第129話気が抜けていて、あわやになりかけました
グレンの二日酔いを治してから、ルリを起こしてみんなで朝食を取り出発した。
大街道を、シャドウハウンド達に護衛されながら、軍馬達の好きな速度で走らせて進む。
ほぼ二時間くらい走ったところで、小休止しようと馬車の速度を緩めて、休憩できる場所へと入って行く。
大街道には、大規模キャラバン用に、大街道の側に大きな停留所のような場所があるのだ。
ふふふふ………なんか、まるで高速道路のインターチェンジみたいねぇ~……
こんなところで、お店みたいなモノを開いている集団がいるわね
なにか買えるモノあるかしら? って…あぁ~……パニックになってる
シャドウハウンド達に囲まれたリア達の馬車が停留所に入ると同時に、冒険者らしい者達がザザッと飛び出て来て、攻撃態勢に入ったのを御者台の後ろから見て、リアは慌てる。
「やだ…もしかして攻撃されちゃう?」
そう叫んだリアに気付き、ルリとユナが馬車の後ろの扉を開ける。
リアはそれに気付いてもシャドウハウンド達に声を掛ける。
「みんなぁ~…ハウスッ……ナナもハウスッ……」
リアの命令に、シャドウハウンド達はザザザッと後部に回って、開かれた扉へと飛び込む。
勿論、リアは姿見を出していたコトは言うまでもない。
馬車内へと飛び込んだシャドウハウンド達は、そのまま姿見の中へと入って行く。
勿論、外でルンルンで走っていたナナも呼ばれたので、後部の扉から馬車の中へと入り、そのまま姿見の中へと姿を消していた。
ナナを含めた全頭が入ったところで、ルリとナナは扉を閉めて、ガチャンと鍵も掛ける。
ああぁ~ヤバかったわ……危うく攻撃されるところだったわ
取り敢えず、もし聞かれたら魔道具で作った護衛獣とでも言って誤魔化すしかないわね
はぁ~…こうなると、見るからに従魔だって判別できるモノを作った方が良いわね
いや、首飾りは作ったけど、遠目からみたら首のモフモフ毛に埋もれちゃうかも
それだと、あまり見えないから、従魔だって判別しずらいかもしれないわねぇ
となると、頭にサークレットみたいなモノを着けないとダメかしらね
そんなコトを考えている間にも、馬車は停留所の中へと入って行く。
別にこの停留所でなくても良いのだが、軍馬達に好きに走らせたので、ちゃんとした休憩を取らせたいという思いが有り、グレンはそのまま停留所へと馬車を入れたのだ。
勿論、御者台に座るグレンには、奴隷を表わす首輪があるので、主の指示で停留所に入って来たと判り、冒険者らしい者達も警戒はしつつも、さがって行く。
ただ、シャドウハウンド達を連れていたコトで、文句を言おうと構えている者達も数人居たのは確かなコトだった。
巨大キャラバン隊の方は、馬車は一台しか無いが、護衛の従魔を持っているらしいコトを見て取り、手もみをしながら、商品を見せびらかすように並べ始めていた。
そう、リア達が買ってくれる可能性があるのを見て取り、ウチはこんなモン有りますよとアピールしているのだ。
勿論、その巨大キャラバン隊とは別に、小規模な隊商も、何か売り買いできないかと、ウロウロしだす。
その中には、当然のように奴隷商なども存在していた。
ちなみに、グレン達の首の奴隷の輪はちゃんと機能しているが、それは表向きのモノで有って、実際には防護結界などを付与したモノへと変えられていたりする。
額に第三の瞳が棲みついた時に、色々な魔法陣などを取得したリアが、どうせならとそういう風に変えたのだ。
ただし、奴隷商に見られて、鑑定とか掛けられた時に、違和感がないように細工したのは言うまでもないコトだった。
リアとしても、家族となったみんなを失いたくないが故の細工だったりする。
グレンが馬車を停止させ、すぐさま軍馬達の手入れを始めるのを確認し、リアは認識阻害のかかっているフード付きマントを羽織ってから外に出る。
