第122話馬車に揺られながら色々と作ります



 グレンに味見をかねたピザのおすそ分けをしたリアは、馬車の中に戻って、また新しいピザを作り始める。

 なにせ、作りかけの材料は、手首の腕輪型アイテムボックスにたっぷりとあるのだ。


 ちなみに、グリやレオは、馬車に入ってすぐに、重ねたラグの上に座ったリアの膝に縋りついてゴロゴロと懐いた。

 が、所詮はどちらもまだまだ幼い個体なので、しばらくするとリアの膝に縋ったままスヨスヨと寝落ちし、動かしても起きないほど熟睡してしまったのだ。


 熟睡して、移動させても起きないレオとグリは、木箱を利用した専用の寝台で現在進行形でスヨスヨと眠って居たりする。


 「ふふふふ………本当に良く眠っているわねぇ~……ああそうだ……せっかくだから、少し魔力を足してあげておいた方が良いわね………この子達が、健やかに成長できますように………」


 そう言いながら、思いを込めて、まだ幼いレオやグリの身体を癒し、健康に成長するようにと、ソッと魔力を注ぐ。

 リアは気付いてないが、リアから注がれる聖属性を帯びた魔力によって、レオもグリも未熟な身体が、自然に堅強な身体へとゆっくりと生まれ変わっていっているのだ。


 細胞が入れ替わるように、脆弱なモノが柔軟で力強いモノへと変化を促すリアの魔力によって、レオもグリも健やかに成長しているのだ。

 声すら出せなかったレオを視て、ルリが未熟児だと言ったコトで、リアは気付いた時には、なるべく小まめにレオとグリに魔力を与えていたりする。


 グリの方も、翼が三対もあったコトで、親に捨てられたあげくに軍馬達に踏み潰された経緯から、リアはできるだけこころを砕いていた。

 そのお陰もあって、どちらも体調を崩すこともなく、すくすくと未熟な身体を健常なモノへと変化させて、育っているのだ。


 そんな二人の可愛い寝姿に、リアはふふふふと静かに微笑いながら、腕輪型アイテムボックスにしまっておいた作りかけのピザに具材を乗せて、空中で火魔法と風魔法を器用に使いながら焼き上げて行く。

 焼き上げたら、再び腕輪型アイテムボックスに戻すというコトを繰り返す。


 器用にピザを焼きながら、リアはルリに言う。


 「グレンが、夕飯にピザでエール飲みたいって言ってたけど、ルリはどうする?」


 ヒョイヒョイと器用にいくつものピザを浮かせて具材を乗せて焼きながら言うリアに、ルリはペロリッと唇を舐めて言う。


 「いいねぇ~……どうせなら、フライドポテトだっけ…アレも付けておくれよ……カラアゲも良いねぇ~………」


 「ふふふふ………グレンは、ソーセージも欲しいっていってたわねぇ……っと、ルリのお腹の子供達にも、魔力を注いであげるね……一度、出来れば空にまで持っていきたいんだぁ………うふふふ……これで痩せられるなら安いモノ」


 そう言って、珍しくワクテカ顔で側に近寄って来たルリのお腹に手を伸ばし、その腹にいる子供達へと魔力を分け与えるイメージで魔力を注ぐ。

 スルスルと魔力が吸収されているのを感じて、リアはホッとする。


 ああ…やっぱり、ルリのお腹の子供達ってば、足りてなかったのねぇ

 いや、そうよねぇ~…期間は判らないけど、グレンってばほぼ絶食していたみたいだし

 やっと、ルリ(母体)が大丈夫って判って、子供達も栄養を吸収し始めたんですものね


 もう、ずっとみんなと旅しているような気分だけどねぇ~………

 実際には、みんなと出合って馬車旅して、まだ7日ぐらいしか経ってないのよねぇ

 私が婚約破棄・身分剥奪・国外追放のコンボされて、砂漠にポイっとされて10日ぐらいかしらねぇ?


