第126話その頃のアゼリア王国 それぞれの未来? 王妃1
何時の間にか眠っていたようです
目の前では、久々のアゼリア王国での出来事が展開してます
と、いうことで、しばらくぶりの観劇……もとい、追放劇の後の真実を楽しみますか
リアの視線の先では、侍女のデイジーに縋りつく王妃の姿が映っていた。
王太子妃の名目で、リア…もとい、セシリア公爵令嬢に浄化の魔道具と共に押し付けたコトで、穢れなどに対して耐性がほとんどなくなっている為に、それに耐えられず、転移到着直後に崩れ落ちたようだった。
一方、浄化の為の魔道具を外しても、政務の些細な合間にも、僅かな(弱った身体に負担にならない程度)魔力でもって、常に自己の心身の鍛錬を欠かさなかった、ガウェイ王は、侍従のセバスによって支えられながらも、しっかりと自力で立っていた。
ただ、不調を誤魔化し続けて弱った身体には、負担は大きく、ヨロヨロとしか動けなかった。
そして、大神官長はというと、お気に入りのベルンと共に、シャキッと立っていたコトは言うまでもない。
年齢と状態が真逆なのを見て、思わず大神官長は呟く。
「激務の為にお身体の弱って居るガウェイ王は、王としての浄化の役割が戻って来たので、当然の状態としても、王妃殿はあまりにも情けなさ過ぎますね……責務を放棄して享楽に耽っていたから、そうなるんですよ……まったく、セシリア様など幼少期から見事に浄化の役割を果たしていたというのに…なさけない…堕落者の末路ですね」
そう溜め息を吐いてから、大神官長は隣りに居るベルンへと声を掛ける。
「ベルン…ガウェイ王を反対側からお支えしなさい……」
命じられたベルンは、増えた負の債務によってフラ付くガウェイ王を支えるセバスに声を掛ける。
「はい、大神官長様……ささ、わたくしめもこちら側からお支えしますので、セバス殿は反対側からお支えしてください」
それを確認し、大神官長はガウェイ王にかかる負担を少しでも減らそうと、癒し清める為の呪文を詠唱する。
『こころ優しき癒しの女神よ……この者に…浄化の光りをもって…癒しを与えたまえ……ヒール』
柔らかな光りと共に、ガウェイ王に纏わり付く、視認できるほどに色濃くなった渦巻く瘴気を祓う。
一部は確かに浄化されるが、あまりにも濃厚になってしまった澱み歪んだ瘴気は、散らすコトが精一杯になっていた。
「不味いですね…早急に、今回の原因を精査して……浄化を担う(生贄)者を選定しなくてはなりませんね……まぁ…だいたいは決まってますけどねぇ……これは、大人数で浄化にあたらないと…あっという間に死の都と化しますね」
そう呟いた大神官長は、リアを虐げて楽しんでいた王妃と侍女のデイジーを一顧だにもせず、扉に向かって歩き始める。
勿論、ガウェイ王も左右からセバスとベルンに支えられながら、扉へと歩き始める。
自身に降りかかった穢れによって押し潰されていた王妃は、デイジーに縋りながら付いて行こうとするが、身体が重く呼吸が苦しいコトで思うように身動き出来なかった。
そして、大神官長や王から、自分が見限られたコトを感じて焦る。
どうして…何故…大神官長は私に清めと癒しの魔法を掛けてくれないの?
なんで…ガウェイ王は…私を振り返ってくださらないの…なぜ…なぜ……
……はっ……ロマリス王国に行く前に…ワタクシが我が儘を言ったから?
だって…王は、あの生贄の娘の浄化の為の魔道具を外そうとしたから……
セシリアが外したら…こうなるって理解っていたから…外させなかったのに
だから…セシリアから浄化の為の魔道具を外す時間を奪ってやったのに……
ワタクシは悪くないわ……あの醜い娘は、その為に王家に捧げられた娘なのだから……
あんな醜い生贄の娘…使い潰して何が悪い………そう思っていたセイなの?
ワタクシの唯ひとりの息子に…なんであんな醜い娘を妃に迎えさせなきゃならないのよ
そうよ…王太子になれる者など…ワタクシのひとり息子のエイダンだけなのだから
王の血筋を引いているのは…エイダンだけだもの…私の地位は安泰…な…はず
大丈夫よね……でも、不安が消えない…王の冷めた瞳と…大神官長の無視が怖い
王妃は、デイジーに縋りながら、必死でガウェイ王と大神官長の後を追い駆けるのだった。
転移の為の場所の扉を守っていた守護兵に、馬車と護衛の手配を命令する大神官長の声が響く。
命令を受けた転移場の守護兵は、ガウェイ王の酷く衰弱している様子に慌てて、王宮の護衛騎士の詰所へと連絡を入れていた。
水晶を媒介にした連絡によって、王宮側から専属の護衛騎士(本来の護衛騎士は、まだロマリス王国に居るので、予備の騎士)が、馬車と共に転移場に向けて出発の指示を受けてバタバタしていた。
それに溜め息を付き、大神官は少しでもガウェイ王を楽にしようと、転移の順番を待つ為の転移場の待機場に移動して座らせ、再び清めと癒しの魔法の呪文を唱える。
後継者がエイダン王太子しか居ない為、何が何でもガウェイ王を失えない大神官長は、なんとか少しでも負担を減らせないかと思い悩む。
そして思い付いたのは、義務と責任を放棄して、王妃として享楽を享受していた王妃へと視線を向けて言う。
「浄化の為の魔道具は有りませんが、急場をしのぐ為に、浄化の器になる為の簡易儀式を受けてもらいますよ、王妃様……セシリア様に押し付けてサボっていた分、ちゃんと義務と責任を果たしてくださいね、貴女はガウェイ王の唯ひとりの王妃なのですから」
そう言い放って、大神官長は自分がしていた腕輪を外し、身近な(ガウェイ王に纏わり付く)穢れや瘴気を集めて、浄化する為の疑似魔道具になるように細工し、身動きがろくにできない王妃の首に着けるのだった。
ちなみに、もとはチョーカーを縮めて腕輪にしていただけなので、チョーカーの形に戻したモノだったりする。
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