勿論、ルリやユナにも同じフード付きマントをかぶらせてある。
こういう場所では、ルリの容姿もユナの容姿も、毒にしかならないコトは、ラノベあるあるの知識で知っていたので、もしもを考えて着せていたのだ。
勿論、グレンも同じフード付きマントを羽織っていたりする。
それでも、首元の奴隷を表わす輪は見えるてしまうコトはあるのだが、そのままよりはよほどマシなのでフードをかぶるようにしていたコトは言うまでもない。
リアが買ってもらった馬車は、ちゃんと御者台にもしっかりとした日除けがあるタイプだったりする。
だから、御者を任されているグレンもだいぶ楽だったりする。
リアは、馬車から降りて、他の馬車を見て首を傾げる。
「グレン…アレ…御者台に日除けとかないけど……」
不思議そうに聞くリアに、軽く軍馬の手入れをすませたグレンは苦笑いを浮かべながら言う。
「リア…あれが普通なんだ……ウチの馬車みたいに、日除けがしっかり付いているのは少ないんだ……冒険者が持つ馬車だって、メンバーを大事にしているパーティーは、そういう気遣いするけど……荷物持ちとか御者に対して、下に見ているようなパーティーでは、安価な馬車でそういうモンは付いてないぞ」
グレンの説明に、リアはそういうモンなんだと思いながら頷く。
「ふ~ん…そういうモノなのね……っと、それより、買い物したいんだけど……私、お金の価値がわからないのよねぇ~……あとでグレンに聞こう思ってたんだけど…ついつい忘れちゃってね」
リアが人のいるところで馬車から降り来たコトを問い掛ける。
「そう言えば、知らないんだっけ……じゃなくて、なんで降りて来たんだ? こういうところは、危険もあるから…できれば馬車の中に居て欲しいんだが……」
言外に、奴隷商なんてモンまで居るんだから、キケンナンダゾ、というグレンに、リアは気にした風もなく言う。
「うん…それなんだけど…少しぐらい高くても良いから、お塩とか香辛料が欲しいわ…もう、ほとんどお塩が無いのよねぇ~……フライドポテトに結構使っちゃったから……」
ちょっとすまなそうに言うリアに、キンキンに冷えたエールが美味いって、言いながらフライドポテトも堪能したグレンはちょっと反省する。
「そっか……まだ、一番近い城塞都市まで…最低でも十日はかかるだろうからなぁ~……買わないとだな……」
グレンがなるほどと頷く間に、リアは魔石をひと掴み取り出して言う。
「コレでどのぐらい買えるかしらねぇ? あと、昨日剥いだばかりのサンドウルフの皮とか牙、あの辺の商人さん達、買ってくれないかしら? なんなら、ナナのお乳なんかも売れると思うのよねぇ~……あの辺の商人さん? なんか赤子連れているみたいだし……」
と、リアが指さした方には、確かに赤子を抱えた女性がしおれたように座っていた。
「ああ…確かに…なんか様子がおかしいな……もしかしたら……貴族かもしれないな……あまり関わり合いになるのは良くないが…………」
チラリと見て、リアの様子から、グレンは肩を竦める。
「ちょっと見に行くか? なんか気になるんだろ」
グレンの言葉に、リアは嬉しそうに頷く。
「なら、シャドウハウンドを二頭出して、馬車の警護をさせてくれ……そしたら、俺が付いて歩けるから……全頭出すと、警戒されるからさ」
「うん……ルリとユナはどうする?」
側で黙って待っていた二人に聞けば、ちょっと考えてルリが言う。
「なら、アタシラは馬車の中で待っているよ……だから、リアも一度、一緒に馬車に戻ろう」
ルリの言葉に、リアは何か考えがあるのだろうと、おとなしく頷く。
「うん…わかった」
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