 ただ時間感覚がおかしくなってるようだから、正確な日数はわからないのよねぇ

 あの龍帝陛下が呪縛封印されていた空間で、何日彷徨っていたかわからないし

 更に、あの先史文明らしい超古代遺跡がある空間でも、体感とのズレあるしねぇ


 まぁ…それもあって、出来れば少し大きな国に行きたいって思ったのよねぇ

 大国ゼフィランス帝国の帝国暦なんて、属国が多いから基準にするのに良いのよねぇ

 じゃなくて……グレンてば、大国ゼフィランス帝国の後継者のひとりだったみたいねぇ


 これって…もう、あれね……マジで、ラノベあるあるのパターン

 ただ、グレンには後継者に返り咲きたいって気持ちは無いみたいね

 いや、確かに、これもラノベあるあるの、異世界メシマズだしね


 汁物にしても、ダシを取って使うってコトをしてなさそうだったし

 実際、肉類の入ってない野菜の水煮っぽいのも結構あったものねぇ………

 ロマリス王国の一番外壁の下町で『夢の翼』達が贔屓にしていたところは、ちゃんと美味しかったけどね


 それに、似たような野菜とか薬草とかあるようだけど、無いモノもあるみたいだし

 特に料理なんかは、そこまで種類がある感じしなかったわねぇ

 いや、宮廷料理だって、思い返すと、そこまで美味しいモノって無かったわね


 前世の日本での生活は、もの凄く恵まれていたって、ほんとぉ~に実感するわ

 女性の立場しかり、生活環境しかり、豊富な食材と料理の数々

 一般庶民の生活は、王侯貴族並……異世界に転生して、しみじみ本当に、そう思うわ


 だいたい、ソーセージすら無いんだものねぇ~………

 干し肉はあるけど、美味しいベーコンなんて無いしね

 いや、もどきはあったわよ…一応ね…でも、私はアレをベーコンとは認めないわ


 それに、ハンバーグみたいなモノもないのね

 くず肉はあるけど…全部、野菜の水煮の具に化けていたわね

 味付けは、うっすい塩味だけつて…もの凄く寂しかったわ


 まぁ…そうね、そういう食糧事情だから、みんな喜んでくれるのよね

 私が有り物で作ったモノでさえ、グレンってば、あんなに喜んでくれるんだもの………

 ルリもユナも、顔を綻ばせて食べてくれるし


 そう言えば、ナナなんて時空神様にお供えしたモノまでくすねてたわね

 出来るなら、ソーセージとかハンバーグは広めたいわね

 だって、他人が作ったちゃんと美味しいお料理が食べたいもの


 じゃない、取り敢えず、これから行くモルガン国で香辛料とか買い足ししないとね

 だいぶ、香辛料も塩も減って来たものねぇ………

 グレンとしては、大国ゼフィランス帝国の属国にはあまり行きたくないみたいだけど


 色々と欲しいモノがあるから、そこは我慢してもらうしかないわよねぇ……

 とはいえ、本国じゃないから、そこまでグレンの姿を知っている人は居ないと思う

 いや、思いたいかなぁ………3年前に属国になったねぇ………


 微妙なところよねぇ……まだ、駐屯している兵士とか居るのかしらねぇ~……

 グレンの元の地位とか、姿形を知っている人が居ないと良いんだけどなぁ~…

 何か言われたら『買った奴隷ですが、何か?』って言って誤魔化すしかないわね


 まぁ…だから、あえてグレンの詳しい素性なんて聞かなかったんだけどね

 奴隷の隷属契約って、持ち主の許可なく外したり出来ないはずだしね

 ある意味で、グレンを守ってくれるありがたい身分よねぇ……奴隷って


 勿論、グレンには魔法防御に物理防御と耐性とかも……あっ…魔石で作っちゃおう

 色々な防御とか耐性とか重ね掛けしたアクセサリーを浸けさせれば良いのよね

 どうせだから、グレンの首に豪奢な首輪のようなアクセサリーを作りましょう


 ふふふふ………ルリやユナにも作らないとね…勿論、レオやグリにもね

 ナナは…あのスタンピードで崩壊したところで見付けた、綺麗なネックレス付けているから良いとして………

 ナナの子供達にも首輪みたいなモノが必要ね……あと、名前を考えなきゃ


 そうなると、シャドウハウンド達にも首輪が欲しいわね

 ただ、あの子達って特に首回りがモッフモッフしているから付けても見えないかもなぁ

 それでも、何かあった時に『私の従魔です』って言えるようにしておかないとね


 ピザを焼くだけ焼いたリアは、焼き終わったピザを腕輪型アイテムボックスに収納し、みんなの首輪を作る為に、魔石や金やミスリルを出して、こねくり回し始める。

 その頃には、ピザをつまみ食いしたところに、リアから魔力を与えられたコトで、深い眠りに入ったルリが、リアを抱き込むようにして熟睡していた。


 勿論、ユナもピザを食べた後、グリとレオが居なくなったリアの膝に縋って、幸せな眠りについていた。

 リアは、腰を抱き込むように猫型で眠るルリと膝に縋って眠るユナを気まぐれにナデナデしながら、全員分の首輪を作るのだった。







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