら右手を上げて、雌なら左手を上げてくれる?」
リアの問いかけに、シャドウハウンドのリーダーは左手を上げる。
「そう、女の子なのね…ならクインって呼ぶけど良いかしら? 女王って意味もあるのよ」
そう言えば、クインがポワッと仄かに光り輝いて、身体をブルブルっと嬉し気に震わせてて、リアを見て言う。
『私の名前は…クイン…よろしく、マスター…』
名前を付けたコトで、リアの正式な従魔となり、俗に言うパスが繋がったコトで、種族的な上位互換に進化したらしく、滑らかな声が脳に響く。
目の前で進化したコトで、念話の能力を取得したらしく、しっとりとした大人の女性らしい声音で、リアに話しかけて来る。
えっと…もしかしなくても、私が名前を付けたコトで進化したってこと?
いや…そう言えば、ラノベあるあるにそういうの有ったような気がする
何にしても、意思疎通が出来るのはもの凄く助かるわ
「よろしく、クイン」
そう言って頭を撫でてから、リアはハッとする。
えっ? 額に小さな角? そんなモノ無かったわよねぇ?
もしかして、進化した証拠ってヤツかしらねぇ?
確か、角って力の象徴だったりするのよねぇ~…
うふふふ………もしかしたら、クインは魔法が使えるようになるかもだわ
私とパスが繋がったコトで、新たな能力を得ているかもしれないわね
じゃなくて、さっさともう一頭のサブにも名前を付けないとね
そう思い、リアはシャドウハウンドのサブに向き直り、問い掛ける。
「それじゃ、サブのアナタはどっちなのかしら?」
リアの問いかけに、サブも左手を持ち上げた。
『マスター…この娘は…腹違いの私の妹です…母親の群れから追い出されたので、私の群れに入れたのです…能力が高いのが気に食わなかったようで………』
あらあら……シャドウハウンドにも、そういうのがあるのね
いや、リーダーは守られる立場じゃないから、そういうのが顕著なのかもしれないわね
自然界だから、強いモノが群れのリーダーになるのね
そういう世界だもの、自分より優れたモノは目ざわりになるのね…それが自分の娘でも
ああ…でも、人でもいるわね…自分の娘が自分より優れているのが気に入らないって人
ふふふふ…それを考えるとクインは優しいのねぇ~…それに優れたリーダーだわ
「そう…なら…貴女は、綺麗な透き通る青い瞳だから、アクアって呼ぶけど良いかしら?」
リアに名前をもらうと同時に、アクアの瞳に薄っすらと銀色が帯びる。
『私はアクア…マスター…嬉しいっっ~……アクアは、マスターとずっと一緒に居たいっ』
落ち着いたクインの声よりも高めで、若いというコトがわかる張りのある声での言葉に、リアはふんわりと笑って言う。
「うん、ありがとうアクア、これからよろしくね」
『はい、マスター』
胸張りのアクアの頭を、リアは優しく撫でて、力の象徴が現われているかを確認する。
ふふふふ………やっぱり、可愛い角がちゃんと存在主張しているわね
この角は、能力の成長と共に、大きくなるのかしら?
それとも、このままなのかはわからないけれど、この子も進化したのね
リアはアクアの頭に角が生えたコトを確認し終え手から、猫型の魔獣に姿を変えたルリに向かって言う。
「ねぇルリ…クインとアクアが居るんだから、人型でも良いんじゃない?」
リアの言葉に、ルリは首を振る。
「それだと、この馬車にはユナ…小さな女の子しか居ないって思われるからね…だから、一度人型でわざと外に出たんだよ……人数の少ない馬車は狙われるからね」
魔獣型でも容易く人語を操るルリの言葉に、リアはなるほどと頷く。
「ああ、そういう意味だったのね……なら、しょうがないか……一応、害意あるモノは入れない結界を張ってあるけど、何があるかわからないものね」
そんな会話をしている間に、ナナは勝手に姿見の中から出て来て、自分も一緒に回るとアピールする。
ついでに、馬車中でうたたねしていた自分の子供達とグリとレオの首を銜えて、ヒョイヒョイとたった今出て来た姿見へと放り込む。
ナナは出入りが自由だが、子供達やシャドウハウンド達は、リアの任意が無いと出入りできないのだ。
それを知っているナナは、ついでとばかりに、ユナまでササッと姿見へと放り込む。
まさか自分も放り込まれると思って無かったユナは、姿見の中からナナに恨めし気な視線を送る。
が、とうのナナは、意気揚々と鼻高々で楽し気に踊っていた。
その姿から、どうやら、大事なモノは全部ひとまとめで、リアが持って歩けば良いと言っているらしいコトに気付き、思わず苦笑いをする。
「そうね、結界も張ってあるし……馬車はおいて置くとしましょうか……」
軍馬は性格がアレなので、勝手に連れていけないコトがわかっているので、リアも肩を竦めて声を掛ける。
「それじゃ、グレンが待っているから外に出ようか? ルリ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ…買い物の支払いはグレンにさせるんだよ…リアは絶対に商人達と直接口を聞いちゃいけないよ…わかったね」
ルリの小言のような注意に、リアは肩を竦めて答える。
「はぁ~い…それじゃ、クイン、アクア、行こうか」
『『はい、マスター』』
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